税理士試験と共に過ごした日の記録⑥法人税法その2
令和4年の税理士試験法人税法は不合格だった。
試験では、理論はほぼ答えることができず、計算も早々に躓く始末。手も足も出ず、時間が余ってしまうほどだった。
私は令和4年の試験が終わったその日のうちに大原に再度、法人税法初学者コースの申し込みに行った。
大原には経験者コースと初学者コースがある。経験者コースとは、試験に不合格でありもう一度チャレンジするコース。これは演習や応用問題をメインとしたカリキュラムが組まれている。初学者コースは文字通り初めて受験する人のためのコースであり、基礎的な内容を丁寧に習得するカリキュラムとなっている。
それでは、再受験をする私がなぜ、初学者コースを選んだかというと、大原の担当者の方に相談したところ、令和4年度時点の私の習熟度は、基礎的な知識も習得できていないことから初学者コースにすべきとのアドバイスをいただいたからである。
このように単純に再受験をするからと言って、全員が経験者コースを受けることが適切であるとは言えない。再受験をする場合には、確認テスト等を自分の習熟度がわかるものを持っていき担当者の方に相談することをおすすめする。
昨年とまったく同じ初学者コースを申し込むと決めたとき、この1年間何をしてきたのだろうか、と自分がとにかく情けなかった。
担当者の方から最後に言われた「決して安くはない受講料ですから、今年はもっと私たちを利用してくださいね。」との言葉は大変耳が痛いものであった。大原に限らず大手予備校は、良質な教材と講師、模擬試験、質問対応等を用意している。しかし、それを大いに活用できるか否かは結局自分次第だ。
私は幼いころから勉強について誰かに相談した経験がなかった。
わからないことを教師に質問することはあっても、そもそもの勉強方法については、独自の方法でなんとなく、これまでうまくいっていた。
令和4年の試験に向けた勉強期間を振り返ると、私は早々に勉強方法自体を相談するべきであったと思う。
令和5年の試験に向けて、まず私は勉強方法の見直しから始めることにした。以下が令和5年度で私が行った勉強で、合格につながったのかな、と思うことである。
【計算】
計算とは、課税所得の計算に関わるあらゆる計算問題である。総合問題が一つ出題される場合もあれば、個別問題が複数出題される場合もある。その組み合わせの場合もある。
いずれにせよ結局は個別問題の集合体であり、各論点における処理をいかに素早く正確に行うことができるかがカギとなる。
① 実務経験者との差異を解消する
私は当時、税に関する実務に全く携わったことがなかったため、何を学んでもピンとこなかった。そもそも、申告書の見方すら知らなかった。
そこで、経理担当者向けの法人税申告書のわかりやすい解説書を購入して、まずは申告書のイメージをつかむところから始めた。これは、予備校では教えてもらえないところである。
予備校の教科書では、計算に必要な仕分けや、計算方法、必要な別表(主に四、五、一)の一部分しかほぼ取り扱わない。簿記の知識があったとしても、経理の経験がない私は、そもそも企業において発生する取引が具体的にはわからない。当然その先にある、税法独自で必要な処理もわからない。ただ計算式のみ覚えようとしても無理な話だった。
税理士試験の受験者は、税理士事務所等でしっかり経験を積んでいる方も多い。実務経験者であれば問題文で示された状況がすんなり理解できるものであっても、受験勉強しかしていない場合はそこで差がついてしまうのである。
現に、私の知り合い方が、令和4年度法人税法試験において、ある問題について勉強が漏れていたものの、以前業務で携わったことがあり、それを思い出しながら解答したと言っていた。その正誤はわからないが、その方は令和4年度、無事合格され、晴れて税理士となった。
私は試験直前まで、計算、暗記問わず、理解がいまいちできない問題文の前提条件をそのままネットで検索にかけた。すると、基本的には、具体的な事例にヒットするのだ。
限られた勉強時間の中で一見無駄と思える工程かも知れないが、実際に起きた事例を知ることで、例え実務経験が無くても教科書に記載されている計算方法が、ぐっと、リアリティを伴った処理としてイメージしやすく、定着度合いも格段に良くなった。
なお、具体的な事例には著名な企業が関係した判例などもある。そしてその解説は非常に興味深く書かれている場合が多く、ついつい読み込んでしまう。
うっかり深みにはまると危険ではある。
② 基礎問題の反復
法人税申告に関する一連の流れをざっと把握した後は、今までと同様に基礎問題をひたすらに繰り返した。基礎問題の反復については、簿記論とほぼ変わらないため、以前のnoteを参照してほしい。https://note.com/nasumutsu/n/nb4d0bf51ceca?sub_rt=share_pw
③ 法人税法の計算に必要な感覚
簿記論での反省を活かし、早いうちから総合問題に取り組んだ。
簿記論ではあまりに意地悪なひっかけ問題が多いため、どんな問題が来たとしても目の間を暗くすることなく、少しでも点数を重ねられるよう、取り組むべき処理をかぎ分ける感覚が必要だった。
体感として簿記論と比べて、法人税法はいじわるなひっかけ問題は少ない。素直な問題が多いように思う。しかし法人税法の総合問題は、一つの問題に必要な情報がかなり広い範囲に散らばっており、後から出てきた小さな情報で時間をかけた計算がすべてやり直しとなる場合がある。
広く情報を集める視野や、足りない情報に対する違和感を持つ「勘」はとにかく多くの総合問題を解き、慣れながら習得するしかない。税理士試験はあまりに難しく、やりすぎと感じる部分は多々あるが、少しずつ税の実務に携わるようになった今、この感覚は試験だけではなく、税理士にとってはきっと、重要なものなのだな、と思うことがある。
④ 無理なものは無理
無理なものは無理な計算がある。
私にとってそれは、試験研究費等に関する計算や賃上げ税制といったパワープレイで覚えるしかない論点。これはもう実務経験とかの問題ではないと思う。実務ではソフトが計算してくれるものなので…なんで、そんなもん覚えさせるんだよ…と常々思っている。人間がやるべきことではない範囲も、税理士試験は含んでいる。
そのようなものは、早々に習得をあきらめ、なんとなく税制の枠だけ掴むために計算問題を解き、細かい部分は試験の3日ほど前から覚えるようにした。そして、最後まで答えを完璧に出すことは諦め、途中点がもらえる程度の暗記で留めた。
もちろん、すべての問題ができるに越したことはないが、計算に関しては(次に書く理論に関してもだけれども)ある程度諦める部分が出てくると思う。
ちなみに具体的なテクニックは予備校が教えてくれると思うが、全ての計算が完璧でなければ、完璧な答えにたどり着けない論点がある。例えば寄附金の計算だ。このような問題について、妥協して、途中点を狙っていくといったことも必要となるのである。
⑦に続く