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腹部大動脈瘤の適切なフォロー間隔について
今回取り上げる研究結果から、4.25㎝未満の腹部大動脈瘤は2年間隔も検討できるかもしれません。
【はじめに】
腹部大動脈瘤を指摘された後、多くの場合は年1回ほど超音波検査や腹部CTで大動脈瘤の最大短径を追跡して、50㎜を超える場合や、50㎜未満で破裂リスクが高いと判断された場合に手術やステントグラフト内挿術を検討することになります。(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインより)
本研究は腹部大動脈瘤に対するドキシサイクリンの効果を見たNon-Invasive Treatment of Abdominal Aortic Aneurysm Clinical Trial (N-TA3CT)研究の二次解析です。
ベースラインの腹部大動脈の直径が3.5㎝~5.0㎝の方を対象に6か月ごとのCT検査で腹部大動脈瘤のフォローを行い、そのサイズの変化を前向きに評価しました。
Patient 対象者
ベースラインの腹部大動脈瘤の直径が3.5~5.0㎝の方
男性は腹部大動脈瘤の直径が3.5㎝~5.0㎝を対象に219名が登録されました。
女性は腹部大動脈瘤の直径が3.5㎝~4.5㎝を対象に35名が登録されました。
Outcome 評価項目
主要アウトカムは腹部大動脈瘤の直径の増加率です。
副次アウトカムとして大動脈瘤の変化のパターンなどを評価しました。
Result 結果
腹部大動脈瘤のサイズの年間の増加量は平均0.17㎝/年であった。
Figure1で1年にどのくらい大きくなるかを示したグラフです。稀ですが増加が早い症例は0.9cmほど大きくなることもあります。
年間0.25㎝以上増大を示した割合は28%であった。
約70%は直線的な増大を示した。
Figure3ではベースラインの大動脈瘤径と年間の変化を示しています。ベースラインが大きいほど増加速度も速い傾向でした。(サイズが大きい動脈瘤はこまめなフォローを要することが分かります。)
最大径が4.25㎝以上の患者のうち26%が手術適応のサイズになった。
(一方4.25㎝未満の患者は2年間で手術適応のサイズまで増加することがなかった)
Conclusion 結論
サイズの小さい腹部大動脈瘤の多くは線形成長を示し、増加率の大きな変化が起きることは稀である。4.25㎝未満の腹部大動脈瘤は2年後のフォローでよいかもしれない。
【個人的感想】
過去の論文では、腹部大動脈瘤のフォロー間隔として下記の推奨があります。下記推奨でも3.5~3.9㎝は2年間隔になるために、際立って珍しい知見ではないようです。
大動脈瘤の径が大きくなるほどこまめにフォローしたほうがよいのは変わりません。
下のtable1は Journal of the American College of Radiology. 2013;10(10):789-794. で推奨している腹部大動脈瘤のフォロー間隔です。