敗血症治療にビタミンB1+ビタミンC+ステロイドは有効か?
Outcomes of Metabolic Resuscitation Using Ascorbic Acid, Thiamine, and Glucocorticoids in the Early Treatment of Sepsis
CHEST July 2020Volume 158, Issue 1, Pages 164–173.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2020.02.049
【概要】
3年前にMarik PE,et al. Chest.2017;151:1229-38.の論文で敗血症性ショックに対するステロイド、ビタミンB1、ビタミンCの有用性(死亡率改善)について報告されて注目を集めました。今年JAMAでFujii T, et al. JAMA. 2020 Jan 17. doi: 10.1001/jama.2019.22176.で、それを否定する論文が発表され、まだ決着は着かない中の上記論文です。行っている内容は至ってシンプルでascorbic acid (ビタミンC)1,500 mgを6時間ごと、thiamine(ビタミンB1) 200 mg を12時間ごと、ヒドロコルチゾン50 mgを6時間ごと投与するだけです。著者は薬剤の頭文字をとってHAT therapyと名付けております。
【研究結果】
この研究は2018-2019年に米国でおこなわれたランダム化、二重盲検、プラセボコントロール試験で主要アウトカムはショックからの離脱とSOFAscoreの変化、副次アウトカムは28日死亡率・ICU死亡率などを見ています。137人の患者をHAT治療群68人、placebo群69人に割り当てられた。
HAT群はプラセボ群と比較して早くショックから離脱することができた。(27±22 vs53±38 hours, p<.001) しかし、SOFA scoreやICU死亡、在院死亡、ICU滞在、入院日数、呼吸器を要さない期間、PCTクリアランスなどには差を認めなかった。
【個人的感想】
本論文ではショックの離脱は早いものの、重要なアウトカムである死亡率に有意な差を認めなかったことからは、予後を変えるほどの結果ではないということになります。
ステロイドを含めて賛否両論の分かれるHAT療法ですが、敗血症性ショックに対して輸液・十分な昇圧薬を用いても循環動態が維持できない場合はsteroidを用いない施設は少ないと個人的に予想しています。ビタミンB1もCも投与の手間は少し増えますがこれらの薬剤の副作用はほぼないと思ってよいので、現在行っている施設もあるかもしれません。ビタミンB1は心不全に対しても最近注目を集めている気がします。HAT療法は未決着の内容でこれからも検証する論文が出てきそうです。
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