角膜びらんに対するテトラカイン点眼液の鎮痛効果について
【背景】
眼球表層の外傷の一つである角膜びらんは流涙や痛み、充血、ごろごろする異物感があり救急外来を受診することがあります。
本論文は角膜びらんに対するテトラカインの疼痛緩和効果についてみた研究です。日本での類似薬はベノキシール点眼液(オキシブプロカイン)です。この薬剤は鎮痛のみの適応がない薬剤であり基本的には角膜びらんに対する鎮痛目的で処方されることは通常ありません。
論文中で言及していますが、これまでテトラカイン点眼液に対する安全性の懸念から角膜びらんに対しては抗菌点眼液+内服の鎮痛薬で対応していたようです。しかし、最近の眼科領域の論文で周術期の外用麻酔薬の有効性や、屈折矯正手術の術後に用いても治癒の遅れが生じないことが報告されています。
テトラカイン点眼液が鎮痛目的のオピオイド使用を軽減できる可能性があると考え本研究に至ったようです。
【概要】
118人の非複雑性の角膜びらんの成人患者をランダムにテトラカイン点眼液とプラセボ群(人工涙液)に割り付け、目の疼痛に対して必要に応じて30分毎これらの点眼液を用いるよう指示しました。
両群共に抗菌点眼液(polymyxin B sulfate/trimethoprim sulfate)と痛みに対する頓服薬(hydrocodone/acetaminophen)を処方されています。
主要評価項目は受診後24時間、48時間時点の疼痛スコアです。
疼痛スコアは0(痛みなし)~10までの11段階で評価しています。
【結果】
56人がテトラカイン点眼液群、55人がプラセボ群に割り当てられました。
24時間、48時間どちらにおいてもテトラカイン点眼液群で疼痛の程度が大きく軽減しました。(テトラカイン群では疼痛スコア1、プラセボ群は8と大きな差)テトラカイン群では頓服の鎮痛薬の内服回数もプラセボ群よりも少なかったです。有害事象の両群間で差を認めません。
【結論】
角膜びらんの疼痛緩和に対して短期間のテトラカイン点眼液は有効で、この研究規模では安全であることも分かった。
【個人的感想】
用いた薬剤が局所麻酔薬なので鎮痛効果があって当然とも言えますが、プラセボと比較して合併症や治癒の遅れなどの問題がなかったことが大事な知見だと思います。救急外来で角膜びらんなど眼球表面の外傷が起きた場合、かなりの痛みと違和感があるため、内服薬を用いても十分症状を緩和できないことがあります。
今後正式に適応が通れば、患者も医療者側も対応が楽になるでしょう。