移住が軽くなった/備忘エッセイ #6
備忘エッセイ #1 の続き、というかカットした部分を土台に。
そもそも、移住という人の「移動」に注目が集まるようになったのはいつ頃だったか。
ある言葉に新たな位置付けが与えられ、世界を駆け巡るようになってからだろう。
遊牧民を意味するノマドが、インターネット環境の整備とデジタルデバイスの普及を背景に、時間や場所、組織にとらわれない働き方をする人々を表すようになって久しい。
日本で注目されるようになったのは、2008年にジャック・アタリ著『21世紀の歴史 未来の人類から見た世界』が発行された辺りか。
この世界的なノマドの流れが、日本では地方創生、地方への移住、地域おこし協力隊と連なって、かつて「移住」という言葉に含まれていた重みが軽くなった。
そして、日本では少子化による人口減が止まらず、各地・各職場が人を奪い合う構図となっていることも手伝って、一度移住しても定住することなく転出・再移住するケースが後を絶たない。増えているのではないか。
ちなみに私は卒論で『都市から農山村への移住促進策の現状と今後の方向性』、修論で『地域の内発的発展における「新住民」の果たす役割ー北海道下川町を事例としてー』を書き、1999年に下川町へ移住。
それからは受け入れる側、あるいは見送る側になり、なんだかんだで四半世紀を超えて移住と向き合ってきた。
そんな私の実感が「移住が軽くなった」である。
だからといって実際に移住した人たちの人生が軽くなった、というわけではない。むしろ逆かもしれない。
この実感と #1 で書いた「人々の生業が狩猟採集型にシフトしているのではないか」という仮説はつながっている。
よって「移住が軽くなった」という私の実感を歴史学・人類学的にパラフレーズすると「遊動民化が進んだ」となる、のかもしれない。
というわけで、人類はシン・遊動民かつシン・狩猟採集民へと移行しつつあるというのが私の仮説。
浅学ゆえにさも自分が最初に思いついたかのように書いているが、きっと既に誰かがどこかにもっと体系的に書いているのだろう。そういう本などあったら教えてください。
見出しの画像は、このテーマなら浮雲がいいかなと思い。