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生まれ変わったmaterial clubがmaterial clubⅡで掴んだもう1つの青春。
material clubが1stを発表したのは6年前ぐらいでしたね。
ベボベの小出さんが打ち込みで作品を発表するというファンからしたら驚きの触れ込みでした。
Base Ball Bearはノーシンセサイザーでノー同期モノという縛りで活動を続けているのはファンなら承知のはず。
しかしC2という作品の時にギターが脱退して、その次の作品である光源ではその縛りが撤廃されて、シンセや同期が使われた(あくまでも)ギターロックが炸裂してました。
この作品はベボベの歴史ではif的な扱いだと思いますが、本来のポップさやソリッドさやキラキラ感が増幅されてて、これはこれでアリだし最高でした。
その後、サポートのギターを入れてライブを重ねて、そして大所帯でのライブを行った後に1つの疑問が生まれます。
このままこの感じでやるのか?
ベボベは再びノーシンセノー同期を選びます。
ギターベースドラムの3ピース人力バンドとして生まれ変わりC3を作ります。
マテリアルクラブの活動が発表された際に僕はベボベでは選ばなかった未来をこちらで追いかけるのかと思いました。
この予想は半分正解で半分ハズレでした。
マテリアルクラブの処女作は打ち込みを基調にしたサウンドでしたが、それ以上にベボベでは絶対にしないてあろう実験精神に溢れた内容でした。
色々なゲストを呼んで、歌ってもらい、ラップしてもらい、ドープなトラックに導かれた答えはカーテン閉めたぞ!だったり、ポエトリーリーディングだったり、直球の90年代後半のスーパーカー風味のシンセポップだったりと、聴いてて驚きと楽しさが溢れてくるやりたい放題の内容でした。
まるで今まで真面目に勉強していたクラスで1番の秀才が突然狂ったように遊びまくってハメを外しまくるようなそんな感じでした。
僕はこのアルバムのとっちらかり方がとても好きでした。
実際に楽しく作ったのか、苦しんで作ったのかはわかりませんが、売り上げを気にしてなさそうな内容とあふれ出る実験精神と、人気バンドのフロントマンの性なのか黙ってても滲みだしてしまうポップさがとても好きでした。6年経った今でもついつい聴いてしまうほど好きです。
歪つだけどなんか良いよねって思える作品です。
でも、この作品を作った後にマテリアルクラブは映画の主題歌を単発で作っただけで継続して活動することはありませんでした。
その後Base Ball Bearは3ピース体制を強固にすべくツアーをどんどん重ねていき、EPを定期的に発表して作品をどんどん積み重ねていきます。
それまでに発表したEPの集合体であるC3は、マテリアルクラブで好感触だったラップが導入されたり、ライブで鍛え上げた鉄壁のアンサンブルとより円熟味を増した演奏スキルでロックでポップでソリッドな作品を生み出しました。
個人のスキルの強さがよくわかる修練の賜物みたいな力作でした。
その次の作品であるdialy Keyはそのスキルを生かして、再びギターロックや自分たちの守備範囲を広げる実験精神に溢れた傑作でした。
この作品の凄い所はテクいのにそう聴こえないように作っている所だと思います。
C3は見せつける感じでしたが、dialy keyはテクいのは当たり前と言わんばかりにさりげなく面白い事をしてたり、シンプルな3ピースギターロックにテクい感じをさりげなーく忍ばせてたりします。
よくよく聴いているとよく3人でこれだけやってるなと思わされます。
特にギターは完全に3ピースにアジャストされてて、全く違和感なく分厚く聴こえていて、尚且つ歌っているというスキルの極致みたいなデキ。
この作品を受けて&周年記念で3ピースでの武道館も成功させて、ポップでロックでソリッドな人力3ピースバンドとして国内でも有数のバンドになったと思います。
それを受けてのmaterial clubⅡです。
僕は
待ってました!
そして
バンドでやる意味あるの?
こんなふうに思いました。
6年前の処女作はある種シーンに対してのカウンターのような作品でした。
ロックバンドのフロントマンがソロで作品を出す時に打ち込みを使うというのはもちろん、マジメに変な事もするという遊び心を持った作品は珍しかったです(昔は結構あったなぁ)
そして、また岐路に立たされているのではないのかなーとも思いました。
全然関係ないかもしれないし違うかもしれないですが、そう思ってしまったのです。
バンドをやっているのにバンドをやる意味ってなんだろう?
人が違えば色々と変わるのはわかりますが、どんなジャンルもギターロックに変換できる強靭なバンドが既にあるのに•••。
ちなみに今回はバンドで5人編成です。
ベボベではないのでシンセと同期ありの状態です。
打ち込みで作るという縛りと自由を捨ててしまうのがとても勿体ないと思いました。
カチっとしたのより変なの聴きたーいって思ってました。
それを受けてのベボベが楽しみだからという理由もありました。
再始動の知らせから時間が経ち作品が家に届きます。
CDプレーヤーにセットして再生ボタンを押す。
曲が進んでいき約39分の鑑賞が終わります。
やっぱmaterial clubって最高だよな
ファンってやつは単純なもんです。
大好きなミュージシャンの新しい作品を聴けばこうなっちゃいます。
ただし、こんなチョロイファンの代表みたいな気持ちというのを差し引いても納得のクオリティでした。
全曲参照元が違うし、年代もマチマチです。
メロディーと歌詞はいつものクオリティなので最高なのは当然。
もちろんお馴染みの得意技もあったりしますが、特に良かったのは5人編成でやる意味とこのメンバーと一緒にやる意味と作品がカウンターとしてちゃんと機能してるところです。
5人編成でやる意味は単純に音の厚みとアレンジの自由さです。
鍵盤があってこその曲があるし、ギターが2本あってこその曲があります。
別に3人でもできるのかもしれませんが、やはり5人いるとアレンジに良い意味で派手さが産まれてポップな曲がよりポップに聴こえますし、緩急をつける時も鍵盤だけにしたりもできたりと、素人の僕の素人考えでもわかるぐらい華やぐなあと思います。
また、このメンバーと一緒にやる意味は次の作品に向けてのインプットにもなってるんじゃないかと思います。
自分達の手の届く範囲をほぼ網羅してるからこそネタだしは大変だと思うし、それを作品としてキッチリとしたクオリティで出すとなると付け焼き刃では無理があります。
バンドとして一緒に音を出して、作品を作り上げて、ライブする事こそが最良のインプットになるはずです。
そしてこの作品は今のシーンにカウンターとしてとても機能してます。
凄腕のメンバーが集まってるからこそ、普段できない事をするというのではなく、あくまでも延長線上の内容を初々しく鳴らすという、1stとは違った意味での遊び方でバンドサウンドがめっきり少なくなった現シーンに軽やかな一撃を見舞ってると思います。
今はまだロックバンドに対して逆風が吹いている時期ですが、あと数年すればまたロックバンドの時代が来ると僕は思ってます。
AIの作曲がどんどんクオリティを上げていると言われています。
僕もそう思っていますがAIには致命的な欠点があります。
それは記名性の無さです。
結局のところ誰々風だったり、~年代風みたいな所から逃れられません。
人力でしか未来の音楽を作れないはずです。
その記名性の無さが記名性だと言えなくもないですが、芸術に於いては無個性は個性にはなりえません。
そして次の時代のロックバンドに求められるのは、作品の圧倒的な記名性と人力でどんなジャンルもイケる技術だと思います。
作品に圧倒的な記名性を与えるにはプレーヤーとしての個性と濃い色に加えて知識に裏打ちされた楽曲への切り口の鋭さです。
僕が弾くギターとあなたが弾くギターは同じ機材で同じように弦を押さえても違って響くはずです。
打ち込みやシンセを使わずにそう思わずにいられない曲ができれば、デジタルにアナログを混ぜ込むことができます。
揺らぎこそ音楽だし、バンドの揺らぎが独自のグルーブを生み出します。
組んだばかりのバンドにしてはデキが良すぎてビックリしてます。
ただ曲が良いとか詩が良いとか演奏が良いとかっていう話じゃありません。
バンド作品としてとても素晴らしいです。
なんだか初々しい感じもあるし、でも、緊張感もあるし、楽しそうでもあるし、屈託ない感じもあるし、でも、ぎこちないような感じもあったり•••スーパーバンドなメンバーだけどフレッシュで青春だなぁ。
やっぱりバンドと青春は切り離せない。
青春が終わって知った。
青春は終わらないってこと
って歌ってましたもんね。
短い時間で全員が全力で取り組んだだろうなっていう気合が作品から伝わってきて前作とは違った魅力が眩いばかりに溢れています。
ライブは残念ながら行けないけど生で観て音を浴びたいなって思いました。
前作よりもストレートな作品だから色々な人に届いてほしいし、こんな作品がいっぱい発表されると最高だよなーって思いました。
おしまい。