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「Fishmans」の世田谷3部作の中で最も影が薄いと思われる「Long Season」はもっともっと語られていいよな。

はじめに

なにかの拍子に無性に聴きたくなる音楽ってありますか?
プールの前には「B’Z」の「Ultra Soul」を聴きたくなったりとか、失恋したら「aiko」の「カブトムシ」とか、スキーに行きたくなったら「広瀬香美」の「ロマンスの神様」とか・・・・全部古いですね。しかも安直すぎるw

例えば、僕は何かを初体験する前は決まって「Daft Pank」の「Discovery」が聴きたくなります。
題名の意味は発見なので初体験とは関係ないのですが、癖になってしまっているのか聴きたくなります。
ボコーダーの声を真似しながら「One More Time」や「harder better faster stronger」を歌ったりしてます。
本題とは全く関係ないけど参考動画です。

それと同じで僕には季節の変わり目になると無性に聴きたくなる音楽がありましてですね、その曲が今回の本題です。
35分にも渡る音楽一大絵巻の「Long Season」です。
私はこの曲こそ「Fishmans」の到達点だと思っているのですが、私の思いとは裏腹にあまり語られていないみたいです。
世界的には評価されていて、海外でのFishmans人気の源はこの曲だと思われるのですが、日本だと知られてはいるけど影が薄い気がします。
「空中キャンプ」とかはとっても評価されていてレビューみたいなのも結構あるみたいです・・・なぜだ?
一番レビュー数が多くて当然なはずだー!
もっと色々な人の「Long Season」レビュー読みたーい!
なんとなくレビューが少ない理由はわかるのですが、それでも読みたーい!
ならば自分で書いて自分で読んで楽しもう!
いや、自分が書いて他の人が書くのを楽しみに待ってよう!
これだ!

どんなバンド

曲の紹介の前にバンドを紹介しておきます。
というか有名だからいらないかもしれませんが一応ね。
脱退した人もいますが最終メンバーを書いていきます。

佐藤伸治 Vo/Gt 大体の曲の作詞作曲をしてる。98年死去。
柏原譲       Ba/Pro   実質的な最後のライブで脱退。
茂木欣一 Dr/Cho  現在はスカパラのメンバーでもある。

良い写真

脱退した人も含めれば最大5人組のバンドでした。

Fishmansはよく孤高のバンドと表現されてます。
このバンドはメンバーが抜ける時に音楽的進化を遂げる珍しいタイプでし
て、メンバーが抜けるたびに焦点が定まっていき音数の面でもソリッドになっていきました。
もちろんサポートのメンバー等もいるので、単純に減ってるわけでもないですが、作品を重ねる毎に初期のロックステディみたいな感じはどんどんなくなっていって、人も抜けていった先はジャンルで括れそうで括れない特異な音楽に変貌してました。
どうしてそうなってしまったのかというのは、他のサイトとかに書いてあったりするので検索してみてください。
とにかくキャリアを重ねていく過程で人が抜けていきスリーピースにまでなるけど、バンドとしての表現はどんどんソリッドに研ぎ澄まされてカテゴライズしずらくなり、フロントマンの不幸もあって安易なフォロワーの登場と成功を許さない孤高の存在になってしまったのだと思います。

どんな作品

SEASON

前提として「Season」という曲があります。

良い曲ですよね。
でも、なんかとても寂し気な感じもしますよね。
新しい季節の到来を歓迎してる感じではなくて、過ぎ去ってしまう季節=時間に対してノスタルジーを感じてるみたいな雰囲気です。
「Get Round In The Season」(季節は巡るとかそんな感じの意味だと思う)という言葉が何度もリフレインされます。
なんだかとても無常感が感じられます。
この季節が終わってほしくないけど、世界には時間が流れていて季節は巡っていってしまうような。
PVでも提示されているような夏の終わりの原風景みたいな映像を想像すると共に、都会でビルばかりの殺風景で遠くの景色がゆらゆらしているような景色も僕は想像してしまいます。

良い曲だなぁって感情と同時に解釈の余白がとても大きく残されていて理解が追い付かないからかモヤっとした変な気持ちになります。
こんな感じで夢のような現実のような地に足のついてない感じの掴みどころのなさがとても癖になる名曲です。

Long Season

そしてこの曲を文字通りLongにしたのが「Long Season」です。
元の曲も6分近くあるので、普通のポップミュージックと考えたら割と長めの曲ですが、「Long Season」は35分の大曲です。
といってもこの曲は5つのセクションが設けられていまして、展開が変わる所でCDではトラックとして番号が振られていますし、レコードであればセクション1,2がA面で3,4,5がB面として振り分けられています。

この作品は2016年に初めてレコードでも発売されまして(それまではCDオンリー)、音もグッとくる感じでとても好きなのですが、A面B面をひっくり返す必要があるので、どうしてもセクション1,2と3,4で間が出来てしまいます。
物理的な問題なのでどうしようもないけど、作品の楽しみを幾らか奪ってしまっています。当時はこの作品だけレコードが発売されなかったのもその辺が原因だと思います。
その点CDは終わりまで一気に聴けますので、CDやサブスクで聴く方が作品の楽しみ方としては正しいと思いますし自然です。
かといってレコードもなんとか自然になるように頑張ってくれているという事は付け加えておきます。
ただCDが作品にとっては完璧に適しているってだけです。

そして「Long Season」なのですが、原曲とは全然違った佇まいや聴き心地の仕上がりになっています。

セクション1

まず、一聴して印象に残るのはピアノのループです。
単純なメロディーのループですが、コレしかないぐらいのハマリ方でこの曲の魅力をググっと押し上げています。セクション1と4と5で流れ続けますが、聴いていると時間の流れがゆっくりになるような、トリップ感がすごいフレーズです。
そして同時になんか不安になるような胸がザワザワするようなフレーズでもあります。これにひきつった笛の音みたいなギターの寂し気なメロディーのリフも重なってより一層切ない感じが際立ちます。
また全体のテンポも原曲よりグッと落とされています。原曲のテンポは軽やかさも感じれるポップなテンポ感でしたが、こちらは丁度遅すぎないぐらいのテンポになっていて、よりトリップしやすそうな絶妙なBPMです。
夏の湿気というか気だるさみたいなのが感じられるようなテンポでもあります。
ドラムの音も主張が感じられる音になっていて、ロック脳な私にもビンビンに感じさせられる音に仕上がっているのですが、バックのピアノのループやシンセのリフと合わさると途端に孤独な音に聴こえてきて、ここでも不安さや寂しさを強調される聴こえ方になってて面白いです。
セクション1と4と5に関してはどの音もこれしか正解ではないぐらいのハマ
り方で、マジックがスタジオで巻き起こりまくってたんだろうなと思います。

セクション2

セクション2はセクション1の後奏とも言うべき部分です。
「Get Round In The Season」のリフレインの後に力強いUAのスキャットが響き渡ります。このスキャット聴くだけでとんでもない才能だなと思えます。
セクション1のラストぐらいのテンションにもう一回到達してセクション3に続きます。

セクション3

セクション3に入ると景色が変わります。
この間は全く歌やピアノのループが入ってこず、サンプリングの音やシンセの不気味な音やウインドチャイムのキラキラした音が実に巧妙なタイミングで鳴らされ、ドラムとパーカッションのバトルとも言えるような叩きあいに発展していきます。
歌が入ってないのに全然飽きさせないのがとてもスゴイですよね。
なんかダラダラした時間になりがちだし、ここだけ飛ばしたりする事もありがちな時間ですが、なんか気持ちよく聴いていられるんですよね。
とても不思議です。

セクション4

そしてギターのコードがジャンジャンジャンと鳴らされてセクション4に入っていきます。
遠くで鳴ってるように聴こえる少し乾いたギターやテープの逆回転がリズムを刻んでる感じとか空っぽの空間で鳴るような口笛とスキャットの効果なのか、楽曲の深いインナーワールドに誘われる感覚です。
そしてあのピアノのループがフェードドインしてきて、胸がギューっとするようなひきつったギターの音が流れ、それも消えてピアノのループだけが、まるで夕方の誰もいない所で風に吹かれてるみたいに流れてきます。

セクション5

そして歌とドラムとベースが入ってきて、景色が一気に開けたみたいな感覚でセクション5に入ります。
セクション3と4が禁欲的な内容だったのでここの爆発力は凄まじく、初めて聴いた時は心がザワザワというかブワーっというか言い表せない感じになりました。
今まではクールな演奏のように聴こえてましたが、ここからは心なしか演奏も熱を少し帯びるように聴こえてきます。
クライマックスに向けてバンドの演奏が熱を帯びる中、バックのコーラスとスキャットとバイオリンの音色が幻惑的に鳴り響きます。
レコードで聴いてるとここのバイオリンが少しだけ歪んで聴こえるのですが、それがまた何とも言えないトリップ感を表現してるみたいで大好きです。

最後に

いやーこの記事を書くのに1ヶ月かかりました。
めちゃくちゃ書くの難しい。
なんでレビューの文章があんまりないかが良く分かりました。

こんなことは言ってはいけないけど
まず聴いてみてほしいってことを伝えたいです。
とても良い曲であり作品でもあるので上手くオススメしたいけど、いざ書こうとすると何をどう表現して書けばいいのかが全然わからない。
この曲のレビューを書いてる人たちすごいよ!
僕も何回もこの曲をリピートしながら書いてたけどスゴイしか言えないよ。

なるべくがんばって説明してオススメしたつもりですが、伝わらなかったらすみません。

上手く作品の良さを伝えられなくて作品に申し訳ない。
ただ、マジで最高傑作なのは間違いないので、どんな媒体でも良いので聴いてみてほしいと思います。
そんですごく良いなと思ったらライブ版も聴いてほしいです。
この感じが到達点なんだなって思える素晴らしさだからぜひ!

おしまい

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