過去に囚われて
ラーメンが食べたくて、一人でコンビニにラーメンを買いにやってきた。今日はコンビニのラーメンでいい。そんな気分だった。
ちゃんぽんラーメンか味噌ラーメンかで迷って、結局味噌ラーメンにした。レジに持って行って、自分の番をぼんやりと待つ。
なんか聞き覚えのある声。なんか見覚えのある雰囲気に姿。制服に貼られているネームプレートに、見覚えのある名前。
友達だ。いつの間にか会えなくなって、そのまま卒業して別れた友達だ。三年近く会えていなかった。なんか、神経がぐわんと揺れ動いた感覚がした。声をかけてみると、びっくりしたように、普通に反応してくれた。住んでるのこの辺じゃなくね?とあの時と変わらない声色でその子が言った。
今は何をしてるのか、どこに進学したのか、進学も、果たしてしたのか、色んな事を聞いてみたかったが、聞かないでおくのが私の在り方であろうかと、別に何も聞かなかった。「えっ、元気?」とだけ聞いた。「めっちゃ元気だよ」と笑って答えたから、それで良しとした。
ラーメンは温めるかと聞かれて、なんとなく、ちょっとの時間を共に、久しぶりにいられるように、温めてもらった。
重いやつだなぁ、と思ったけども、久しぶりに会ったんだから、それはノーカンとしてほしい。
かといって三年ぶりにあった人間同士、話すこともなく、ただ電子レンジを見つめていた。
コンビニの電子レンジって早いもんで、いつの間にか出来上がって、その子は取り出して、割り箸を挟めてくれた。
「熱いかなぁ」
「いや?そんなに熱くないよ。大丈夫」
その子はそう言って、差し出してくれた。「ありがと~」と言うと、「じゃあね」と礼してくれた。それはまた来てねのじゃあねなのか、それとも、なんて深く考えるのはやめた。
あったかいラーメンを両手に抱えて、ぼんやり帰路を歩く。空は曇天曇り空嬉しいんだか、寂しいんだか、なんとも言えない絶妙な気持ち。久しぶりにあっさりと元気そうな顔を観れた衝撃が未だに足に絡みついている。
「世界って、広くて、狭いなぁ」
そう思い、髪の毛をごしゃごしゃにかき乱した。今日は、多分寝れなさそう。自分だけが過去に囚われてるような切ない感覚。泣きそうだ。よく耐えたもんじゃん。
でも、それがある意味、丁度よかった。