サ終したゲームの非公式攻略本をつくった話

『政剣マニフェスティア』というゲームの非公式攻略本を同人誌として1年かけて作りました。この記事はその1年間のあれこれを綴ったものです。
だらだらと駄文が続きます。ご注意ください。
*1: 2024年1月28日更新『決算報告』
*2: 2024年3月1日更新『決算報告』
*3: 2024年7月7日更新『決算報告』


政マニってなんぞや

『政剣マニフェスティア』は、2016年にDMMをプラットフォームとして配信開始されたブラウザ型のタワーオフェンスゲームです。プレイヤーは総理として政霊(キャラ)を操作し、戦挙でヤトー(敵キャラ)を倒してコクミンを守ります。

このゲームはフィクションです。
実在の人物、団体とは関係ありません。
ホントに一切関係ありません。
ただの美少女が戦うファンタジーです。

幾度となくゲーム内に表示される。

ゲームのあちこちに見られるアブないワードで運営存続が危惧されていましたが、ゲーム性の高さから4年以上生き残ることが出来ました。
残念ながら2020年7月にDMM版のサービスは終了しましたが、オフラインでのプレイを望む声が多く、Steamに移管しリリースするためのクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/view/295890)が開始されました。
なんと、クラファン開始2時間後に目標支援額1000万円に到達した挙句、その後1日半で2000万円に到達してしまいました。返礼品の拡充やコンテンツの追加が併せて行われ、最終的には2690万円を集めてクラファンは終了しました。
『東方ダンマクカグラ』が2億弱を、『マジカミ』が1.5億弱を集めたことは記憶に新しいですが、ソシャゲの理想形として語られているようですね。

さて、クラファンから1年が経ち、2021年5月18日にSteam版(https://store.steampowered.com/app/1482490/_/?l=japanese)が正式にリリースされました。Steam版では、ブラウザゲー特有の『時間経過が関係するコンテンツ』や『課金コンテンツ』が廃止され、キャラクターのパラメータや経験値テーブルなど様々なバランスが調整されています。つまり、基本ルールこそ同じであるものの、キャラクターの使用感やプレイ難易度等に大きな変更が入ったというわけです。
この状況を受け、DMM版からのプレイヤーである汐風キャビア/すじこ氏が自身のTwitch・YouTubeチャンネルにて、様々な情報を共有する配信「政霊情報交換会」を開始しました。配信についてはこちらをご覧ください。
政霊情報交換会について(note):Steam版政霊情報交換会~あくまで個人の感想です~|汐風キャビア/すじこ

攻略本企画発足

2022年10月1日

攻略本を作ってみたいという話題が上がりました。それまでもtwitter(当時)にて、同様の意見がちらほらと見られておりました。本にする上で重要なのは網羅性です。しかし、網羅する為にはエグい人日が掛かってしまいます。

当日の配信内外にて話題が盛り上がり、熱量と人の多さ・幅広さに希望が持てたのでTwiplaにて企画を立案してみました。多くの総理が企画に興味を示していただき助かりましたが、人によって掲載してほしい情報の広さ・深さに隔たりがあることを実感しました。
Twipla企画リンク:https://twipla.jp/events/531453

2022年10月 Twitter/Discord始動

大がかりな企画となるため、告知用のTwitterアカウント・実作業用のDiscordサーバーを設立しました。また、参加希望者の最大公約数的な攻略本にするためのアンケートを実施しました。
反省点1.「参加」「興味あり」で参加区分を分けて回答してもらうのは愚策でした。わかりづらすぎる。
反省点2.discordのチャンネル作りすぎた。
企画用Twitter:https://twitter.com/mani_hint2023

2022年11月 画像使用許諾

攻略本を創り上げるうえでどうしても欲しかったのがゲーム内画像でした。
スクリーンショットを使うと権利上アウトですし、かつてそのような事件があったことも把握しております。
また、「引用」として掲載するにしても点数が多く(マップ画像だけでも150近くあります)、引用要件の主従関係があやふやになってしまうことが課題として挙げられました。
現権利者の方がDMM版の頃から二次創作に協力的であることは存じ上げておりましたが、二次創作の本音と建前の板挟みになりながら連絡を取りました。結果としてご快諾をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

この頃にはデータの調査方法や集約方法などを内々に決定しておりました。既に攻略wikiは存在しておりましたが、攻略本を作る以上二次情報で構築されたものはお出しできないと判断し、全て人力調査していただきました。誤脱字は生き物なので目を瞑っていただきたいですが、誤情報は(ほぼ)内と思います。思います…

2022年12月 政霊寸評、イラストの担当者募集開始

攻略本にはキャラクターの特性をまとめるページがよく見受けられます。
そこで政霊159人の特性をまとめた”寸評”、ナイカクを含めた160人の”イラスト”の募集を始めました。
数が数なので数月ずつ立候補と提出の〆切をずらして募集し始めました。もっと効果的な募集方法がなかったものか…
最終的には159名の寸評を11人の総理に、160名のイラストを18人の総理にご担当いただきました。ありがとうございます。

2023年3月 見本紙を触りに…

上下巻ともにおよそ300ページになることが予見されていました。フルカラーでこの厚さになると扱える印刷所も限られ、紙の厚さによるページ数制限も出てきます。
実は、企画開始段階で枢密院メンバーからカラー・分厚い・少部数の3つを叶えてくれる印刷所のご提案がありましたので、見本用紙を取っていただいておりました。(飛行機乗換の合間に拝見してきました。)

また、この頃には寸評等のチェックが開始しました。政霊がバラエティに富みすぎて記載掲載する内容で侃々諤々と議論が毎夜続きました。
法事もあっててんやわんやした一か月でした。

ちなみに、宇宙戦挙区のツイー塔に「X」を割り振ったのは私です。TwitterがXに代わる前だったのでこれは私の功績です。ハンドパワーです。

2023年5月 ステージ基本情報の収集、攻略本文の執筆開始

各ステージの基本情報(経験値、取得経験値、推奨Lv)等の収集が完了しました。取得Goldはマップ選択画面に出ないため、実際にクリアしてからボーナスがかかる直前の値を見る、という原始的な手法を採り入れました。

攻略本文の執筆は以下のステップを踏んで進めていただきました。
【攻略班】内々に設定した使用レアリティ基準・推奨レベルで攻略情報量(小・中・大)を設定し、編成例・攻略上の難点・注意点を書き出す。
【本文班】攻略情報量・メモをもとに攻略本文を書き起こす。
【組版・編集班】誤脱字や表現を修正しつつ、組版上の字数制限に収まる文章に書き換え、本文データに流し込む。

たった3項目ですがそれはそれは大変な作業でした。担当者の皆さんお疲れ様でした…そしてごめんなさい。
裏ではヤトー名や本文表記に関する名称統一表の作成、基本システム(上巻・第1章)の執筆を始めました。第1章の挿絵が全部私のスクショになっているのはそういうことです。表記については、本家で表記揺れしているものもあるため、攻略本中の表記は公式のものではありません。
※誰か宇宙戦挙区に出てくる{飛行目玉}の正式名を教えてくれ。

2023年6月 寸評紙面構成開始、表紙案

いただいた政霊寸評と政霊イラストを1ページにまとめあげる作業が開始しました。組版の方には胃が痛い3か月にしてしまいました…すみません。組版2人で600p…? どこからか刺されても何も言えない。
ドライブに徐々に紙面案がアップロードされていくのを眺めていると、実際に攻略本が作られている実感が湧いてきます。

今回の攻略本は分冊化するため、表紙を2つ作らないといけなかったわけです。枢密院内部では外部委託する案もあったのですが、頒布額に乗っかかってしまうのと、私自身に委託先を探すリソースが無かったため、超シンプルなデザインに決定しました。今となっては意外とよかったのでは、と思っております。

作業時にすさまじい量のgoogle driveリンク(提出先、管理シート、etc…)があったため、リンク集ができたのもこの頃でした。作成いただいた御仁には頭が上がりません。ありがとうございます。
(自分は原著論文の執筆とドン被りし、この頃全く馬力になりませんでした)

2023年7月前半 印刷所と連絡、DBパート、執筆者一覧作成

3月に見本紙を物色した印刷所(株式会社RET TRAINさん)とのやりとりが開始しました。9/17受取 ⇒ 9/5入稿 ⇒ 8/5入稿予約 という段取りでした。
夏コミあたりの繁忙期だともう少し早く入稿しないといけなかったのですが、幸いにも繁忙期からは外れてくれました。
オンリー運営に支援印刷所指定してもらう、という強硬手段も取っちまいました。オンリー運営さんも大変お忙しい中、お手数をおかけいたしました…

DBパート(上巻・第3章)の紙面流し込み用成型も開始しました。
経験値テーブルの再調査、覚醒スキルの各Lvにおける強化倍率、覚醒能力、絆、アイテム、好物、売店…と妙に項目数が多くここも大変な部類でした。
ビアンカは覚醒スキル強化画面とスキル情報画面でデータが変わっていたり…政霊の特性の新情報が見つかったり…

この時期にセントレアの搭乗ゲートでギリギリまで作業してた人間は恐らく私です。

2023年7月後半 部数の確定

8月の入稿予約時に発行部数の目安が必要となることから、企画discord(作業者向け)・企画twitter(外部向け)でアンケートを実施しました。つまり、受け渡しの形態こそ違えど、ほぼ全員取り置きになるわけです。
大負債を抱えるわけにはいかないので、ギリギリの部数の発行となりました。紙媒体をお求めいただけなかった方には申し訳ないです。ぜひPDF版をどうぞ。情報量は変わりませんし、背も折れません。
結果として、内部32+外部20=52から見て70部に決定しました。

2023年8月前半 地獄の差込画像撮影

攻略ページに差し込む「攻略中の様子」の画像撮影が始まりました。
最終的に270枚近い画像が差し込まれたのですが、本文で言っていることを補足できるような画像か、印刷時に見やすい画像であるかなどなど…ここでもかなーり特定の方に負担が集中してしまいました。またまたごめんなさい。
差込画像の撮影はデータ収集よりも編集の側面が強く、多人数で分担するとどうしても視野が統一できません。組版や本文編集にも通底しますが、合同企画の難しさをひしひしと感じました。

2023年8月後半 組版最終追い上げ、推敲・校正

夏コミを過ぎ、8月下旬にかけてすさまじい勢いで組版が進んでいきました。文章量もすさまじく誤脱字や修正点も相当数見つかりました。どうしてあいつらは生えてくるのか…
毎日毎日頭から尻まで全部読み直して修正点を洗い出す日々が繰り返され、ノイローゼと期待感の均衡に精神をやられました。思えばハゲてきたのもこの辺…

2023年9月上旬 脱稿・入稿

ギリギリまで修正をしておりましたが、無事に印刷所〆切(9月5日)に間に合い、上巻268p / 下巻276p の大ボリューム合同誌の完成と相成りました。
一年かけたプロジェクトが無事に終わりを迎える最高の瞬間でした。むしろ、オンリー当日より嬉しかったかもしれません。

その後、発行部数・印刷費・需要数から勘案して、頒布額の決定が行われました。頒布部数が一部ずれるだけでドエライ差になってくるため、綿密に議論しました。

6月に書いていた論文の投稿とも重なり、生きた心地はしませんでした…
acceptされたので今となっては笑って話せます。

2023年9月17日 オンリー当日

印刷物は、印刷所から会場(近辺の営業所)に送付される手筈でしたので、はじめて完成品を見たのが当日朝でした。誤脱字・衍字のチェックのために印刷するものとはワケが違いますので、実際に目で見るまでどきどきしておりました。自重で背の部分に若干の割れは生じていたようですが、致命的なミスはなく無事に頒布できる運びとなりました。

唐突ですが、算数の問題です。
A5 (148mm x 210mm), 紙質90kg, 280pの本を70部1セットとして2セット作ります。重さはどれだけになるでしょう。ただし、紙質は四六判 (788 mm x 1091 mm) 1000枚のものを表します。

A. 90 [kg] x {(148 [mm] x 210 [mm]) / (788 [mm] x 1091 [mm])} x (280 [p] ÷ 2 / 1000[p]) x 70 [部] x 2 [セット] = 63.8 [kg]
これはあくまで紙の枚数で換算したものですから、印刷に要したインク重量がさらに加わります。道理で腰を痛めかけるわけですね。

執筆者向けの事前取り置きも問題なく進行し、さらに執筆者以外の総理にも大変好評でした。皆さん「厚い…」と口にしておりましたね。それはそう。
5000円(一般)/ 3500円(執筆者割)という価格設定のため、お釣りの心配をしておりましたが、終盤には「高額紙幣歓迎」を謳う始末でした。
最終的に会場で53部を受け取っていただきました。

頒布会~アフターの間でサークルお片付けタイムがありました。最後までせっせこせっせこweb通販用の梱包をしておりました。ごめんね運営さん。
枢密院の方々には一年分 (?) の袖の下を渡しました。
なんばん往来|http://sakaeya.co.jp/story_of_nanban/

※翌日(18日)は用事のため、朝の4時半に巣鴨を出ました。眠ぃ。

執筆者向け(9/22)/ 一般向け(9/27)通販開始

執筆者でイベントに来られない方向けの郵送取り置きも受け付けておりました。手数料や配送料で割高にはなりますが、都合1 kgの本を持ち歩くと肩がイカれるので正しい選択かもしれません(?)。

ちなみに、一般向け在庫は7部あったのですが、40分で全部売れたらしいです。魔剤?!

PDF版通販開始(10/16)

入稿データを修正しまして、原稿としてのPDF版の頒布を開始しました。
販売開始から2か月ほど経ち、ちょこちょこお手元に届いているようです。

まとめ

同人誌を創るどころか、1年にわたる超大型企画を運営するのも初経験でありましたが、皆さんの協力のおかげでなんとか形にすることができました。
至らないところしかなかったと思いますが、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

最後に、(1) 本企画でやり残したことと、(2) 決算報告 を行って〆ます。

やり残したこと

※ここのネタは使っていただいて大丈夫です。

  • 有識者総理のクロスレビュー、対談企画(話題はいろいろ)

  • 攻略企画:一筆書きとか、レベリング縛りとか、単騎とか

  • 各政霊の詳細
    ⇒紙面上の都合でがっっっっっっつり削りました ノータッチなら上巻だけで2倍~4倍ぐらいあったかも

  • ツイスト・カオス 高難易度ステージの★3攻略

  • 完勝攻略

  • イベントステージ攻略
    ⇒執筆者のニーズを見てイベントを除く通常ステージのノーマル・ハードに絞っていました。まだいっぱいあります。

  • ステージごとのヤトー沸きデータの取得
    ⇒列車のダイアグラムのような出力を検討したんですが、ボリュームと見栄えの点から省きました。

  • QRコードで動画とリンクする
    ⇒撮影者による違い、投稿者のchの圧迫(企画垢なら無問題)

  • 町興周辺

決算報告

2023年11月現在(10月分Booth売上まで反映)
詳細は下記のPDFファイルをご確認ください。
売上から印刷費等諸費用を差し引いた ¥42,817 は日本赤十字社に後日寄付させていただきます。
※後日Boothより振り込みがあった分は、都度ご報告いたします。

↓ PDF版攻略本の頒布ページです。1部3,000円です。
550pぐらいあって40人近い人が1年掛けたものなので、この価格です。

↓ ご本尊政剣マニフェスティアの販売ページです。4,100円です。
突き詰めると軽く1000時間はプレイできます。よしなに。

2023年お疲れ様でした! 【終】


*1:2024年1月28日更新
日本赤十字社「令和6年能登半島地震義援金」宛に、経費を差し引いた¥42,817を寄付いたしました。

*2:2024年3月1日更新
日本赤十字社「令和6年能登半島地震義援金」宛に、経費を差し引いた¥8,430を寄付いたしました。

*3:2024年7月7日更新
日本赤十字社「令和6年能登半島地震義援金」宛に、経費を差し引いた¥16,860を寄付いたしました。

戦略本部 / abc


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