ことがない
長く何かを続けたことがない。スイミングスクールも絵画教室もサッカークラブも、通いはじめてすぐ嫌になり、しばらく我慢するものの、何かのきっかけで辞めてきた。小中学校もすぐに嫌になったけど、あれは途中で辞めるというオプションがなかった。うまくできないことが腹立たしく、とても恥ずかしかった。
長く何かを愛したことがない。同級生が当たり前のようにハマっていった邦楽や洋楽、プロスポーツにも興味が湧かなかった。継続して読むようなマンガや小説もなく、誰かに熱狂した試しがない。ついには30歳で実の家族を愛することも諦めてしまった。モノや他人に深く関心を持つというのがどういうことなのか、今でもよくわかっていない。
いつもの公園にはいろいろな人がいる。楽器の練習やランニングをする人たちをよく見れば決まった顔ぶれで、(ああ、この人たちは何かをずっとやり続けている。長く何かを愛せている)と思うと、自分のことがとても恥ずかしくなる。
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短歌は新人賞応募の時期だ。作歌一年目だった前回は勢いでめぼしい3賞すべてに応募したけど、今ではそこまでのエネルギーがない。このまま気持ちがしぼみ続けて、ふと辞めてしまうことになっても驚かない。それは今まで通りの自分で、あまりにも順当なことだ。
ずっと作歌を続けている人たちを立ち止まってただ眺める。公園のあの人たちのようで、とても眩しく、僕は恥ずかしい。
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「蝉時雨」みたいな言葉を発明するまで続けるよ。