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賃金を上げる一番の近道とは?

日本の労働者賃金が上がらない、と叫ばれ四半世紀。
解決するには、タコ壺化した日本マーケットから海外に進出しろ、とか、生産性を上げろ、とか、小規模事業者が多すぎるから、とか色々と議論されています。

多分全部あっていると思います、が、経営を10年以上続けて思うことは、見落とされていますが、評価制度の欠陥が一番の問題だと考えています。

年功序列。
この言葉がすべての元凶。
実力主義ではなく勤続期間によって役職、賃金を設定しましょう、という評価制度。
露骨に勤続期間での評価は減ってきてはいるものの、経営陣の頭が古い評価制度からアップデートされていないのは明白です。

なーなーな評価制度は労使ともに楽

上長や経営陣に評価がゆだねられている組織は多いと思います。
年度初めにざっくりと目標数値を設定をされるものの、その後の数値進捗がおざなりになったり、全く追いかけられなくなったりと、形だけのものになっていませんか?

雇用側、従業員共に真剣に数値を追いかけることもせず、賃金交渉も控えめな、ぬるま湯の中に浸かっているので非常に楽です。

しかし、この状況は雇用側に非常に有利です。
従業員が大きな成果を上げたとしても、賃金アップは数万円や役職でごまかしたりなどいくらでもやりようがあります。
ひどい場合は「全体の業績が振るわなかったから」などの言い訳も。

クリアしたらどれくらいの評価になり、いくら年収がアップするか、逆に数字が未達の場合は賃金にどれくらい影響があるか、明確に決められている組織は少ないのではないでしょうか?

中小企業の経営陣ほど頭を使って評価しろ

中小企業は人材に余裕がありませんし、採用にもそれほどコストを割けません。しかも、大企業と違い希望者を集めるだけで大変です。

そこで、やらなくてはいけないのは経営が頭をフルに使って未来を可視化し、従業員が想定通りに働いてくれた場合の報酬を明確に伝える事が必要になります。

例えば従業員Aさんに1200万円の年間売上をお願いします。
売上だけでは経営数値としては片手落ちなので、粗利率を70%でお願いし両者で合意します。

需要なのはこの時点で目標達成した場合の報酬と未達の際の減給を決めておくことです。達成報酬は営業利益から算出して計算するといいかと思います。
未達の場合は報酬の約2分の一を減給として提示すると、受け取る従業員の負担も少なくなります。つまり達成と未達の間にマージンを設けておくことが重要です。
マージンの中で最終的に話し合いで最終決定をすることとなります。

毎月の売上は100万円で粗利額は70万円になります。

そこで6か月の中間査定で700万円の売上と400万円の粗利だとするとどうでしょうか。売上はクリアしていますが、さらに重要な粗利が20万円ロストしています。

問題が明確になれば、どのような対策を取ればいいか、すり合わせることで解決できる可能性が高くなります。
この場合だと売上に対する粗利率が低くなっているので、外注に出すコストを抑える、内製化する、無駄な作業を廃止する、などで粗利率を高めるように指示をし、進捗を確認します。

最終的に1100万円と73%の粗利率となったとします。
売上は目標値を下回りましたが、粗利率は目標を上回りました。
しかし、実際の粗利額は目標が840万円、実績は803万円で達成率96%です。

評価的にマイナスです。
しかし、それほど大きなマイナスではないと判断できれば前述のマージンで対応をします。賞与の96%支給、役職昇給のペンディング、給与の据え置きなどになります。

数値化することで評価軸が鮮明になり、両者の交渉が進みます。
数値以外の不満を漏らせる環境作りも重要です。
経営サイドは腕の見せ所です。
どこまでの妥協ができるかをじっくりと検討します。

従業員こそ数値を明確化するべき

数値化することに嫌悪感を持つ従業員もいます。
数値を追うことは負荷がかかることです。
誰も好き好んでストレスに向かい合いたくありません。

しかし、数値化しなければ経営サイドの気分や飲み会の参加回数などどうしようもないことで評価される可能性が多々あります。

しっかりと働いているのに報酬が上がらない、と思っている方ほど成果の数値化をするべきなのです。明確になっていれば成果に合わせた交渉ができるようになります。

意味のない社内政治など必要なくなります。
明確化を拒むような企業であれば、いい機会ですので転職してしまいましょう。そんな企業はもう10年と維持できなくなります。

賃金が上がらないのは経営サイド、従業員サイドの怠慢が生んでいる

人口減少が明確な未来となりつつある日本。
マーケットは確実にシュリンクします。
日本人のマインドを変えるのはもう手遅れなのかもしれません。

しかし、世界の中で今のポジションを保つためには日本独特の生ぬるい環境から、諸外国が行っている厳しくとも、成果だけにフォーカスした評価制度を労使どちらのサイドも真剣に考えることが重要だと考えています。

成果を上げれば経営も報酬を増やすことができますし、成果を上げる従業員が揃えば会社運営も楽になります。また、明確な成果を上げれば従業員も意見を言いやすくなります。
成果に基づいた評価制度。
これが賃金を上げるための一番の近道です。

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