2024.3.3 『パレード』藤井道人

誰しも一度は想像する、死後の世界。
命が終わった後にな何があるのか、もしくは何もないのか。
それは終わった後にしか見えないもので、今を生きる私にはリアルなものではない。
これまでの短い人生の中で、何人かの恩人を見送ってきたが、彼らはどんな心持ちで最期のときを過ごしたのかは分からない。
ただ、幕が閉じたその先でも、どうか幸せであって欲しい。その気持ちだけは時が経っても変わらないものではある。

作品では綺麗に描かれた死後の世界。
生きているものには触れられず、気づかれず、見えもしない。
そのなかで、会いたい人に会うため、死にきれていない人々が新月の夜に街を闊歩する、この様子がパレードの様でもある。パレードは本来楽しい、祝い事のようだがここでは悲しみの先の期待、という意味でのポジティブさなのかもしれない。
震災で別れた息子を捜す美奈子(長澤まさみ)のが一人息子のリョウに対して抱くまっすぐな想いには心を揺さぶられた。

また、自ら命を断とうとしてやってきたナナ(森七菜)が作品において非常に重要な存在に描かれてはいたが、そこに強いメッセージ性を感じる。
本当は生きたくても命を落とした人間と、生きたくなくて命を落とした人間が巡り合うことも、死後の世界を想像するうえではあり得る話で、その中でナナ自身の考えや選択に対して、大きな影響を与えたことは間違いない。
同様に、本作を観られる私たちにとっては、それがどれだけ重い行為であるか、改めて考えさせてくれているようにも思う。

生きてさえいれば、と誰もが思う。
命があれば、何でもできるし、何にでもなれる。生きている者には簡単にそう言える。
ただその選択をするに至るまでには、相当の葛藤があったことは間違いなく、当人の想いを正しく受け取るとともに、その環境に対して改善をしていくべきである。(ただ現状は責任追及に見えるが…)

しかし、初めは全てに対して不信感を抱いていたナナが、ストーリーが展開するにつれて純粋で素直な少女の一面を取り戻していく姿は、間違い無く周りの影響が大きかったと思う。そして、関わる皆が等しく『死んだ者』に対しての心遣いがあったことが救いになったようにも思った。

結末については賛否両論があるかもしれないが、私にとっては改めて、会いたい人には会いにいく、話せる時に話しておく、そんな人生を歩んでいきたい。
もしこの命が終わるその時に、これで良かったと思える毎日を過ごすことが、遺された私にできる最大限の恩返しなのだと、改めて感じた。

(野田洋次郎の音楽が作り出す世界観とのマッチングも絶妙だった。)

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しっかり泣いておきながら苦言を呈すのもどうかと思うが、一点だけ引っかかったのは、美奈子の都合の良さ。パレードと形容できたのは、自分が求めていたことに出会えた安堵からか?ある意味では彷徨い続けているようにも見える、彼らの姿を綺麗に描きすぎているからなのかとも思った。

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