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読書

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読書の記録と感想等。
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#原田マハ

2024.2.10 『カフーを待ちわびて』原田マハ

読了後にも長く、じんわりと感動が残る優しい作品だった。舞台となった沖縄の離島。やはり沖縄の人はただ優しいのではなく、感謝の心が根底にあるのだと改めて感じる。

主人公は生まれつき右手に障害をもつ男性、明青。幼くして父を亡くし、母が蒸発し、祖母に育てられた過去を持つ。祖母の亡き後は裏で暮らす巫女のおばあを共に見守り合って、祖母に遺された商店を営み、少しずつ寂れてゆく島で生きている。
どことなく自分と

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2024.3.17 『本日は、お日柄もよく』原田マハ

人は言葉を使って感情を表現できる生物。様々なシチュエーションでスピーチをする場面も少なくない。想いを届けることは大変で、意図した通りに伝わらないことがほとんど。それゆえに相手に想いを伝えるためには工夫を凝らさなくてはならない。

そんなスピーチを主題にした本作品は、文章から登場人物の心がひしひしと伝わってくるようで、読み進めるうちに幾度も涙が込み上げてきた。音声は無いスピーチの文章かのに、その人の

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2024.1.11『楽園のカンヴァス』原田マハ

アンリ・ルソーの名画「夢」をめぐって繰り広げられる美術ミステリー作品。
現代から過去、また作中の物語へとシーンが移り変わってゆく度に少しずつ謎が紐解かれてゆくのが非常に心地よかった。
絵画には明るくない私が読んでも、「夢」という作品が持つ魅力に間接的に触れられたような感覚になり、「夢」に酷似した「夢をみた」の秘密に迫ってゆくその過程に虜になっていた。

芸術を取り巻くのは、権力や財産、真贋や既得権

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