涌田悠企画「ヤッホー、跳べば着く星」稽古(たちくらようこ)
2月下旬のある日、涌田悠企画「ヤッホー、跳べば着く星」の稽古にお邪魔しました。
「ヤッホー、跳べば着く星」は、ダンサーの涌田悠さん、俳優の石原朋香さん、ヴォーカリストの田上碧さんがクリエイションしているパフォーマンス公演です。乗る場で出会った3人が一緒に創作、乗る場冥利に尽きる!
今日は悠さん、朋香さんは13時集合ですが、悠さんは12時半に来てアップを開始、15分前くらいに朋香さんも。
このレポートでは名字でお呼びするのが慣例なのですが、皆さんがお互いを下のお名前で呼び合っているのがなんか素敵だったので、今回は下のお名前でお呼びしようと思います。
悠さんは短歌を詠むダンサー、朋香さんは演じるだけではなく創作したりデザインをしたりもする俳優、碧さんもギターと幅広すぎる歌声を使いこなすヴォーカリスト、専門のジャンル以上にやることできることが多いこのメンバー。メモも、縦書き横書き手書きに五線譜とバラエティ豊かです。
「西新井と札幌」のシーン
「やりますか」
ゆったりとアップしたりおしゃべりしてから、「西新井と札幌」というシーンの稽古を始めます。
まずは床にマスキングテープで謎の文様を・・・?
悠さんと朋香さんがそれぞれ独立したモノローグを話しながら踊ります。テキストはおそらく誰かの日記で、キリンや百日紅など日記に登場するモチーフがそれぞれの動きとなって現れているよう。別の物語を語る体が、同じ空間で近づいたり離れたりうっすら関係していたりして、なんか夢をみているみたいです。
「西新井と札幌」をどうやって作ったのか聞いてみると、
テキストはやはり日記。3人で創作交換日記をしていて、その日あったことや、連歌(最初の人が短歌の五七五を詠み、次の人が七七を詠み、また次の人が五七五を詠み…という形式)を記しているそうです。さっき悠さんが話していたのが朋香さんの日記、朋香さんが話していたのが悠さんの日記。
動きのポイントは、床の謎紋様。
公演会場の「水性」は、もとクリーニング店で、床にカウンターやハンガーラックの跡が残っています。水性の舞台面とほぼ同じ広さの乗る場の床に、跡の目印とつけられたのがさっきの紋様。その上に、それぞれの物語の舞台となる場所を重ねます。例えば右側の五角形は、水性ではハンガーラックの跡で、朋香さんの話す物語ではおうちのお風呂で、悠さんの方の物語では修学旅行で行った動物園。乗る場の床に見えない地層が積もっていきます。
朋香さんが作ったフライヤーにも
休憩
ポンカンを食べてたら、いつの間にか「時の旅人」の合唱が始まっていました。
この3人での稽古は昨年の9月にはじまり、昨年12月のSTスポットでの短編発表を挟んで、3月末にフルバージョンの上演となります。3月の公演の頃には7か月稽古していることになる、ロングスパン制作。その間に無数のシーンが作られていて、上演時間60分の間に散歩したり、西新井にいたり、ラップしたり、雨が降ったりといろんなことが起こる、朋香さん曰く「重層的な作品」になるそうです。
ラップの練習
本日は15時に碧さんが到着してラップ部分の録音をする予定。
悠さん「結構さ、録音だもんね。残るんだもんね」
ということで、2人で練習。
おぉお?!というリリックはまだまだ続きますが、ほぼ全編、皆さんが実際に聞いた言葉でできているそうです。あんまり長生き〜♪は、涌田さんが出会った上品なおばあさまの言葉。
もう一度「西新井と札幌」
ラップをひととおり確認したあと、先程の「西新井と札幌」をもう一度。山を一緒にみたり、百日紅とキリンが離れてみたり、さっきの稽古を踏まえてちょっとづつ変えて。
碧さんが到着しました!というわけで
⭐︎ハッピーバースディ⭐︎
実は今日は碧さんのお誕生日!おめでとうございます(ノ◕ヮ◕)ノ*.✧
悠さん朋香さんからのプレゼントは、猫さんのお部屋いっぱいの各種あんぱん&桜餅!!
「これは季節のあんぱん・・・?いい季節に生まれました」
今年の目標は「エレキギターをさまにする」だそうです。碧さんのエレキギター曲とても聞きたい。
ちなみに悠さん、桜餅を買った和菓子屋さんで「若いのに餡もの食べてえらいねぇ」と言われたそうです。西尾久では若者があんこを食べるだけで褒めてもらえます!
録音
乗る場の着替えスペースを使って、簡易録音スタジオを作ります。マイクを設置したり、棚をコートで覆ったり。
(反響が少ないことを "デッド" というのだそう)。
録音リーダーの碧さん「上手に歌うというよりは、楽しく歌うという感じですよね」「ここ狙って・・・声量はこれくらい出して大丈夫、けっこう元気にいきましょう」
曲は本番のおたのしみ♫
「雨」のシーン
続いて「雨」のシーンの稽古。雨のことを話しながらゆっくり踊る悠さん、ギターを奏でて歌う碧さん、朋香さんはグラスとお箸のパーカッションとコーラス。
なんて耳に心地いい時間なんでしょう・・・
碧さん「今いいと思った。初めてでここまでできるのすごい」
・・・ん?初めて?
碧さんの曲は実は今日が初お披露目で、朋香さんは即興でパーカッションとコーラスしていたそうなのです。
さらに、朋香さん、碧さんの歌を五線譜に書き起こし始めました・・・そ、んな、急に??
混乱する筆者に、碧さん「そういう能力があるんです」。
音階をキーボードで確認しつつ書き書き。
その間、悠さんと碧さんは、
悠さんの言葉と、碧さんの歌詞の合わせ方を相談。
セリフを言わないって選択をサラッとしてる悠さん・・・本当にすごいです。
15分後、五線譜4行分の楽譜ができあがりました。早い!!
「雨」をもう一度
「弾けます」朋香さん、キーボードでこの曲をマスター!
さっそくキーボードを加えてもう一度「雨」を。
目も耳も心地いいセッションを終えて、碧さんを中心に音量や音を整えます。
「全部追わない方が良さそう」「上手な合奏みたいになるよりは、ポロポロ弾いてたらたまたま合った、みたいな感じが一番かっこいいかな」
「いいシーンになるぞ」確信に満ちてる碧さん。
「西新井と札幌」と碧さんの居かた
最後に、悠さん朋香さんで稽古していた「西新井と札幌」での、碧さんの居かたを探ります。
2人の「西新井と札幌」を見せてもらった碧さん「ジョインか。ジョインの余地、あるかな」
たしかに悠さんも朋香さんもずっと動いて話しているので、視覚的にも聴覚的にもいっぱいいっぱいかも・・・
「これ以上言葉はいらないと思ってて・・・層を増やすというよりは、水性になる、くらいの居かたになるのかな」
しばらくおしゃべりした結果、《碧さんは人生ゲームのルーレット》ということで落ち着きました。不思議な例えかと思いきや、皆さんはものすごく腑に落ちています。半年の稽古で培われた、3人の言葉遣い。
今日の稽古はここまで。
軽やかに想像が広がるよい稽古でした。悠さん、朋香さん、碧さん、ありがとうございました!
涌田悠企画「ヤッホー、跳べば着く星」は3月22日〜24日、中野の水性にて。こちらも「円盤に乗る場サテライト」です。
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