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芥子
いつだっただろうか。思い出懐かしむ、残された押し花。別れを告げた、袖振る姿が痛ましい。感情、溢れて。
どこだっただろうか。彷徨い暮れて、河清に打ち臥す。澄みすぎた空気が、あまりに綺麗で呪わしい。感情、溢れて。
横たわる悲愴を棺に納めたい。それこそ仇夢とは知りつつも。
小雪を積んで、空は高く、高く。紙風船はもう破けて。昇らない、映らない。狐が血だらけで倒れている。雪はすべてを白く染めてゆく。無情に、無垢に。
女が踊ってる。白無垢纏うた、火を囲んで人が囲んで。どこか悲しげ、狐が奉られている。無表情、張り付き。
懐かしむ心さえ失われそう。籠鳥の運命が焼けついて。
初雪踏んで、跡、一つ二つ。手毬唄も、もう忘れて。歌えない、弾まない。鷹が空から見下ろしている。独り、座り、眺む。渇いた空気、袖は湿って。
嗚呼、闇が包んでいく。炎がどこか、色鮮やかで。手にした押し花、もう思い出せない。
嗚呼、雪が白く、白く、どこまでも染めて、染めて、遥か遠い記憶、記憶、呼び覚まし消えて、消えて……。
空、澄み渡り。染まりゆく、雪のように。嗚呼、嗚呼……すべて忘れて。
*
以前に書いた詩を発掘したので、ひとつ、載せてみました。上記のタイトル通り「芥子」という題です。
大学生のころは、小説もそうですが、ベースをしておりまして、曲作りも行っていました。
この詩は、曲は完成しませんでしたが、メロディは何となく作っていて、読んでいたら思い出したように口ずさむことができました。
今だったら、この詩を元に小説も書けそうですね。絵も上手に描けるなら、イメージはしやすいので描きたいところですが、そちらは私には難しい、ですな。
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