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私をくるむもの 新たに産まれる
「私」は今、どこにいるのだろう。
ふと気がつけば何も見えず、何も聞こえない。何も、感じない。
意識だけが冴えわたりこうして思考している。不思議な、感覚。
考えている、そのことだけが「私」を実感させ、つなぎとめていた。肉体のように……おや、肉体? 「私」には今、肉体はないのだろうか? そうしたなら「私」の、いや、心とは、どこにあるものなのだろう。
あれやこれやと考えているうちに、考えるまでもない真実が傍にあるのに気がついた。「私」という心とは、それ自体が存在であり、証明なのだ。それがたまたま血と骨と肉とにくるまれて、感情と感覚を持って生活し、命を吹きこんでいるのだろう。それは奇跡に違いない。
「私」はその答えに満足すると、何か温かいものに満たされていることに気がついた。すると暗闇が見え、とくとく、と二つの鼓動を耳にした。「私」をくるむ、それが何かもわからないまま、意識が薄らいでいき、私は、眠りについた。
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