いつか、そのときまでは
最近さ、思うんだけれど……
突然、木陰のベンチに腰掛けたと思ったら、彼女はそんなことを話し始めた。
いつもながらに唐突だな、と感じながらも、それを聞くのが私の役割だった。
彼女の話しは突拍子のないものもあれば、どことなくはっとさせられるようなこともある。特色として、どんなものであろうとも、聞かせるような話しぶりであることには変わらず、思わず聞き入っては体力が奪われてしまうような。
多くの人はそれで、彼女から離れてしまった。そんなこと、気に留めることもなく、悠々とした雰囲気で生きているのだから、それもすごいと感じる。
私は、最後に残ったひとり、なのかもしれないーー
いや、それが、彼女の話しを聞くことが、きっと私の役割なんだ、とーーそんなことを思ってから、ますます離れることは考えられなかった。
友だちたちからは心配されるし、いい加減離れたほうが、なんてことを言われたこともあるけれど、そんなつもりは毛頭なかった。
最近さ、思うんだけれど……
私も、最近、思うことがある。
人とのつながりなんて、一期一会の奇跡なら、私が願う間もなく、願ってもいないのに、突然そのときは来るものだ。
彼女はひとしきり話しを終えると、私からの答えを待つまでもなく すっと 立ち上がると、再び歩き出した。
私はその後ろを黙ってついていく。
彼女の未来の中に、私の姿なんて、きっとない。
今、目の前に見えている道にさえ、私の姿はないのだから。
私はーー黙って、ついていく。
それでも、いい。いつか、そのときがくるまでは。
私はそんな彼女の背中を、見届けたい。
それが、私の、役割、なんだから。
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いつも、ありがとうございます。
何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。