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【ネタバレ含】うれしい悲鳴を要約してみた。

なーせです。

8/26に千穐楽を迎えたアマヤドリの公演、うれしい悲鳴のあらまし、ストーリーを解説します。

この作品は「組織の中で揺れ動く理屈と感情の矛盾を描いている作品」です。

正しいこととは何なのか?組織と自身の存在意義に葛藤しながら何を決断するのか?移り変わる場面の中で人の感情が大きく揺れ動く盤面を感じることができます。

正直、舞台は見る人によって感じ方が全く異なるものです。どのキャラクターに焦点を当てるかで感想が変わるのは間違いありません。

実際に見たことがある方がいれば「私はこう思う」みたいな感想やあらましの捉え方を教えてくれるとうれしいです。

それでは参ります。

ここからは小説調の語り口になりますw

あと文字数が8000字超えてる&稚拙な文面なので読み疲れるかもです(汗)。


なお、ネタバレを見る前に話を知らないから一回見たい!という方は9/10までKANGEKI XR アプリでご覧いただけます。

※台本上の章分けではなく、なーせ独自の章分け、内容の解説をしています。また本内容は非公式のファンコンテンツです。劇団アマヤドリの認可/許諾は得ていません。予めご容赦ください。

※台本および舞台上の台詞と異なる場面が多数存在します。また内容を省略している個所もあります。

※本当は場面ごとに映像があった方が伝わると思いますが、劇団アマヤドリさまの著作物、肖像物となりますので実際の舞台の様子はアマヤドリ公式Xをご覧ください。YouTubeにプロモーションもあります。


序章 泳ぐ魚


泳ぐ魚と呼ばれる、世の中の決定事項を遂行し、時には人道に背いたことでも一貫して任務を遂行する組織が存在する日本。

泳ぐ魚は国からの指令を受け、時には強行手段を持って国の決定事項を遂行してきた。冷徹にことを進める、血も涙もない組織。それが泳ぐ魚。

泳ぐ魚に所属するマキノ久太郎と国の決定で自宅の退去を迫った斉木家の人々、その中の娘である斉木ミミが話の中心となる。

冒頭は斉木ミミの友人であった亜梨沙が知人の高山に電話をするところから始まる。

友人(斉木ミミ)の母親が泳ぐ魚によって殺されてしまう。その結果母親だけではなく、友人も命を落としてしまうかもしれない。何かいい手はないか?と。

電話を受けた高山は恋人のモモに話をしながら、何かできないかを模索する。

場面が切り替わり欠席結婚式なる舞台。

ここでは欠席結婚式が催され、マキノと斉木ミミの2人の姿が現れる。この場面は空想の舞台となる。

新郎であるマキノ久太郎は痛覚を持たず、あらゆる痛みを感じないという泳ぐ魚のメンバーの男性。対して新婦の斉木ミミ「なんでも過敏症」というあらゆる物質に過剰な発作を起こしてしまう謎の病に侵された女性。どのように2人が出会うのか?空想の舞台から現実の舞台に切り替わる。

泳ぐ魚のメンバーの黒川がミミの弟、斉木栄太郎と相棒の新美の2人に拘束されて私刑を与えられている。

手元の端末(スマートフォン)を通して黒川の身体にドリルで穴を開ける場所が指示される(ネット民の指示と思われる)。

指示に従い新美は手に取った電動ドリルで黒川の身体をドリルで穴を開ける。その様子を栄太郎は楽しそうにビデオに収めている。

悲痛な顔を浮かべながら黒川はその仕打ちに耐える。黒川と栄太郎、この2人に何があったのか?

そしてここから黒川の所属する泳ぐ魚の過去の回想へと場面が切り替わる。


第2章 マキノと斉木ミミ ~出会い~


ここで栄太郎が黒川に私刑をするところより過去にさかのぼる。

泳ぐ魚の詰め所では仲間内で談笑をしていた。泳ぐ魚のメンバーはマキノとミミとの出会いと交際の話に華を咲かせていたる。マキノとミミは斉木家の「強制お引越し」の執行の際に出会っている。


斉木家はミミと弟の栄太郎、そして父と母の4人家族であり、当時のミミは「なんでも過敏症」に侵されており、外界と隔離し、空気清浄機を使って衛生面を管理しながら生活をしていた。

そんな中、国の決定により「強制お引越し」が決定し、「なんでも過敏症」の対策を国がとってくれるのか疑問が残るまま、泳ぐ魚による強制執行の日を迎えた。

ミミを除く斉木家の3人が断固として引っ越しを拒否するが泳ぐ魚も決定事項に例外はないとして、他の泳ぐ魚のメンバーと揉みあいになりながらも、マキノたちが上の階にいたミミを誘導する。

下の階に久しぶりに降りたミミは体調を崩してしまう。

心配するマキノはミミの身体を支える。その瞬間、ミミはマキノの手を触れて一言発する。

「変な手…」「死んでいるみたい」

マキノはミミに触れられた右手を気まずそうに素早く引っ込めた。痛覚のない自分に土足で踏み込むような感覚が拒絶にも似た反応をさせたのかもしれない。

ところがマキノが右手を引っ込めた直後、ミミが急に疼きだす。

苦しそうにしている。

ミミの両親はなんでも過敏症の発作と泳ぐ魚の面々に声を荒げて訴えるが、ミミが話を遮るように疼きながらこう続ける。

「気持ちいい」

ミミの中で初めてのエクスタシーを感じた瞬間であった。


場面が移り変わり、マキノがミミを触れたことをきっかけになのか、原因は定かではないがなんでも過敏症だったミミの症状が好転していった。

マキノ自身もミミに対する何かを感じ取り、好意を抱いた。マキノは突発的すぎるほどの恋しい思いを斉木家の人々がいる場面でも躊躇なく発する。

泳ぐ魚という、自分たちの家を失わせた存在に恨みを感じながらも、ミミの持病を寛解させた立役者であるマキノに恩義を感じていた。

マキノの個人は認めつつも、泳ぐ魚という存在は受け入れがたいとする斉木家。マキノは泳ぐ魚の一訓練の場面を話をする。

泳ぐ魚のメンバー各々にペット型ロボット(ペットピョンという名前)が支給され、身の回りの世話をしてくれるなどペットピョンに愛着を持つようになったところでペットピョンを解体するという訓練が実施された。

訓練自体は遂行され、血も涙もない訓練をそつなくこなす。泳ぐ魚の面々の冷徹さと任務に対する愚直さを表す一幕であり、ミミはそのことを受け入れるものの、斉木家の両親はあまりいい顔はしていなかった。

反発する思いはあるものの、暗黙の下で交際を認めていた斉木家の父と母。マキノとミミは徐々にその関係を深めていくのであった。


そして場面は切り替わり、薄暗い照明がほのかに照射する部屋の中、黒川は失神していた。

「ほれほれ!目ぇ覚ませコラァ!!」

暗い部屋、新見が拘束された黒川に対して声を荒げる。そんな新見や栄太郎の動きに合わせることに嫌気を感じていた黒川は面倒そうな態度で二人を鋭くにらみつける。

泳ぐ魚の中核メンバーである黒川は斉木ミミの弟、栄太郎の私刑を受け続けていた。栄太郎は泳ぐ魚が行ってきた非道な行為に対する憎しみを黒川に浴びせ続けていた。

そして姉のミミへの仕打ちに対する強い恨みをもって、マキノを探していた栄太郎は黒川に居場所を問いただしていた。

今黒川に行っている私刑をマキノにも執行したい。自身が受けた深い痛みを身をもって味合わせたい。憎悪をむき出しにしながらビデオカメラを手に撮影を続ける。

黒川は栄太郎に問いかける。

「マキノに会ったらこんな感じでぶちのめしたい!ってことなんですかね?」

「あったりまえだろ!!」

怒号にも似た荒げた声を栄太郎は発する。その答えに嘲笑する黒川。

マキノは痛覚を感じない。そして栄太郎のやっている復讐に意味がない。マキノもミミも居ない中、自己満足以外の何物でもないと切り捨てる。

栄太郎は黒川の態度に怒りが頂点に達し、厭忌の感情を新見に指示を出すことで押し殺していた。

再び電動ドリルで黒川の身体に新見が穴を開けていった。

少しずつ。苦しみをじわじわと感じさせるように。


第3章 矛盾


再び過去の回想に戻る。

マキノとミミが交際が順調に進んでいる最中で、泳ぐ魚のメンバーたちが詰め所で談笑を続ける。

マキノとミミは最終的には結婚まで行く―。

泳ぐ魚のメンバーは二人の付き合い方に対して多少の違和感を持ちながらも受け入れているようだった。

泳ぐ魚の部隊長である大杉がマキノに話を持ち掛ける。

「どうなんだ?マキノ自身の気持ちは?」

マキノは大杉の言葉に対して影のある表情で答えた。

「僕は全然いいんですけど、彼女のお母さまがちょっと病気で倒れちゃって―。かなり悪いみたいでそういう雰囲気じゃないんですよね」

ミミの母親は現在意識不明の状態にある。マキノはミミの心中を察してブレーキをかけた状況で交際を続けているのだった。


マキノとミミの話の途中、大杉の上官である森近が泳ぐ魚の詰め所に訪問する。森近が場に入ると詰め所の空気が引き締まる。

辞令があると宣言する。

「全国の遷延性意識障害者の臓器を手に入れよ」

遷延性意識障害とはいわゆる「植物状態」にある人を指す。意識はないが生きている。植物状態にある人の臓器をあらゆる手段をもって入手せよ、ということになる。

つまり生きている人を暗に命を奪い取る行為になる。

今まで人道に反した行為であっても、絶対であるという信念をもって任務を遂行してきた泳ぐ魚であったが、メンバーの一人、黒川が森近に意見を投げかける。

「今回の命令、陛下も含まれてしまうんではないですか?」

森近は胸を張って強い視線を向けながら黒川の言葉を一蹴した。

「問題ない、陛下は対象外だ」

「いや、どうしてですか?陛下が病状に伏し、植物状態にあるという風に聞いています。もし本辞令を遂行することは例外事項になります。例外事項を認めるということでしょうか?」

「黒川君、君は陛下のご病気を自身の目で見たのかな?憶測でモノを語ってはいけない。陛下は現在も闘病を続けておられる。植物状態であるというのも憶測にすぎない。つまり辞令の例外事項ではなく対象外だよ?事例は絶対であり、例外はない。そして陛下は本辞令の対象外だ」

森近の反論に納得ができない黒川は身を乗り出しそうになるが、上官の大杉に引き留められる。わだかまりを残した状況の中、森近はその場を立ち去って行った。

「泳ぐ魚に例外はない。原則に従って任務を遂行する」

黒川の中に泳ぐ魚という組織の矛盾の感情を抱いていた。


時を同じくして高山モモが斉木家に迫っている危機について考えをまとめていた。

亜梨沙の友人、そして友人の母が命を落としてしまう。

泳ぐ魚の辞令をひっくり返す―。そんなことは不可能。

高山とモモは過去の辞令を思い返す。過去を思い返しても効果的に辞令をひっくり返す手段は湧き出ることはなかった。そんななか、モモは高山に言葉を投げかける。

「無駄だと思っていても、悪あがきみたいな人助けを、高山くんがちょっとぐらいやってみてもいいと思う、やりたいことは私は応援しているよ」

モモは高山に安堵感を与える笑みを浮かべながら電話を手渡す。高山は亜梨沙に電話をかけることにした。

亜梨沙は寝起きの様子で電話に出た。お互いをねぎらいながら人伝をたどりながらいろいろ模索したが、効果がないことを結論付けていた。そんな中、高山はある点に着目する。

「今回の辞令によって、親友の母親はいわゆる植物状態で、臓器をとられるから死んでしまうということである。だが、陛下も時を同じくして植物状態だと聞いている。陛下も対象だとすれば今まで例外を認めなかった辞令がそんなことが簡単にできないのではないか?」

高山の中で確信にも似た希望の光が差し始めていた。


第4章 分断


―辞令が出た泳ぐ魚の詰め所内。

黒川はメンバーに問いかけた。

今回の辞令、―全国の遷延性意識障害者の臓器を手に入れよ―は辞令として陛下も含まれる。陛下が例外であるとすれば、今まで例外を認めず任務を遂行してきた泳ぐ魚の組織としての在り方に矛盾が生じてしまっている。

泳ぐ魚の行動原理は「辞令は絶対。例外はなし」。

陛下という例外を認め、都合よく特例を認める忖度に納得ができない黒川。

黒川の意見に対して、宮下を除く他のメンバーは相手が悪いと辞令を飲み込んでおり、気持ちでは理解を示すものの、反旗を翻すまでの思いを発信するものはいなかった。

黒川はマキノにもどうなのかと意見を求める。

マキノは感情的にはやりたくない、という意見だった。

マキノは今まで愚直に泳ぐ魚に降りてきた如何なる辞令も受け入れ、実行してきた。仕事として、痛覚を持たない自身を投影されているかの如く、他人の悲痛な叫びを切り捨てて任務を遂行してきた。

今回の任務はミミの母が今まさに植物状態にあり、実行すれば最愛の女性(ひと)はいたたまれない状況になることは容易に想像できる。仕事ではあるが、やりたくない。マキノの本音だった。

他の人間が嫌がる汚れた仕事も涼しい顔で遂行してきたマキノ。飄々とした態度をとりながらも内心悩んでいた。

しかし、異を唱えた黒川、黒川に同調した宮下、そして個人的な思いで辞令を良しとしないマキノ以外の泳ぐ魚のメンバーで意見がまとまることはなかった。

今までと似たような辞令であっても、違和感の中で組織としての歯車が狂い始めていくのだった。

後日、今回の辞令について、マキノとミミ、斉木家の父、栄太郎が一堂に会して話がなされた。

辞令は絶対。マキノの答えは変わらない。

父は意地の張り合いと話をするが、絶対の決まりとして意見を曲げないマキノの姿勢に徐々に父と栄太郎は苛立ちを見せ始めた。泳ぐ魚のマキノとしての立場はどうでもいい。斉木家をこれ以上搔き乱すことに怒りが頂点に達していた。

そんなマキノの態度に父と栄太郎はあきらめるかのようにその場を去った。

ミミは力強い視線を送りながら、自身の決意をマキノに伝える。

「お母さんと約束したの、ずっと一緒にいるって。私にとってそれが全てだから」

ミミの中で自身の母がいない世界は何もないも同然だった。今回の泳ぐ魚が執り行う辞令で遷延性意識障害だから―生きているか死んでいるかわからないから―強制的に臓器を奪い取るというなれば、二度と母に会えない。

今は意識があるかわからないが、何かのきっかけで目覚めるかもしれない。泳ぐ魚は目覚める瞬間を待つことなく、母の臓器を奪い取りに来る。自身の母を奪うなら私の命を差し出そう―

ミミの決意は固かった。

マキノの中で曲げられない信念とミミの決意の間で、残酷にも遷延性意識障害者の臓器を手に入れる任務の時が少しずつ始まりを告げるのであった。


第5章 母との約束


ミミが12歳だったころ。まだ「なんでも過敏症」で学校にも通えず、自身の部屋から出れなかった時のことだ。

小学校の卒業式を迎えた亜梨沙がミミに卒業式の報告をしに来た。

ミミは自身の体質を呪っていた。亜梨沙は笑顔で嫌な顔をせず私にいろいろ話してくれる。とてもうれしい。でも―。

ミミは亜梨沙に言った。複雑でどす黒い、陰湿なわだかまりを抱えた、自身の生い立ちを呪いを吐き出すように。

「アリちゃん、毎日いろいろあって面白い話もあって友達もいっぱいいるけど私は面白くないから。私みたいに本とか読まないでしょ?リアルで充実しているんだから必要ないよね」

困惑する亜梨沙。ミミは続ける。

「アリちゃん。中学に行ったら時間が取れなくなるし、制服とか着てカワイイ感じになるだろうけど、私はパジャマだし。話も合わなくなるよ。もう帰った方がいいし、もう来なくていいよ」

亜梨沙は悲しそうな顔を見せた。ミミは悲しみを押し殺すかのように気丈にふるまう。

「ミミちゃん、ほんとに来ないよ?いいの?」

亜梨沙の一言にミミは口火を切った。

「いいよ。ごめんね、こんな言い方しかできない―。私って性格悪いね。それがお互いのためだと思うよ」

そんな人を傷つける言葉の掛け合いを横で聞いていた母がミミの言葉を遮る。しかしミミは不躾な態度を亜梨沙にとり続けていた。

亜梨沙の表情は悲しみであふれていた。そんな亜梨沙をミミの母は取り繕うが、ミミは嘘だと言い放つ。そして亜梨沙が来ることで毎回掃除をすることになり大変だと言い放つ。

ミミは亜梨沙を突き放した。ミミなりの、亜梨沙に対する今までのやさしさに対する感謝であり、自分と一緒にいることが足枷になると思っての言葉だった。

ミミ自身苦しかった。言葉を発しながらも、気丈にふるまっていたが、目の奥では悲しみがにじみ出ていた。

亜梨沙が部屋を出ていき、母はミミを𠮟りつける。だが、ミミは母に言い放った。

「いじめられてたけど、アリちゃんをはじめ、今いるクラスのみんなはすごくよかった。いろんな人がうちに遊びに来てくれていたけど、今はアリちゃんだけ。私は怖いんだよ。また無視されちゃうのが―」

「私ってなんでこんなに弱いわけ?知らないどっかの工場の煙とか、いろんな人に迷惑をかけて生きていく自分の存在が憎い。普通に学校行って、普通に食事をして。身体が弱いから、私はみんなに嫌われちゃってるんだから―」

「大げさな身体でごめんなさい。私だけ身体が弱くてごめんなさい。いい子にしてるから、私を許してください」

涙でぐしゃぐしゃになった顔をこすりながら、ミミは母に言葉を吐き出していた。自分の中に溜まった感情が氾濫した川が決壊するかのようにあふれ出していた。

母は話を聞きながら、ミミに強いまなざしを向けてこう話した。

「丈夫に産んであげたかったね。ずっと一緒にいてあげるから。何があってもずっと一緒にいてあげる」

母はミミに微笑みながらうなずいていた。

「お母さん!私もだよ!お母さんに何があっても、どんなことがあっても絶対、あたしが一緒にいてあげる!!」

ミミは母に宣言していた。

そんな過去の思い出をマキノに語ったミミは続けてこう伝えた。

「約束したから。お母さんが死ぬなら、私もいっしょに死にます!どっちかが生き残らせてくれるなら、マキノ君、私を殺しなさい!!」

―時が流れ、泳ぐ魚の辞令は実行された。


「私たちのテキはなんだろう?」


人伝にミミの死を聞いた亜梨沙は最後に話したミミの言葉を思い出した。


終章 終わりの始まり


遷延性意識障害者の臓器を入手せよ―。高山は今回の泳ぐ魚の辞令は実行されないと思われていたが、現実には実行された。

結果的には斉木家の人々がチリヂリになり、母とミミは命を落とす結果となった。そしてマキノはミミに手をかけたことが原因か定かではないが、ミミが罹っていた「なんでも過敏症」になってしまい、泳ぐ魚での仕事ができない身体となっていた。

また、辞令実行後に政変が起き、各地でクーデターが発生する。各地で暴動が起き、政局が変わったことで泳ぐ魚は完全に権力を失った。

政変が起こる少し前、辞令が実行されるほんの少し前まで、事が進まなかったらば―。

タイミングが悪い、不幸な出来事だった。

ミミは見えないテキと戦っていた。

正体はわからない。

自身の弱い身体、弱い身体を忌み嫌う人間、ペンキに使われている成分、汚れた空気―。そして泳ぐ魚や国の政局を握る存在。

マキノによって自身の身体が救われたものの、泳ぐ魚と国の政局を握る存在によって、決して一部の人間の中でしか語られない、斉木ミミという一人の女性の終幕を迎えるに至った。


「ミミは幸せだったのか?」

亜梨沙はふと空を見上げる。死という事実によってミミの思いを慮ることはできなくなった。生きている自分が吹けば飛んでいってしまうような、そんなちっぽけな存在だったんだと気づかされていた。


マキノは「なんでも過敏症」に感染し、痛みを知らずに生きてきた自身が今まで体感したことがない痛みで苦しむことになった。今彼はどこにいるのかわからない。

そして姉のミミを殺したマキノを探す栄太郎は同僚の黒川に接触し、私刑を実行するが、マキノを見つけるという自身の願いがかなうことはなかった。

お互いの願い―。思い―。珍しく雪が降りしきる街中で、見えないテキを探し、求めているのであった。


―THE END


終わりに 個人的感想


かなり着色を加えてしまいましたがいかがでしたでしょうか?

最後に個人的な感想ですが、目に見えない存在と対峙し、戦うということの難しさ、自分ではコントロールできない事象について贖うことの無力を痛感する作品です。

「なんでも過敏症」という架空(?)の病状は誰かが防いだり、予防することはできません。また国など自分が決めたことではない決まりに従わなければならない無力感に苛まれることが生きていれば多々あります。

ただ、他人が決めたことや自分でコントロールできないことに文句を言っても何も変わることはありません。

やれることは自分でコントロールできることをコントロールし、賢く生きること。

立ち止まってはいけない。本作の高山のように考えて動くこと、―結果的には無意味に終わったわけですが―、も時には必要です。生きていれば辛いことはいくらでもあります。

最近で言えば物価上昇でいろいろなものが値上がりしています。そのことに不満を感じることはあります。私も感じています。

ただ、文句を言って、不満をぶちまけて何か変わるでしょうか?

おそらくは変わらないです。

やれることはお金の使い方を見直すこと。物価上昇に備えて貯金や投資にチャレンジすること。いろいろやることはあるかもしれません。

見えない敵に不平不満を言っても変わるのはほぼ不可能なら、いい方向に変わる可能性のあることに全力を注ぐべきではないでしょうか?

うれしい悲鳴を見てそんなことを思った次第です。


なんか変な話になってしまいましたが、話を要約していて感情的に昂ったり、涙が流れそうになったりと情緒不安定になりながら記事にしました。

そんなまとまりのない感じですが、実際に見に行った方がいましたら、ぜひ感想や違う考えがあるというお話があれば教えてください。

稚拙な文章での要約となりますが、楽しんでいただければ幸いです。

そしてこの作品の要約を見て、演劇に触れるきっかけになればいいのかなと思います。

そんなわけで今日はこの辺で。

補足

※9/10まで配信プラットフォームで鑑賞いただけます。ご興味のある方は是非ご覧ください。

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