中3長男が、今月で「受験生」を辞めることになった。
10月に入り、中3の長男が、塾を辞めることになった。
小5から入った学習塾。別にハッキリとした目的があって入ったわけではなかった。たしか「高校の進路を考えるときに、選択肢が狭まらないように」ぐらいの感じで、仲の良い友達も入るからと、通わせることにしたのだったと思う。
彼としては「行くことになっているから、その時間になったら行く」ってだけの感覚だったと思う。彼はずっと、勉強に没頭するような姿勢を見せることなく、ここまできた。テスト前でもいつもと変わらず過ごしていたし、家庭学習は、塾から出された課題を塾の前に慌ててやるだけで、それ以外はほとんど見せることはなかった。たまに「勉強しなくていいの?」なんて問いかけるけど、「うん」と返すだけだった。
私たち親は、彼が学校に通って、仲間に囲まれる中で、勉強って「当たり前にするようになる」と思い込んでいた。でも、彼はそうではなかった。努力して点数を取ろうとする姿勢は一切見せなかった。授業ではそれなりに聞いているのだろう。おそらくテストの点数は真ん中より少し後ろぐらいで、周りから心配されるほどではなかった。
親としてはなんとなく、みんなが真剣に受験を考えるようになったら、釣られて、熱を帯びるのだと思っていた。
でも、彼は一切、釣られることはなかった。
釣られるどころか、その周りの空気、塾講師の熱に戸惑い、いつまでも自然体の自分を講師が異物を見るように感じたようだった。
9月の下旬、「塾には行かない」と言った。
私たち親は「じゃあ、自分で休む電話をしなさい」と言うと、彼は電話口で「はい。はい。そうです。いえ、辞めます」と話した。
「休む電話」のつもりが、「辞める電話」をしている息子をみて戸惑い、私たち親は、「努力もしないで逃げるな」みたいに言って、行かせようとした。「受験生なんだよ」とか「こんな時期に何を言ってるんだ」なんて言った。「とりあえず行け」みたいに言った。「今までどれほどのお金がかかったと思ってるの」なんていうのも言ったと思う。
息子がトゲトゲしたまま数日を過ごした。
それでも、トゲトゲしているのは、塾の話題をしたときだけで、塾の話をしなければ、やさしい、いい子だった。
電話で話していたときの彼の声が脳内を流れながら、
「当たり前ってなんだろう」
「そんな無理して行かせて何になるだろう」
ってのが浮かんだ。
私たち親は、彼の想いを聞くことにした。
「塾で詰め込まれていることに意味を感じないこと」「塾の先生が、頭ごなしに"そんなことでは受験生失格"と言ったことに憤慨したと同時に"そうだよな"って感じたこと」など。
「高校でも野球をしたい」と言うので、野球部の体験会に積極的に参加して、行きたい高校を決めようって話していた矢先のことだったから、三人で話し合って、ひとまずは「それに専念しよう」と決めたのだった。厳密に言えば「受験生を辞める」とは言わないが、単願や推薦と言う道を選べば受験勉強は要らなくて済む。その道を模索することで、ひとまずその場は落ち着いた。
塾には行かなくなった。
塾の退会手続きを始めた。
三年生になり部活は引退になっているので、学校から帰ると夕方からずっと家にいる。土日もずっと家にいる。
ゲームをしているか、スマホを触っていることになった。
これで良かったのだろうか。
ずっと私は思い悩んでいた。
どうしたら良かったのだろうか。
勉強は、いつまで経っても必要だと思っている。学ぶことは、我慢ではない。学ぶことは楽しみでもあり、喜びにもつながる。彼に学ぶことを教えてあげたい。シンプルにそう思った。
寄り添うことにした。
私は、テストのためでなく、受験のためでもなく、彼がこれから生きていくために必要な知識を身に付けてほしくて、勉強を嫌いになってほしくなくて、ある作戦を考えた。学ぶことを苦にならないように、それを習慣にできるように。
私は彼に話した。「うそみたいに簡単な問題集を、毎日10ページ。もしわからなかったら、スマホで調べてもOK。一日の勉強はそれだけ。どう?」
「生きていくために必要な勉強ってこと?いいねぇ。ありがとう!お父ちゃん」
彼は、そう答えた。
昨日、私は書店に行き、これを買ってきた。
『6年生』『文章の読解』
あと、これ。
小学生の『できる!!がふえるドリル』
これを合計10ページ、毎日やる約束をした。
昨日は初日。
隣で見ていた。
サクサクできる。
ちなみに、「始め」と「終わり」を書くことになっているのだが、2ページが3分で終わった。
「文章読解」の6ページは9分で終えた。
「歴史」の方は4ページを8分で終えた。
答え合わせを入れても合計30分もかからずに終えた。
一日の家庭学習は、これだけで良いことにした。
「習慣になること」と「成功体験を積み直すこと」そして、あわよくば、ここから何か夢中になる分野が出てくるといいなと思っている。
思っているけど、ひとまずは、ひとまずは、親の思惑は忘れるようにして、ただただこの毎日を楽しんでいきたいと思う。
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