にわかに信じ難い話をする人たち(相棒Season20-9 感想)
はじめに
このセリフ出て来た瞬間奥歯が痛んだのは多分気のせいという事にしておきます。
相棒Season20-9「生まれ変わった男」の感想になります。
今回のテーマは「生まれ変わり」「子供のための嘘」。そして前回とは打って変わって、爽やかな結末を迎える事件でした。
何故前回を引き合いに出したかと言うと、どことなく先週と要素が似通っており、その上で真反対の結果を迎えたからです。こちら先週分。
・オカルト(幽霊・生まれ変わり)
・望まぬ妊娠(活動家の暴行・DV)
・生まれた子供にまつわる苦悩(前科持ち・無戸籍児)
などなど。
ちなみに前シーズンでも「似たような構図の事件で、真反対の後味になった」というパターンがありました。Season19-4「藪の外」とSeason19-6「三文芝居」。
今回の事件の鍵となるのは「20年前に殺された男・関田昌平の記憶」を持つという、にわかに信じがたいことを言う青年・吉岡翼。Season7-13「超能力少年」のように、思いもよらぬ真相があるのか、はたまた本当に生まれ変わりだったのか。
結論から言うと、彼は被害者の生まれ変わりなどではありませんでした。しかし事件があった日、彼はまだ生まれている筈がない……ここには、思いもよらぬ事情が。
そもそも吉岡翼は、事件があった日には既に歩けるくらいには育っていた無戸籍児でした。彼の母は前夫からDVを受け、子供も身籠っていた。離婚・再婚をしたが、法律上生まれて来る子供は前DV夫との子ということになる……その事を苦痛に感じ、無戸籍児・吉岡太陽として育てることに。
そんな中で新たに第二子・吉岡翼を出産するも、その子はほどなくして亡くなってしまい……夫婦はその戸籍を、無戸籍児だった太陽のものとして割り当てることに。つまり吉岡翼もとい吉岡太陽は、実際の戸籍より3歳年上の人間だったのです。彼は陸上競技で好成績を収めて注目を集めていましたが、そりゃあそうです。年齢がずれていたのですから。
では。青年が幼少期に目撃した事件の真相は一体何だったのかと言えば。
現場となったスーパーで迷子になっていた吉岡太陽が、たまたま中学生・八神と遭遇。中学生と、彼の持ち物で遊んでいたりするうちに、被害者となる一般人・関田昌平が通過。間が悪い事に、中学生は護身用ナイフを見せているところでした。その光景を暴行事件と勘違いした関田は、八神が事情を話そうとするも警察への通報を開始。動転した八神が、関田を刺し殺した……というもの。
恐ろしく短絡的。
護身用とはいえ子供の前でナイフを見せている八神もどうかと思いますが、関田も関田で話を聞かない。勿論、八神が凶悪犯だった場合は対処しなければならないので、関田が間違っているとまでは言えません。
目の前に「子供の前でナイフを出している少年」が居て、少年が「違うんです」と言っても、そう簡単には信用出来ませんから。
さて。「生まれ変わり」という話を信じられないけれど信じたい関田の妻に刺されるといった事件も起きましたが、両親と話し合った吉岡翼は、戸籍変更を経て吉岡太陽として本当に生まれ変わる事に。色々と壁はあるけれど、前向きに未来を進んで行く……今回はそんな、爽やかな終わり方をしました。
今回の事件、かなり好きな部類に入りました。
「生まれ変わり」などという仕掛けが読めない題材から「DVと無戸籍児」という社会問題に絡めた真相には、思わず脱帽。思い詰めるあまり吉岡太陽を刺してしまった関田園子とも、いずれ話をして和解に向かってもらいたいところです。
最後に。
事件があった11月3日って祝日ですけど、中学生八神君はなんで制服だったんですかね……?
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