暴くべきだったのか、そっとしておくべきだったのか(相棒Season21-3 感想)
はじめに
Season21-3「逃亡者 亀山薫」の感想になります。
今回のテーマは「恩人の死」「逃亡しながらの捜査」。帰国早々、亀山君が殺人事件の容疑者となって追われる話となります。
この人先週までサルウィンの国賓だったんだぜ……。
都内で起きた殺人事件、その現場に居合わせた亀山薫。
その手に凶器を持っていたところを目撃され、彼は逃走……といったところから物語は始まります。この展開に謎の既視感。
亀山君のここ最近の動向を調べる右京さん。
どうやら彼は、運転免許試験場時代にお世話になった塩見という人物の転落事故死の真相を調べていた模様。日本に帰国した事を伝えようとしたらその恩師は4年前に死んでいて……といった具合です。
運転免許試験場時代、いつだっけと調べ直したらSeason2冒頭でした。めっちゃ前やん。
塩見が亡くなった当時、彼が勤務する池袋中央署では、押収した覚醒剤が紛失する事件が発生。塩見がそれを調べようとしていたが、上層部によってそれが隠蔽されたことを突き止めた亀山君は、目撃者だった羽柴という刑事が紛失事件に関わっているのでは、あわよくば羽柴が塩見を口封じに殺したのではないかと考えるように。
亀山君が通った推理を辿っていく右京さん。ちょうどその頃、捜査本部から伊丹刑事が外されます。なんでも「容疑者が亀山であるため、捜査に私情を持ち込んで逃亡の手助けをしているのでは」などという理由。
元々特命係ということで(上層部からは)捜査権が与えられていない右京さんとコンビを組むことに。
伊丹刑事が特命係と組む回にハズレ無しの法則、あると思います。
そして亀山君は、事件の真相一歩手前まで自力でたどり着きました。
羽柴はかつて、娘を難病で亡くしている。当時娘を助けるために大金が必要となり、押収した覚醒剤を盗み、売り捌いたのではないか……。そう考え、羽柴が接触していたクスリの売人・富樫と対面。
富樫を問い詰めるため、バリバリのアクションシーン。かつての亀山薫が戻って来た、と感じさせてくれます。
だが、羽柴を疑っていた亀山君にとって、富樫の口からは思いもよらぬ返答が。
「警察の中に手術費用が欲しいから金を工面して欲しい奴がいる」
ただしそれは、4年前。羽柴の子供が死んだのはそれよりもっと前のこと。
最後のピースがかっちりハマったことで、亀山君は事件の真相……残酷な真実にたどり着いてしまいました。
羽柴が覚醒剤を盗み、売り捌き、それについて調べようとした塩見が殺された……そうではありませんでした。
確かに、売り捌いた……というか、売人を紹介したのは羽柴でした。しかし、覚醒剤を盗んだのは塩見本人であり、彼は事故死ではなく、自責或いはけじめに伴う自殺だったのです。
何故塩見がこんな事をしたのか。その動機は、彼の息子であり、今回亀山君に「塩見の死の真相を解き明かして欲しい」と依頼して来た塩見の息子・塩見優馬の存在にありました。
優馬はかつて重い肺の病気を患っており、その手術のために大金が必要だった。子供に何もしてあげられなかった羽柴と違い、塩見は「クスリの窃盗」という最悪の形で、その金を工面しようとしてしまったのです。
そして現場を目撃していた羽柴は、自殺で処理すると優馬が自殺の理由から真相にたどり着いてしまうかもしれない……そう考え、転落事故という体裁を取ったのでした。
では今回の事件で被害者である売人・須賀を殺害したのは誰だったのか。
それは、夫の犯した犯罪のせいで脅迫されていた塩見の妻・恭子でした。
息子の手術費用は汚いカネ。息子の将来を閉ざしたくなければもっとカネを寄こせ……。この脅迫が原因で須賀は死亡、そこに、須賀に聞き込みをするべくたまたま現場を訪れた亀山君。何とかしなければといっぱいいっぱいだった塩見恭子は、背後から亀山君を殴打。気絶させ、凶器を持たせて彼をスケープゴートにしたのです。
ここでようやく、冒頭から感じていた既視感の正体が分かりました。
相棒版「金田一少年の殺人」だわこれ。
詳細は省きますが、あちらの事件も
・金田一が犯人に仕立て上げられる(手口は今回と全く同じ)
・犯行動機に、子供の臓器移植手術、それに伴う莫大な費用が関ってくる
・犯人側である人間の自殺
といった要素が登場します。
さて。真相は明らかになりましたが……亀山君は苦悩します。
「これは暴いて良い真実だったのか?」
父親の死の真相を突き止めてくれと亀山君に依頼してきた塩見優馬。
でも実際は父親は犯罪に手を染めての自殺、母親もその事がキッカケで殺人犯に。挙句、手術して助かった己の命も、犯罪で生まれた汚いカネによるもの。前世でどんな業を背負ったらこうなるんだよ。
あまりにも辛い真実。ですが、そこは相棒……というか右京さんがいる特命係。どんなに残酷であっても、真実は明らかにしなくてはいけない。
結局、亀山君は塩見優馬に全てを話すことにしました。彼は父に憧れて警察官を目指していましたが、ヘタすりゃその道を閉ざさざるを得なくなってしまうかも知れません。己の身に関する真相を知ったせいで、自ら命を絶ってもおかしくはありません。上手く立ち直ってくれ、としか言えねえ……。
というわけで、今回は相棒で時たまある「残酷な真実」を明るみに出す回でした。
塩見家の悲惨さもそうですが、亀山君にとっても悲惨です。
何せ、己の恩師が自殺していて、その理由が「犯罪に手を染めたこと」によるものだったのですから。
Season21-1:教え子であるアイシャが自殺した
Season21-2:更に教え子のクリスが殺され、ミウが復讐に手を染めた
これを受けての3話でコレですよ。
今回のお話は「10数年ぶりに帰国した亀山君」という、今でないと書けない話ではありました。また、警察官として復帰した相棒・亀山薫という人物の魅力を改めて引き出すのにピッタリの回でもありました。
でもさあ……前回までの流れで今回の話を引っ張って来るの、
あまりにも制作陣に人の心がなさすぎないか?
最後に
これだけアクションやってるけど寺脇さん60歳ってマジ?
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