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ある刑事の恋物語(相棒Season21-8 感想)

はじめに

水谷豊さん他局で何やってんすか。

相棒Season21-8「コイノイタミ」の感想になります。
今回のテーマは「資産運用」と「ダイイングメッセージ」。そして、伊丹刑事が査問委員会沙汰になるような出来事を起こし、特命係が真相を突き止めるお話となります。

開幕早々、大河内監察官から詰め寄られる伊丹。
彼は大久保という投資家が殺害された事件を追っていた中で、逃亡中の被疑者・篠塚悦雄の潜伏先の1つと睨んでいた彼のアパートに、強引に押し入ったのだ。しかも、伊丹は弁当屋を営む篠塚の妻・由香子と良い感じの仲になっていたという事で……。
どうして強引に押し入ったのか問う監察官に対し、何故か完全黙秘を貫く伊丹。芹沢・出雲から暗にお願いされた事もあり、特命係は真相解明へ動くことに。

大久保が殺害された現場には「え」「つ」と読める血のダイイングメッセージ。大久保と関係があったことで、篠塚「悦」雄が最初に疑われていました。
大久保の関係者を追う中で、陶器の「えつ」け(絵付け)を趣味にしている資産家の水城、「えつ」の要素こそ見つからないが同じく資産家で付き合いの長い衣川……次々と怪しい人物が浮上します。

そもそも「えつ」は本当に「えつ」なのか。何か別の言葉を書こうとして、途中で力尽きたのではないか……。等々推理を膨らませる中、右京さんは大久保殺害の現場に残されていた凶器の破片に。亀山君は篠塚悦雄の行方、及び篠塚由香子と伊丹の関係にそれぞれ目をつけることに。

篠塚悦雄はいわゆるDV夫で、裏に暴力団の存在も仄めかされていました。弁当屋の常連でもあった伊丹はどうにか篠塚由香子を救うことが出来ないかと考え、何かあったら相談してくれと語っていた模様。
彼女の子供とも仲良く接しており、人妻であることにさえ目を瞑れば本当にそのうちゴールインしてもおかしくない……そんな雰囲気でした。

既視感。

ただ、何度か由香子に電話は掛かって来ていたものの、篠塚悦雄の行方までは分からない模様。

一方、行きつけの料亭の女将・小手鞠が知っていたこともあり、右京さんは凶器の正体を櫂象仙という人物の作った壺だと断定。(調べたら櫂象仙という人は実在しませんでした。そりゃそうじゃ
フェルメールの壺とまで言われるほどであり、盗難にあってからは行方不明の2つの壺。片方は発見され、12億もの値段で取引された……。
凶器の破片を鑑定してもらい、その結果ダイイングメッセージの意味も判明する事に。

大久保殺害の真相を知りたいか、と詰め寄る亀山君。多分この時「お前こそ何度査問委員会にかけられたと……」って思ってるよ伊丹刑事

さて。
「えつ」とは何だったのか。これは決して「書きかけの文字」などではなく、これ単体で完結しているメッセージなのだという。
鍵になるのは「変体仮名」……いわゆる平安時代の崩し字のようなもの。
元々大久保が資産家たちに提案していた投資の実態は、窃盗組織とパイプのある篠塚悦雄と組んで、表には出せない古美術品を富裕層に売り捌いていた裏ビジネス。古美術に詳しい大久保なら、変体仮名をダイイングメッセージに使用してもおかしくはない。

「え」は「衣」の崩し字。「つ」は「川」の崩し字。
大久保殺害の犯人は、投資仲間である衣川でした。動機は贋作を売りつけられたこと。凶器となった壺は櫂象仙の壺……によく似ていましたが、塗り薬が櫂象仙の手法が違う。これに気づいた衣川によって、大久保は殺害されることとなったのでした。

残された謎がまだ2つ。
篠塚悦雄の行方と、伊丹刑事が黙秘を続ける理由。それらは全て、篠塚由香子が鍵を握っていました。篠塚悦雄は、とっくに由香子の手で殺害されていたのです。しかも、伊丹は彼女に利用されていた
伊丹と由香子が出会っている時に、何度か由香子に掛かって来た夫からの電話。それは、タイマーを利用して掛けた自作自演の電話であり、まだ夫は生きていると伊丹に思わせるためのトリックだったのです。

一方で、伊丹刑事はそのトリックを看破していました。アパートに押し入った理由は、事件発覚前に自首を促す証拠を発見するため。DVという情状酌量の動機も十分だったため、発覚前に自首すれば由香子の罪は軽くなる。全ては、彼女を救いたいがための行動だったのです。

さて。
実は右京さんは、篠塚由香子が消息不明だった篠塚悦雄を殺した可能性に、かなり早い段階から気付いていました。その理由が

というもの。伊丹憲一という男の事を、刑事として信頼しているというのがひしひしと伝わります。
関わってる時間だけで言えば、一時期サルウィンへ渡航していた亀山君よりもずっと長いのですから

というわけで。
伊丹刑事の恋物語は悲恋物語になってしまいました。
「いびつな真珠の女」のように想い人の命が狙われる、「陣川という名の犬」のように想い人が殺害される……それらとは違い、想い人が殺人犯になってしまったケース。
なまじ、刑事であると知らなかったとはいえ、伊丹にもっと早く相談していればこうはならなかった。どんな動機であろうと、手を血で染める必要はなかった。

ただただやり切れなさの残るお話、というほかありません。

最後に

伊丹刑事、こう言ってるけどさ。

むしろこの時の借りを返してもらった側じゃないかな。
伊丹さんらしいっちゃらしいからまあ良いか。

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