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我が子を想う事は悪なのだろうか(相棒Season21-10 感想)

はじめに

字幕で真相バレとるやないかい。

相棒Season21-10「黒いコートの女」の感想になります。
今回のテーマは「母親」と「誘拐」。そして今シーズン暫定、もっとも救いのないお話でした。

宝石窃盗グループの摘発を終えた捜査五課と特命係。角田課長によれば、逮捕したメンバーが1人足りない事が判明。
その場に居合わせず取り逃がしたメンバー・国枝のアパートを訪問すると、黒いコートの女と遭遇。実は彼女は「ダイヤはどこ?」と国枝と揉め事になり、事故とはいえ彼を殺害してしまっていた。
国枝の遺体があがったことで、居なくなった黒いコートの女を追いながら、国枝の周辺関係を洗っていくことに。


捜査中の一幕。
今回の右京さんは捜一にもド辛辣。

やがて判明した真相はとても残酷で。
そして全てが判明した時には、黒いコートの女によって事態は最悪の方向へ動いてしまいました。

特命係が向かったのは八景島シーパラダイス。黒いコートの女がそこにいる筈と踏んでの行動でした。
彼女の罪状は「誘拐」。国枝の保護司(いわゆる「犯罪を犯した人間の更生を担う、保護観察官のような存在」)である安西の娘・美月を攫った彼女。ですがこの誘拐、ただの誘拐などではありませんでした。黒いコートの女こと菅野茉奈美はの目的はただ一つ。娘を取り返したかっただけなのです。

菅野はかつて、赤ん坊だった娘・大愛(だいあ)を誘拐されました。
攫ったのは国枝とその一味。扱いに困った国枝は、彼の保護司である安西に赤ん坊を押し付けたのです。
安西は何故警察に届けなかったのか、それは不倫をしていた事で国枝に脅されていたから。どうしようもなくなった安西は、手続きを踏んで赤ん坊を養子に。「菅野大愛」だった筈の子供が、戸籍上「安西美月」に変わってしまったのです。

冒頭で菅野が叫んでいた「ダイヤはどこ!」も、字幕の通り「ダイア(娘)はどこ!」という意味であり。何年かかってでも我が娘を探す母親の執念により、ついに彼女は娘にたどり着いたのでした。

けれども……彼女が取った方法は、法律が、そして杉下右京が見逃す筈もない犯罪行為。
ようやく見つけた筈の娘は、戸籍上娘ではない。実の娘を取り返しただけだとしても、無言で攫ってしまえば誘拐でしかない。
そして挙句には、娘にすら拒絶されてしまう。菅野の抱いていた「夢」はぽっきりと壊れてしまいました。
仕方ないんです、誘拐されたのは赤ん坊の頃なのだから。
仕方ないんです、娘が本当の母親の事を覚えていなくても。
仕方ないんです、本当の母親を「ママに会わせてくれない意地悪な人」と認識してしまっても。

そして菅野は、警察へと連れて行かれます。
誘拐もそうですし、娘を探す過程で(事故とはいえ)殺人を犯してしまっているのですから。

亀山君の言葉が、全てを物語っています。
誘拐や犯罪は法で裁かれる行為、それは当然の事として。
我が子の事を想い、我が子を取り返したいと願う事は、悪い事なんでしょうか。

それでも。「相棒」というドラマは、時々視聴者に語り掛けます。
杉下右京は、こういう人間なのだと。

それでも、最近は丸くなった方だなあと感じます。
昔の右京さんだったら2枚目までで言葉止まってたような気がします。いつから3枚目のような言葉も出るようになったかハッキリとは分からないけど。

とはいえ……どうなるんでしょうね今後。
情状酌量が効いたとしても、殺人2件・誘拐未遂1件の罪はそこそこ重たくなりそうですし。
安西家も崩壊必至です。父親は不倫していて、誘拐事件で連れて来られた子供を育てていた事が判明。
実の母親を拒絶してしまった事を謝罪するくらい優しい心の持ち主だった大愛/美月も、今後マトモな家庭で生きていけるとは到底思えません。

以前、Season21-4話「最後の晩餐」を「暫定今シーズンでもっとも好きな話」と評価しました。
今回の話は、「今シーズンもっとも面白かった話(ただしとても辛い)」であると、私の脳内で堂々ランクインしました。

年内の相棒は今回が最後。
次回は正月SP。どうやら去年の正月SPで捕まったと思われていた筈の袴田代議士が再登場するようです。

最後に

八景島シーパラダイス公式が反応してて笑っちゃった。

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