身元保証会社の問題点について概観できる論文をオススメ
みなさまGoogle Scholarというサービスを知っているだろうか。
グーグルのサービスでさまざまな文献、論文が検索できる。
暇で読み物がないときにサクッと気になる言葉を検索してiPadとかで読むと良い暇つぶしになる。
今回はそんなGoogle Scholarで見つけた楽しい論文を紹介。
これを読むと身元保証会社の問題についての概観がわかる。
身元保証等高齢者サポート事業の登録制度実現のための一考察
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/record/2001294/files/sk_11_yanagi(2).pdf
●前段、身元保証人会社について
入院するとき、
契約をするとき、
配食弁当を頼むとき、
公民館を利用するとき、さまざまなときに身元保証人や緊急連絡先が必要になる。
体感として、配食弁当や公民館は緊急連絡先がないと利用できない/利用が制限されるところが明確に増えてきた。
そんな昨今、期待されるのが身元保証会社である。
が、しかし、私は今までに身元保証会社についてろくな話を聞いたことがない。全財産を”寄付”させられてしまうなど、悪い噂には事欠かない。
身元保証会社については、ガイドラインはあるが監督する省庁も決まっていない。
そこで、この論文の作者は「担当省庁を決めて登録制度にしよう」と提案している。
●本の概要
この論文の著者、柳 勝司氏は法学者の方のようです。
論文の第一節はとして日本におけるこれまでの身元保証会社の変遷、特に身元保証会社最大手であったNPOライフがH28年に破綻した話が軸になる。
2500名の利用者がいたなかで破綻。契約も第三者を含めない二者間の契約で利用者の資産を管理。資金が老人ホーム運営に流れるどんぶり勘定状態であったといった経過が細かく書かれている。
そして、第二節。今度は身元保証会社が原告となり金融機関を訴えた令和3年の民事訴訟を追って、その身元保証会社の運営状況を概観する内容だ。
ざっくり裁判の内容としては、当該身元保証会社と契約していた人が亡くなったので、死後事務や自社への遺贈をしようとして、死者の預金の払戻を金融機関に求めたところ「そちらの身元保証会社さん、別の人から民事訴訟をおこされててなんか信用ならないんですけど。払戻には応じられません。」と金融機関にいわれてしまったため、身元保証会社が金融機関を相手取り、この決定の正当性を問う裁判を起こしたものである。
●本を読んで改まった私の認識
身元保証会社への認識が改まったのは以下の部分だ。
①身元保証会社は収益性が低い。
そらそうだろうと思っていたが、そもそも儲かる仕事ではない。
包括に営業に来る会社さんのチラシとかを見ると会費や月額料金はかな り高いのだが、アレでも儲かってはいないのだろう。
著者も、身元保証会社への寄付の必要性について論じている。
「利用者から死後寄付金をもらう契約をしている!」と聞くとあくどく聞こえるが、本人が同意しかつ会社運営のために必要がある遺贈であるケースもありそうである。このへんは無意味な積立がないよう整理が必要であろう。
②ルール作りや登録制への道のりは険しい。
前述の裁判の経過をみると、原告の身元保証会社もかなり怪しげなことをしている。
じゃあ監督官庁を決めて登録性にするにしても、どこの省庁が対応するのか、そして、現在運営している身元保証会社をどうするのか、問題は残る。
怪しげなことをしながらもギリギリちゃんと仕事をしていた零細の身元保証会社が、登録制になった途端、そのルールのもとでは活動できなくなり解散、など結果利用者の不利益になりかねない。
これにつても本著からも引用を入れよう。
●最後に、私見ですが・・・・
東京都足立区では社会福祉協議会が身元保証を事業として展開していると聞く。
採算を目的とせず、一応倒産、解散もないので、身元保証の活動は社会福祉協議会などの公的な機関が実施するのが適当な気がする。
また、行政が音頭をとって、身元引受人がいないご遺体を事前に希望した葬儀屋に遺体を搬送する事業(うっかり病院が別の葬儀屋にお願いしてしまっても、その葬儀屋から希望した葬儀屋に遺体が運ばれる、など)をしている自治体もあった、、気がする、、そんな本を読んだ、、はず。
長生きすれば身元保証人がいなくなるのは自分ではどうしようもない事態である。
繰り返しだが、今や身元保証人・緊急連絡先がいなければ公民館も使えない社会なのだ。介護予防とか言っている場合ではない。
早めの対策が望まれる。