【朗読用フリー台本】いたずら好きの天使
むかしむかし、あるところにいたずら好きの天使がいました。
それはそれは、いたずらが大好きで、同い年くらいの天使の仕事の邪魔をしたり、たくさんの人間を堕落させていました。
ある時は、締め切りが近い漫画家に、「もう寝ていいんですよ。しっかり体を休めることも大切ですよ。大丈夫。明日のあなたがやってくれますよ」とそそのかして、漫画の原稿が締め切りに間に合わないようにしました。
またある時には、選挙に行こうかどうか迷っている青年に「大丈夫ですよ、あなたが一票を入れなくても、しっかりした人たちがちゃんとした政党に一票を入れてくれますよ。あなたは自分が本当にしたいことをしていいんですよ」とそそのかして、その青年といっしょにテレビゲームをしました。
いたずら好きの天使は、いつもそんなことばかりしていたので、神様からも仲間の天使からも呆れられていました。
そんな天使にも一人だけ友だちがいました。
それはなんと同い年のあくまでした。
あくまの友だちですから、ふつうの友だちとは違います。
二人はいっしょに色々なところにイタズラをして、そのイタズラがばれると「あいつが一人でやりました」と相手のせいにしました。
また、神さまからビスケットを2枚もらった時も、2人で1枚ずつ仲良く食べようとはせずに、1人で2枚とも食べようとして、ケンカになりました。
2人はたくさんケンカをしました。
たくさんケンカをしましたが、同じくらいたくさん仲直りをしました。
そんなある日のことです。
あくまが1人で人間たちにイタズラをしていると、なんとそのイタズラが人間たちにバレてしまいました。
あくまは怒った人間たちから、対空ミサイルや、ステルス戦闘機で攻撃されました。
あくまは、あんまりたくさんの攻撃を受けたので、これはもうやばいかもしれん、という状態にまでなりました。
人間の世界であくまが大変なことになっているという話を聞いて、イタズラ好きの天使は、あわてて地上にかけつけました。
天使は人間たちに言います。
「気を付けなさい。人の子らよ。このあくまは変身をするたびに強くなります。その変身を後2回も残しています。私がこのあくまの力を封じている間に、早く逃げるのです」
天使の言葉を聞いて、人間たちは、あわてて逃げていきました。
人間たちがいなくなったのを見て、天使はあくまをせおって、天界へ帰っていきました。
それから、イタズラ好きの天使は、人間たちから救いの天使として感謝されるようになりました。
仲間の天使たちからも「すごいじゃん」と一目おかれるようになりました。
イタズラ好きの天使は自慢をしてやろうと思って、怪我の治ったあくまの家に行きました。
あくまの家へつくと、ドアの前に1枚の紙が貼ってありました。
それはどうやら、あくまから天使への手紙のようでした。
手紙にはこう書かれています。
『天使へ。
なんだか最近、人間に人気らしいじゃないか。
オレ様に感謝しろよ。
お前が人気ものになれたのはオレ様のおかげなんだから、そこを忘れるなよ。
さて、突然だが、オレ様は旅に出ることにした。
せっかく人気ものになったお前が、オレ様みたいなあくまと一緒にいたら、人間から変に思われるからな。
今度からは、他の天使たちと仲良くしろよ。じゃあな』
手紙の言葉はこれで終わっていました。
手紙を読み終えた天使は泣きました。
わんわん泣きました。
天使の涙は、地上で雨となって、日照りに苦しんでいた、たくさんの村を救いました。
おしまい。