上海の風 師弟コンサート開催に寄せて
上海音楽学院、王永徳教授。「王永徳教授教学50周年式典」という催しが上海音楽学院で盛大に執り行われ、鳴尾弦楽団も「王」の旗をひっ担いでお祝いに駆けつけたのが2017年のことなので、さらにそこから7年、実に57年間に渡り中国の二胡界を支え続けておられることになる。
昨年「二胡を手にして30周年」の記念コンサートを開催した鳴尾にしても、習い始めた90年代から現在に至る二胡の変遷を振り返れば隔世の感があるが、さらに倍以上の年月を二胡と共に生きてこられた王永徳先生は、もはや二胡の歴史を動かしてきた宗師、グランドマスターの一人である。日本にも弟子、孫弟子は数多く、系譜を作れば日本王一門はかなりの人数になると思われる。
二胡界の伝説的演奏家、閔惠芬とは同級生で誕生日も1週間ほどしか違わない。育てた高弟は数知れず、カルメン幻想曲を初めて二胡で演奏し、また《蒙風》を初めとする二胡随想曲の作曲者として知られる高韶青(George Gao)、現上海音楽学院教授陳春園、上海民族楽団二胡首席を務めた国家一級演奏家段皚皚といった名演奏家を輩出した。上海音楽学院を代表するこれら綺羅星の如き王永徳一門の次の一群が、今回招聘する張重雪の年代で、私は2008年の上海の春二胡コンクール関連のコンサートに出演の機会があり、上海音楽学院の食堂で王先生と昼食をご一緒させて頂いた時に、コンクールに出場予定の張さんと初めて出会った。
後列には錚々たる審査員の先生方。
コンクールでも輝かしい成績をおさめ、香港中楽団で活躍、その頃に私も何度か香港まで足を運び、時にはリハーサルを見学させてもらったことも(古き良き時代...)。その後、楽団首席に上り詰め、コンサートミストレス、ソリスト、胡琴アンサンブルと縦横無尽に活躍している。
著名指揮者閻惠昌が率いる香港中楽団の目の覚めるように鮮やかでキレのある演奏は、昨年の日本ツアーで目の当たりにした方も多いと思う。張さんは前年に首席を退いていたのでこの時は来日されなかったが、その前哨戦としての六重奏のコンサートで来日している。あの凄まじい演奏をする楽団の首席として長く活躍していたわけだ。現在は、客演として楽団のコンサートに参加する傍ら、香港演藝学院中楽系主任として、後進の育成にも当たっている。
海派というのは、上海出身の演奏家を指す。これに対し、北京系の演奏家を京派というらしい。国内での往来も盛んになった現代ではあまり意味のない言葉かもしれないが、やはり傾向的なものはある気もするし、アイデンティティーを規定する役割を持っているようにも感じられる。江南絲竹の伝統を根底に持つ海派の二胡は、柔らかく潤いのある音色を旨とし、繊細瀟酒な感性を基とする、ように私は感じている。今回のコンサートは新旧二世代に渡る二人の海派演奏家の二胡を一度に聴くことのできる稀な機会になることと思う。海派二胡の真髄をその耳で確かめて欲しい。
また、王永徳一門の末席になんとかぶら下がっていると自認する鳴尾とその弟子たち、つまり王永徳老師の日本における弟子・孫弟子たちからなるXeno Quartet +（両公演とも出演）とKIKKA Ensemble（兵庫のみ）が前座として本コンサートを盛り上げる所存である。
◇日時：7/14(日)
13:30開場 / 14:00開演
◇場所 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール
https://www1.gcenter-hyogo.jp
◇料金：
＊前売り5000円、当日5500円(自由席)
高校生以下前売り2000円、当日2500円
◇出演者：王永徳(上海音楽学院教授)
張重雪(香港演藝学院中楽系主任)
Xeno Quartet +
（二胡：鳴尾牧子、川野真広、中胡：森敦志、革胡：重松涼子、Perc.:山下嘉範）
KIKKA Ensemble
◇予定曲目：
江河水
江南春色
行街
随想曲第二号《蒙風》
他
◇チケット購入:
https://teket.jp/9863/34196
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■上海の風 師弟コンサート 東京公演
◇日時：7/15(月・祝)
15:00開場 / 15:30開演
◇場所 ルーテル市ヶ谷ホール
◇料金：
＊前売り5000円、当日5500円(指定席)
高校生以下前売り2000円、当日2500円
◇出演者：王永徳(上海音楽学院教授)
張重雪(香港演藝学院中楽系主任)
Xeno Quartet +
（二胡：鳴尾牧子、川野真広、中胡：森敦志、革胡：重松涼子、Perc.:山下嘉範）
◇チケット購入:
https://teket.jp/9863/34212
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◇問い合わせ:
shanghai.breeze.erhu@gmail.com
◇主催 上海の風実行委員会
◇後援 二胡振興会
◇協力 鳴尾二胡教室、東京胡琴重奏部
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