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【映画感想88】駅馬車/ジョン・フォード(1939)
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ひとつの駅馬車に乗り合わせた個性豊かな乗客達が、インディアンの襲撃を交わしながら目的地を目指す西部劇。
乗客は臨月の妊婦ルーシー、酒クズの医者ブーン
娼婦のダラス、脱獄囚リンゴ、保安官カール
御者のバック、臨月の妊婦ルイーズ 、酒商人ピーコック 、銀行家ヘンリー 、賭博師ハットフィールドの9人。
個人的にお酒大好きでひたすら飲んでる医者ブーンが、出産に挑むためコーヒーをガンガンに飲んで酒を抜くところとか好きでした。
終わった後とかも速攻で飲んでる。
ひたすら飲んでる。笑
あと娼婦のダラスが好きでした。
彼女への周りの目は基本的に冷たくて、特に妊婦マロリーはダラスが心配して「なにかできることがあれば……」と声をかけるのを「結構です」と突っぱねたりする。
でもダラスはいつも黙ってて、マロリーの出産後、ダラスは一晩中マロリーについててあげてたり、翌朝部屋に入ってきたブーンが扉を閉めないのを、さっとしめてあげてたりする。
最後にマロリーの方からダラスに「わたしにできることはない?」と聞くシーンがあったのもよかったです。
以前みた同監督の「我が谷は緑なりき」と同じく、決まった結末にするためにキャラクターを動かすのではなくて、このキャラクターはこの状況ならこうするだろうな、という積み重ねの先に結末がある感じ。ひとりひとりが生きてる感じがして愛着が湧いてきます。
走行中の馬車の上からの銃撃戦のシーン、映画や漫画で見たような気がしました。有名な映画らしいので、やっぱり後々の創作に影響をあたえたりしてるんでしょうか。
ところでこの映画、前回見た「わたしはあなたのニグロではない」にて、黒人作家ボールドウィンが「白人は英雄であるという前提を感じる」という旨のコメントをされていた映画でもありました。
たしかにこの映画に出てくるインディアンを人間とは思ってない(ギリギリ野蛮〝人‘’って扱い)感じはしました。
冒頭の旅立ち前、「最近アパッチ族が出たみたいなの…」と町の人が噂してるセリフ、
なんかRPGの「最近街道でゴブリンが暴れてるみたいでな…」とニュアンスが似ています。
よく言われている史実を差し置いて先住民を悪だと描いているという点より、無意識に同じ人間を人間とみなさない選民意識が滲み出ているところがボールドウィンが特に嫌悪を感じた部分かもしれません。階級の差別は意識してるのにそこは自覚できてないグロテスクさというか。
知らんけど。
敵対する勢力を「ひとでないもの」のような雰囲気で描く感じは今まで見たアメリカの戦争映画でなんとなく感じたのですが、他の国だとどうなのだろう。ランボーに出てきたベトナム兵も、硫黄島からの手紙に出てきた日本兵も無機質な印象がありました。
この映画、ポリコレ的にアメリカで上映がしづらいという話を聞いたけど(真偽はわからない)、
映画としての完成度を抜いても、当時のアメリカ市民のニーズを表す資料として公開され続けるべきだと思います。
★追記
アメリカの古い民謡、『B ury me not on the lone prairie(寂しい草原に埋めないで)』は、この映画で広まったそうです。カバーした曲とかもあるのかな
https://youtu.be/xI3O9fMX3nE