【映画感想35】わが谷は緑なりき/ジョン・フォード(1941)
原題はHow Green Was My Valley。
19世紀末のイギリス、炭坑町を生きる人々の映画。
『母のショールに荷物をまとめ 私は谷を出ていく 2度と戻ることはない 50年の思い出はここに残していこう…』
のナレーションから始まる主人公が振り返る谷での記憶。
序盤からこれたぶんめっちゃ好きだろうな〜と思ったらすごい好きな感じでした。
いちばんよかったのが谷では歌が生活の一部であること。
たぶん楽器もあまりないような街で、
結婚式や誰かの快気祝いではみんなが歌う。
BGMかなあと思ったら、歌いながら人が歩いてくる。
会話と同じ位置に歌があり、非日常ではなく日常に音楽があるところがめちゃめちゃよかったです。
尊敬する父、働き者の家族、活気のある谷で生きるひとたち。
ある種の理想郷。
しかし時は19世紀イギリス、
鉄鋼業も便利な機械が出てきたことから雲行きが怪しくなっていく。
鉱山は出来高払いなので、「仕事ができる」人から首を切られていく。
ストが起きてどんどん谷の様子も変わっていって、特に教会での騒ぎのシーンなんかは田舎の共同体の負の面が全面に出てるんだけど、人の心の善良さって、結局生活の余裕がつくってるんだな…と切ない気持ちにもなりました。
牧師が結局ここには信仰はない、と町人たちをなじるシーンがあるんだけど、
彼らの本当の意味での祈りと信仰は教会での祈りではなく歌うことにあったのではないかと思う。
生活が苦しくなるにつれて彼らの生活から歌も消えていったけれど、
現代の生活から歌が消えたのも、似たような経緯があったのかもしれない。
★参考
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/わが谷は緑なりき