フィンランド人はケーキを等分しない
高校留学時代。
ホストファミリーのお家で暮らし始めて1週間ほど経った頃、私の歓迎パーティーを開いてくれた。いつもより少しだけ華やかなごちそうがカウンターに並んだ。ホストファミリー以外にも、これからの1年間にお世話になる方々がワイワイと集まって色々なことを話していた。
食事が終わってデザートの時間。ホストファミリーのお母さんがケーキを焼いてくれた。みんな小さなお皿を手に、ケーキの列に並ぶ。
最初、誰かが丸いケーキの中心からナイフをいれた。そしてケーキを少し回して、もう一刀。三角形のケーキをひと切れだけ切り出し、自分のお皿に載せた。
次の人もまた少しケーキを回して、さっきの切り口から続けて自分のひと切れを切り出した。
すると次の人は「お腹いっぱいだから、ほんのちょっとにするね」と、薄いひと切れを切り出してお皿に載せた。
まだ中学生だったホストブラザーは甘いもの好き。他の人の1.5倍ほどのひと切れを取っていった。
そうか、自分が好きな分だけ食べていいんだ。一番最初に感じた、カルチャーショックだった。
考えてみればそうおかしなことでもない。しかし、これまでケーキを前にしたときは、どうすれば人数等分できるかばかりを考えてきたから、不揃いに切られていくケーキはどうしても新鮮だった。
8年が経ち、大人になって初めてフィンランドに滞在した去年、フィンランドで暮らす人たちとお互いの人生や仕事、生活についてたくさん話をした。
詳しくは後日書きたいと思うが、彼らは人生の進路から、日常の小さなことに至るまでを「自分のちょうど良い」を軸に選択している。そしてそれを受け止める周りの姿勢にも改めて気がついた。
まるでケーキを好きな分だけ食べてもいいように、彼らは人生を好きな分だけ生きているように、私にはみえた。
2024/02/17
後日談を更新しました。