がっこうぐらし!最終巻を10倍楽しむための考察
この考察はがっこうぐらし12巻を読んでいる前提で話を進めます。アニメしか見ていない人でも前半までは読めなくもないですが、後半は重大なネタバレを含みます。
本文はすべて無料で読めます。
・がっこうぐらしに隠されていた謎
12巻の読み終わってからの第一印象って正直かなり微妙だったんですよね。
何とも言えない終わり方で、投げっぱなしになっていた伏線を全部回収するのは不可能だと思っていたけれども、終わっただけで及第点とすべきなのかもしれないとは思っていました。とはいえ、伏線全無視で終わった上に、正直分かりにくい展開で締めくくられ、「なんかそれっぽい伏線はっとけば食いつくだろ」みたいな制作サイドの考えが透けて見えて、酷く失望したんですよ。
しかし、私は「あること」に気が付いたんです。
ある事に気が付けば、12巻はグダグダした投げっぱなしエンドから、しっかりとしたハッピーエンドになります。
それが私がこれから説明する「クラウド仮説」です。
・前提「ループ説」について
この話はがっこうぐらしの考察勢でない人にも、この文章を読んでほしいので、「ループ説」にも触れておきます。知っている人は読みとばしてくれればいいと思います。
「ループ説」というのは、一言でいえば「がっこうぐらしは複数の時系列の話を混ぜて、描かれているのではないか」という説です。
漫画が今手元にある人は少し注意して背景やら、クラスの番号を見てもらえれば分かるのですが、がっこうぐらしの背景って矛盾だらけなんですよね。学校の窓の荒れ具合が複数存在して、それが時々入れ替わっているんです。
そういった視点で見ていくと、本当に前回の話で描かれた状況がありえないレベルで変わっていることすらあります。例えばですが、みーくんは一巻最後では段ボールで寝ていますが、二巻冒頭ではちゃんとしたベットで寝ています。さらに二巻17ページではみーくんがひとりでご飯を食べている様子と圭と二人で食べている様子が対比されていますが、明らかに状況が違います。ベットがなかったり、段ボールを台にしていたり、描写が明らかに違います。
アニメ版も、同様に窓の割れ具合がシーンによって違ったりします。ここまであからさまに変えられると、漫画家側や作画班の不手際とは考えにくく、わざとやっている物だと考えられます。
そういった描写から、由紀たちは何回か同じようなことを繰り返しているのではないか。そして、漫画とアニメはその周回を切り貼りしてつじつまが合うように作られているという説です。
↓イメージ図
窓の割れ方が変化しているなどの点から、この繰り返しは「同じ場所で」起きていると考えています。
具体的に何周しているかと聞かれると、描写を見る限り、3周していると私は考えています。とはいえ二回以上の繰り返しがあるということだけで十分です。
・クラウド説とは
クラウド説というのを、一言で言ってしまえば「ゾンビ(かれら)化した人間の記憶は肉体から離れたところで残っている」という設定があるのではないか?という話です。
(がっこうぐらしでは、ゾンビの事を「かれら」と表現しますが、分かりにくいので、以降、ゾンビと表記します。
ほとんどの読者の方は「???」といった状態になっているかもしれませんが、ちゃんと根拠はあるのです。
まず、この仮説は6巻巻末の無線記録からいただきました。全文を引用します。
かれらを恐れてはなりません。
かれらは未来です。クラウドです。
クラウドわかりますか。
データをネットワークで薄く薄く遠くまで広げることです。
人間の心もデータですから薄く薄く遠くまで
広げることができます。
かれらにとって、心は一つの肉体に収まるものではないのです。
かれら全体の中に薄く遠く広がっているのです。
かれらを迎えましょう。クラウドを迎えましょう。
天国には雲がありますね、それがクラウドです。
彼らと一緒にクラウドになって天国に行きましょう。
(引用:がっこうぐらし!6巻171ページ)
何言ってるか分かりにくい文章ではありますが、簡潔にまとめると
・人の心は遠くまで広げることができる。
・ゾンビ(かれらたちはそれを共有している。
の2点を説明しています。
この話を頭の片隅に入れてがっこうぐらしを読み返すと、多くの謎に説明がつくのです。
例えば、由紀について。由紀がめぐねえの事が見えているのは精神の疾患だと思われてきました。ですが、死んだめぐねえの心や記憶がまだ存在していて、それが見えているとすれば、由紀が理解できていないことや知らないはずのことをめぐねえが教えてくれた事があったのも納得がいきます。
他にも、由紀は不思議な力を使う事があります。例えば、ゾンビたちを学校放送で追い払ったり、他の人には聞こえないヘリの音を聞いたりたりします。これも、由紀がゾンビの心を認識したり、干渉する力があるから、出来ることなのだと考えると納得がいきます。
りーさんが大学編で突然「るーちゃん」を思い出し、人形を「るーちゃん」だと思い込み始めてしまったのもこれが原因です。精神が不安定なところに、記憶が混ざってわけがわからなくなってしまったのでしょう。もしかしたら、さまよう記憶を受け取る条件は「精神が不安定になる」かもしれません。
いろいろ書きましたが、ゾンビ化した人たちの記憶は、そこら辺をさまよっていて、時々生きている人に戻ってくるって認識でオッケーです。
クラウド説の説明が終わったところで、ついに真の12巻を読んでみましょう。無くても楽しめますが、手元に12巻が用意できるとよいです。
・みーくんの苦悩
みーくんは久しぶりに帰ってきた学校で、大事な友達である圭のゾンビを見つけ、ひどく驚いて、動けなくなってしまい、噛まれてしまいます。
「ご…めん…… 私… け……」
その時のセリフなのですが、このセリフ、少し違和感があるんですよ。ひとりで出ていった圭はほぼ間違いなくゾンビ化していたはずであって、みーくんは引き止めなかった後悔があったとしても、「見つけたこと」で驚くというのは、ちょっとだけおかしいんです。
そう思いながら、ページを進めると、どうやら「自分が圭の事を忘れていたこと」に驚いているようなのです。まあ、最近忙しかったからね、すっかり忘れてたよ……みたいなことではありません。日記をつけて過去をちゃんと整理しようとしていたみーくんが、おそらく自分が引き止めなかったせいで、死んだと思われる友人を完全に忘れていたのです。
(何を言っているんだ、11巻の終わり際では覚えているだろ、というご指摘もあるとは思いますが、多分時間軸が違うので、直接関係ないです。)
そうだとすると、「みーくんは死んだ友人をすぐ忘れる薄情者」ということになってしまいますが、そうではないです。なぜなら、このみーくんと圭はそもそも出会ったことがないからです。
おそらく1週目は本当に、圭とみーくんは一緒に暮らしていました。ただし、十二話で圭と再会したみーくん(2週目以降)は圭と一緒に過ごしたことはないんです。つまりどういうことかというと、前の時間軸でかれら化してしまった圭や、以前の周回のみーくんの記憶が引き継がれていて、2週目以降のみーくんは「昔、圭と二人で住んでいたけど、圭が出ていくのを止められなかった。」と勘違いしていただけで、2週目以降に圭とみーくんには面識がないと考えられます。
本人が経験した記憶ではないので、その記憶はひどく不安定で、忘れてしまっていたのです。
けれども、みーくんにしてみれば自分は「見殺しにしたも同然の親友を忘れて楽しく過ごしていた薄情者」になります。見殺しにしたも同然の圭を忘れていた事を激しく後悔して、圭に噛まれ、自殺することすら考えるようになります。
「もう終わったほうがいいんです もうこれ以上失くしたくないんです」
なぜなら、あんなに大切だった圭すら忘れてしまったのだから、胡桃や他の大切な人たちがこの後死んでしまったとしても、すぐ忘れてしまって、勝手にひとりで幸せになるのではないかと連想したからです。みーくんはとても優しくて、仲間を大切に思っているので死んでしまった程度で忘れてしまうなんて耐えきれなかったのでしょう。今、自殺してしまえば少なくとも大切な仲間たちをを忘れてしまう事はありません。
「圭のこと、先輩の事、みんな……嘘になっちゃう」
そんな後輩を、止めに来たのが(おそらく前の周回の)胡桃の記憶です。実は5巻で、胡桃が拾った拳銃をみーくんが投げ捨てているシーンがあり、このシーンはセルフオマージュ(似た状況)になります。12巻のみーくんが持っていた拳銃を投げ捨てるシーンは昔、生きていた頃に言われたことを本人に返しに来たのです。
とはいえ、自分自身はかれらのの集団の中に存在する記憶だけの存在ゆえに、自分はかれらの討伐と同時に完全に消え去り、みーくんもその時には忘れてしまう運命にあります。だからこそ言うのです。「忘れてもいいから、覚えとけ。おまえはずっと私の大切な先輩だ」と。仮に本人が忘れてしまったとしても、自分はずっと大事に思ってるという意思表示をしたかったんだと思います。
・りーさんの覚悟
由紀を残して、りーさんは核を止めるために由紀を残して通信機を探しに行きます。その時、思いだされたのは、るーちゃんの本当の記憶。
パンデミックが起きる以前、ずっと前にるーちゃんは死んでいたのです。もちろん1週目よりも前と考えられます。もちろんりーさんだけに責任があるわけではないのですが、りーさんは手を離してしまったことに責任を感じます。りーさんに関しても、2週目以降のりーさんは直接体験したわけではありませんが。
「私は燃え尽きてもいい、あの時、手を離したのだから。でも、全世界のあの子のために。」
核を落とさせないこと、皆を殺させないことで、ひとりでも多くの子供たちを救うこと、それが唯一の弔いになることに気が付いたりーさんは、自分のほうにゾンビたちを引き寄せ、この世界の最後の希望を由紀に託すのです。
・由紀の卒業
「ひとりぼっちはいやだよ、最後までずっと一緒に居られたからそれでいいかなって……」
由紀のヤバさはこの一言にすべて詰まっています。
分かりやすーく翻訳すると、「そろそろ死んじゃうけど、一緒に死ねるならいいよね」っていう主張です。由紀の本当にヤバいところは幻覚が見えるところではなく、間違いなくここです。そこまで「一緒にいること」を大事にしています。
由紀は、通信機を探しに行ったりーさんを追いかけてひとり駆け出します。作品内で自分の意思で単独行動するのはここ以外無いんじゃないかと思います。そこからも、このシーンの意図が伝わってくるような気がします。
かれらに由紀が襲われそうになった瞬間、りーさんの銃声が響き渡り、事なきを得ます。そして、由紀が大切にして、大切にされていた人たちが現れたのです。めぐねぇ、太郎丸、青襲さん、胡桃ちゃん(の記憶)が現れて、適切な助言をして、由紀を導きます。
ちなみにこのメンバーは、記憶が元の人間に戻っていない人たちの集まりです。
めぐねぇ、太郎丸、青襲さん→無事な身体がないので記憶が戻りようがないため登場。
りーさん、みーくん→本人たちに記憶が戻っているため、登場しない。
胡桃ちゃん→本人は生きているが、かれら化の影響なのか、本人に記憶が戻っていない?ため前回までの記憶が登場していると考えられるが、よくわからない。
この人たちも、記憶だけがゾンビたちのなかに存在している状態なので、ランダルにアンチΩの存在を伝え、ゾンビたちを退治してしまえば、消えてしまいます。けれど、由紀はついに自分の信念である「みんな一緒」を捨てて、「さようなら」をいうことができました。……由紀はここにきてやっとみんな一緒という幻想から卒業して、現実に帰れたのかもしれません。
もういない人たちの力を借りながら、由紀は通信機を持って屋上にたどり着きます。そうして、ランダルに通信をつなげて、思いの丈をぶつけるのです。
「私たちはここにいるよ、まだ生きてるよ」
・三年後、直樹美紀はかく語りき。
「由紀先輩は凄いですけど、そんなには凄くないです」
「生きた人たちも、生きようとした人たちも、みんなが凄いんです」
このみーくんの台詞はがっこうぐらしはただのゾンビ物ではないということを示す最高のセリフだと思います。
最終話の少し前、由紀がランダルに通信をかけたシーンを思い出してみましょう。
ランダル側からすると、由紀のこの通信は信憑性があるでしょうか。通信で「治療薬がある!」と言われたところで、ランダルの人間にまともな思考が少しでも残っていたら、「生き残るためにでたらめを言っている」か、「頭がおかしくなっている」と判断するでしょう。さらに、ランダルはたいして意味もない「パンデミックが始まった場所の熱消毒」を実行してしまいそうになるほど、指揮系統がぐちゃぐちゃになってたわけです。熱消毒の方向でヒステリックに進んでいたであろう計画を止めることなど、もはや誰にもできない状況だったはずです。
それなのに、由紀の通信で願いが届いたのには、ある理由があると考えられます。死んでしまった人の記憶たち、つまりクラウドです。みーくんは自分の記憶を取り戻しただけですが、由紀はいろいろな人の記憶を認識できますし、アニメ版では、りーさんにもめぐねぇの幻影が見えていたような描写があります。姿をはっきりと見る事はできなくとも、あの世界にいた誰もがクラウドから影響を受けていてもおかしくはありません。
さらに、アニメ版12話での名シーンとして「由紀の校内放送」があります。由紀が放送室でゾンビたちに語りかけることで、ゾンビを追い払うのですが、これこそ、由紀がゾンビたちのクラウドに語りかけて、気持ちを動かすことができるという証拠になります。
つまり、クラウドによって由紀の願いは遠くまで伝わって、ランダルの構成員すべてに届き、ランダルを変えることが出来たのです。
そのクラウドを形作っていたのは、これまでに死んでしまった、沢山の人たちです。つまり、人類を救った由紀の奇跡は、葬られることもなく死んでいった沢山の誰かによって支えられていた。だから、すべての死んだ人たちにも意味があった。かれらが生きようとあがいた時間は無駄ではなかった。
だからこそ、直樹美紀は、「みんなが凄かった」と語ったのでした。
・制作陣にひとつだけ言いたいこと
ここまで、(半分妄想のような)考察を書いてきましたが、ひとつだけ言いたいことがあります。
「制作陣よ、もう最終巻から3か月だぞ。このままだと未解決で終わるから、もうちょっとヒントをくれ!」
これにつきます。
ゲーム版発売とか、二期制作決定、アナザーストーリーの小説化とかでいいので、ぜひお願いします。
・最後に
これを読んでがっこうぐらしの印象が変わった人は、左下のスキを押したり、拡散していただけると沢山の人に共有できると思います。
後、これ以降の有料部分にはおまけとして、これ以上考察したい人向けのヒントとして、「なぜ世界はループするのか」と「年表制作のヒント」を記載しています。
この考察を読んで感動した人は、投げ銭感覚で購入していただけると幸いです。
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