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「クロガネ回姫譚 -絢爛華麗-」感想

生きている人、いますか?

お疲れ様です、とりぞーです。

初投稿なんです。優しくしてね(何を?)。

◇基本情報

・ブランド みなとカーニバル
・発売日  2021年8月
・ジャンル バトル
・分岐形式 箒型

◇パッケージ

・商品名称 クロガネ回姫譚 -絢爛華麗-
・購入形態 店売(ソフマップ)
・購入価格 10,780円(税込)
・同梱特典 フルカラーイラスト集
・予約特典 色紙(全員集合)※早期予約特典・色紙(祢々)・ボーカルCD(全曲)※劇伴なし・タペストリー(B2・天国)

◇傾向

長 ★★★☆☆  ※価格に対するテキスト量
重 ★★★★★  ※精神的なしんどさ
熱 ★★★★☆  ※燃える展開の有無
楽 ★★★☆☆  ※ギャグの冴え
哀 ★★★★☆  ※全米が泣くかどうか
感 ★★★☆☆  ※余韻を感じるか
難 ★★★☆☆  ※頭が良い人向け
新 ★★☆☆☆  ※斬新さがあるか
エ ★★☆☆☆  ※濡れ場の数・テキスト量・CG枚数
幸 ★★☆☆☆  ※ハッピーエンドであるか

◇推奨攻略順

 伏姫→天国→大包→玉綱→虎徹→祢々→回姫譚

 ※伏姫・天国を攻略するとグランド√以外の他ルートが解放される
 ※全ての個別ルートが終わると回姫譚√が解放される
 ※初手天国√は心が死ぬので、伏姫√から始めることを推奨
 ※祢々√は移植に伴い作成された新規シナリオ

◇プレイ前の印象

 こういうゲームにしては珍しく、PS Vitaから逆移植の商品ということで、既に一定の評価を受けている作品です。最低限の面白さが担保されていること、テキストの大部分が完成済みであり発売延期の可能性が低いこと、以上の二点からリスクの低い買い物だと感じていました。元作品の発売(2015年)から時間が経っているため、今プレイして面白いのか?という不安はありましたが、そこはさかき傘さんのシナリオということで、全幅の信頼を寄せて予約に走った次第です。

 発売前のキャンペーンとして、さかき傘さんがメインライターを担当した4作品の栞セットが、商品購入者(当該作品以外でも可)に配布されました。ブランドも絵師もバラバラな作品を一つの企画としてまとめるのは、実は業界的になかなか難しいことかと感じます。それだけさかき傘さんのこの業界における評価が高いということなんだろうと思うと、ただのいちファンのくせに鼻が高かったです。

◇プレイ後の印象(ネタバレ控えめ)

 Live2D社による2D立体表現について、PCによっては正常に作動せず、半透明の幽霊のような姿で表示されるのが、発売直後にプチ炎上していたのが印象的でした。私のPCも少々古いものなので不安でしたが、なんとか正常に起動してくれてほっとしました。 

 ただ、この2D立体表現に対する違和感はあって、近年のソシャゲのハイレベルな表現に比べると、動きに違和感や造形バランスの崩れを感じずにはいられませんでした。おそらくは元の絵の問題なんだろうとは思いますが。

 さらに言わせてもらうと、2D立体表現は立ち絵にのみ有効で、一枚絵のCGには対応していなかったのが非常に残念でした。絵に動きをつけるなら、濡れ場にこそ力を注いで欲しかった…。「まいてつ」のe-moteではその辺までカバーされてたので期待してしまいました。 

 また、千早さんの絵に一貫性というか統一感がなかったように思います。特に天国。色紙の絵とタペストリーの絵とゲーム画面の立ち絵が全て印象が違いました。特典タペストリーの絵を見て妖艶で大人びた美少女なのかと思いきや、やんちゃな年下キャラだったのは、戸惑いしかありませんでした。

 さて、内容についての印象ですが、とにかくシナリオが重い!最後のグランド√はもちろんのこと、各キャラ√も重量級でした。特に天国√はヤバいです。グランド√より重いです(笑) 覚悟して臨んでください。しかしこの天国√は、これぞさかき傘!って感じの物語になっていて、一番辛かったけれど一番好きな話でした。

 批評空間などを見ると、主人公の性格について非人道的であるという理由で、否定的な意見が多く見えるようでした。私はキレイゴトが好きではないので全然気にならなかったですが、倫理観の強い人には向いてない作品かもしれません。

 最後に、ボーカル曲が3曲ともすばらしかったです。特に霜月はるかさんの「灯火」はエンディングにぴったりでした。予約購入特典でボーカル曲の音源全部もらえたのは大勝利でした。

◇とりぞーのお考え(こってり)

 結局この物語は何を表現したかったんだろうかと考えると、
  過去の過ちや不幸があって今があるんだから、
  過去の過ちや不幸に囚われすぎてはいけないよ
 ってことなんじゃないかなぁと私は受け取りました。

 こうしてまとめてしまうと至極陳腐に聞こえますが、ループして最善の結果を追い求める物語や、過去改変して世界を救うSFなんかが大流行している現代に逆行するようなテーマとなっていて面白かったなと感じます。

 できるなら幸せに生きたい、ハッピーエンドを迎えたい、不幸があったならそれをなかったことにしたい。それは当たり前の心の動きだと思います。しかし、多かれ少なかれ誰もが、過ちや不幸を背負いながら生きているのが現実ではないでしょうか?そこから目を逸らしてはいけないのだと。過ちや不幸があっても、その先を幸せに生きていく、その意志が何より大事なことなんじゃないでしょうか。

 バトルシーンも多い本作の中で、ひときわ印象的なセリフがありました。曰く、「強さとは状態である」と。最初は何言ってんだコイツ…?って感じでしたが、だんだん物語が深く見えてきて、何度もこのセリフが繰り返されると、そうか、強さというのは一定不変なものではないし、強さによってもたらされる幸福というものもまた、同じであるのだなと。

 この作品が物語としてさすがだなと思うのは、主題を以下の3方向から多層的に描いていたところです。
 ①主人公の個人的な復讐の話
 ②ヒロイン達の背負った不幸の話
 ③物語世界の成立に隠された敗戦の話

 エロゲってのは一般的にマルチエンディングの物語形式ではありますが、やはり一つの作品として、それぞれのルートがひとつの方向性、その作品の核となる”哲学”に向けて収束していく、そういうのが良い作品なんじゃないかなと思います。


ではまたノシ

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