第四回_1

意識しておかないと、欲は死んでいく。



「今、あなたは何がしたいですか?」

こう問われたら、すぐに答えられますか?
些細なことでもいいから、出来れば複数答えられる方がいいです。
音楽が聴きたいなぁ、とかアニメが見たいなぁ、とか何でもいいんです。

すぐに思いつかなかった人は、
もうすでに欲が死にかけているかもしれません。




こんにちは!美少女画作家の細川成美です!
第3回目の記事は、「意識しておかないと、欲は死んでいく。」です。


どうでしょうか…?

みなさんから見ると私は、日々美少女を描いて、美少女について語って、
やりたいことをとにかく全力でやっているように見えるかもしれません。
そんな私が過去に陥ってしまった体験について、スポットを当てました。

これを読んだ人の中に、私と同じような状態に陥りそうだと感じる人が
一定数いたら、今すぐ危機感を持って欲しい…!

そういう人たちに向けて綴ります。



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物心ついた時から”描きたいもの”を描きたいように描いて生きてきました。


とにかく一枚の絵の中に何かを込めるということが好きだったので、
中学時代には、画家になりたいなぁと夢想していた時代もあります。
絵の上手い国語の先生に描いた絵を見せて思い切って相談したら、
「収入が安定しないし、ほとんどの人が売れず生活出来ない。難しいよ。」と、笑顔でやめた方がいいと遠回しに言われてしまいました。



それでも止められず愛知の片田舎で観察を十何年以上積み重ねてきた私は、
晴れて東京の美大に合格したわけです。
展示活動をスタートし、企画展に参加しながらその都度その都度 ”描きたい” 欲を存分に発散させられるようになりました。


とにかく、ものすごく楽しかったです。


下手でも絶対に完成させて人前に出しました。
そうして感想をもらい、オーナーさんにアドバイスをもらい、
参考にしながらどんどんアクリルの使い方を覚えて、
前回の展示よりもっといい絵を出すぞ〜と、闘志に燃えていました。



こんな風に、
最初はただ描きたい!という思いで始めた展示活動でしたが、
私は同時にあることで、頭を悩ませていました。



率直に言いましょう。”お金” の問題です。



愛知から東京の美大に入学した私は、通うために愛知を出て、
無一文ではるばる東京に出たわけです。

私立…つまり
・「高い学費」と
・「一人暮らしの費用(家賃・光熱費に加え、毎月60000ほどの仕送り)」と
・「創作で掛かる費用」

”これらの三大費用全部” 家族に支払ってもらっていました。

美大に受かったことを人一倍喜んでくれて、その上ものすごい費用を負担してくれる。加えて私には下に妹がいるから、家族は私以外にもものすごい費用を払っている。

でも私は家族に何一つ返せないどころか、手伝うことすらままならない。

当然ものすごく罪悪感があって、
当時はこの問題がずっと胸に引っかかったまま、
もし家族が病気になったら?学費が払えなくなったら?
ものすごい借金をすることになったらどうしようか、
課題を終えた深夜にものすごい恐怖が襲ってきて
バイトをしようかと家族に相談を持ちかけましたが、
受かった以上は学業に従事しなさいと家族は気を使ってくれました。



そうして悩んだ末、展示での収入を増やすに至ったのです。そうすれば

・作家としてきちんと活動が出来て
・バイトで決められた時間を失うことなく、好きな時に課題が出来る。
・家族の負担を減らせる

つまり全部をこなしながら両立が出来ると思いました。



そこから本格的に作家活動がスタートします。

美大で出される複数の課題を掛け持ちしながら、
SNSの動向をチェックしてファンの量を増やしながら、
年間50以上の展示に参加して毎週3〜4作品の新作を描き続ける日々。
やりたいことなので特に苦しみはなく、
とにかく何かに取り憑かれたように絵を描く日々を過ごし…。

2年になる頃には作家として名が売れ始め、ある程度収入が上がりました。


そこまで来て、やっと学業と自主制作全般の創作費を自分持ちにし、
必要な機材を自分で揃え、毎月送られていた仕送りをストップしました。
また、創作に使える費用をきちんと確保しておくために貯金を始めました。


私が陥ったのはここからです。



とにかく「生きること」と「お金」のみに執着してしまったんです。

描きたいという思いは何処へやら、収入を得られない恐怖から
生きるために描かなくてはいけないという思いが先行し始め、


無理をして出そうとした展示が何日徹夜しても手に負えなくなり、家族に
「自分ではもうどうしようもない、絶対に無理だ」と弱音を吐きました。
家族は「やめたらいいよ」と笑ってくれましたが、

私は「でも、やめることは許されないから。やめちゃいけないから。」
と言って作業を続けました。


時間がない、と観たい映画や展示を我慢して、
読みたい漫画があっても、とにかくその情報を見ないようにして

「旅行に行ってきた!」とお土産を手渡してくれた友達を見ながら
いいな〜私もどっか行きたいな〜、でも今は無理かな、と諦めました。

そのうち生活も荒れてきて、
とりあえずご飯をあるもので済ませる毎日。

私はどんどんどんどん、
何をしたくて、何のために今生きているかを忘れてしまったんです。




そんな生活を送りながら、貯金がやっと何十万か貯まったある時、
学校で友人と話して貯金が目標額貯まったことを伝えたら、

「へ〜!で、お金を貯めて何したいの?」と。



あれ?
私は何のために、必死でお金を貯めていたんだっけ…?


もとより創作に使いたくて貯めていた貯金だったのに、
いつしか、ひたすらお金を貯めるだけの行為に成り代わっていました。


また、今まで散々諦める行為を繰り返してしまったことで、
絶対にこれをやりたい!という欲が消えかかっていました。

何故気づいたかというと、友人と自分とでフットワークがあまりにも違いすぎたからです。

「好きな人が出展してるのに、行かなくてもいいやって思える」
「何の予告やポスターを見ても、特に観たいと思えない。」
「欲しかったはずの漫画に、価値を全く感じなくなった」

小学生時代から勉強しないくせに漫画だけは読んできた私が、
漫画を全く読みも、買いもしなくなっちゃったんです。

本当にやばかった時期は、
「お腹は空いているけど、自分が何を食べたいのかもよくわからない」
から適当にお腹を満たす。そういう日々を過ごし、


そのうち絵すらも「何で描きたいのか」「何で描き始めたのか」
「今後どんな風になっていきたいのか」よくわからなくなってしまって、
思考が止まったまま、ずっと機械の様に手だけを動かしていたことに気づきました。




自分の感性を資本にする画業をこなしながら、
まだ大学生の自分が何にも興味を持てなくなって
何もしたいことが浮かばないのがただひたすら怖くなりました。






これは絶対にまずい。そう感じて、
まず食べたいご飯をちゃんと選ぶところから意識して始めました。

今何食べたいかな?

商品を見て自分が食べたいか、食べたくないかをピンとくるまで考える。

食べたい気分じゃないかもな

違う商品を見てみる

こっちの方が美味しそうだな


こういう風に、ささいなものを選ぶところから、
自分が本当に思っている欲のヒントを探しては一つ一つ確認しました。



作品や作家としての方向性も、

・週一で作家活動のコンセプトをまとめたり
・自分の過去や記憶を思い出して年表にしたり
・描き始めたきっかけになった出来事を探したり
・何となくでもしてみたいことリストを作って実行したり
・やりたい→何故やりたいのか?を考えたり
・得た報酬を何に使うか計画を繰り返して

持続的にこれらを繰り返し行って、
一年近くかけてやっと自分が目指している作家像が明確なものになり、
その上で何をやりたいのか、多少言葉に出来るようになりました。


身の回りの消費についても、とにかく欲を大切にするようになりました。

・欲しいと思ったものは、何で欲しいのかをちゃんと考える
・浪費にならないかどうかを確認して絶対に欲しいうちに買う。
・やりたいと思ったことはとにかく絶対にやる。
・見たいもの、行きたいところには絶対に行く

原則これをずっと守りながら生活をしています。

おかげさまで好きなアニメに熱中することも、
欲しかった漫画を揃えるエネルギーも、
何かを手に入れることの楽しさもちゃんと自分の中に戻ってきました!




長くなってしまいましたが、あなたはどうでしょうか?
ちゃんとやりたいこと、ありますか?
やりたいことや手にいれたいものにお金、使ってますか?


本当の目的を見失って、ただお金を貯めるだけの機械になっていませんか?
やりたいことあるけど、忙しいと言う理由で全てを諦めていませんか?
本当はやりたいことのために働いていたのに、
働くことだけのために生きてしまっていませんか?



人は欲というものを悪い方向に見てしまいがちですが、
人が「より人らしく」充実した日々を生きるためには、
文化的なものに対しての欲を持つことがいかに大事か、
廃人のような生活をして初めてわかりました。



また、
私たちが何をしなくても ”欲” をずっと持っていられると思ったら、
それは大きな間違いです。

特に文化的なものを楽しみたい欲というのは
毎日ちゃんと認識して、些細なことでもそれを叶える作業 をしなければ
どんどん どんどん死んでいくんです。

いわゆる三大欲求(睡眠、食、性)に関しては生きていれば必ず持てる欲かもしれませんが…
この三つのみしか稼働しなくなったらそれこそ動物と変わりない、
知の労働が可能な人間の終わりではないかと思います。




これを読んで危機感を感じた人がもしいたら、
毎日やりたいことを意識して探して実行するようにしてください。


また、今は大丈夫だとしても気づいたらこうなってしまった人が何年後かにいるかもしれない、その時はこの記事を思い出してもらえると嬉しいです。



意思を持たず、
ただひたすら動き続ける機械にだけはならないように。






もしよかったらこちらも
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第一回目「コミュ障がデザイン科に進んだら詰みますか?」
第二回目「(雑記)ひたすら少女漫画を避けて生きてきた。

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細川成美 Narumi Hosokawa
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