5/14雑記 ~はぐれもののブルース「シオリエクスペリエンス10巻」~
シオリエクスペリエンス10巻が発売された。
ことここに至ってなお熱量が一切落ちることのない、最高のバンドマンガもいよいよ10巻の大台に突入した。
「このエピソードを収録しきってしまわねば」という絶対の意思が感じられる、圧倒的な分厚さを誇っている。
エピソードの中心となるのは、吹奏楽部の部長でありエースの光岡を、バンドに引き入れることができるかどうか。
コンクール金賞常連の吹奏楽部と、はぐれものの寄せ集めである軽音楽部。
誰がどう見ても、軽音楽部にわざわざ入る理由が見つからない。
(P188より メンバーの迷いを断ち切るために、静かに自分たちの軌跡と立ち位置を確認していく紫織が格好良い)
しかし、「最高の仲間と最高の演奏がしたい」、そこに確信があるから掻っ攫ってやろうというのだ。
(P96より)
まさに悪役。悪役上等。失うものは何もないから、それがわかっていれば、あとは演奏を叩き付けるのみ。
ここまで描いてきたのは代表曲『JACK in!』が如何にして生まれたか。こちらはその道筋を見てきたから、音は聞こえずともそれが「武器」になることを知っている。
(P156-157より メンバーを横並びに描いたときの安心感がすごい。)
1巻を読んでいたときに、まさかここまで重要なキャラクターとして掘り下げられるとは思ってもみなかった。
それは、光岡もすばる先生も。
表面的に捉えれば、軽音楽部の対比であり当て馬。「そういう記号」のまま描かれいてもおかしくはない。
( P128より)
紫織サイドに感情移入して読んでいると、ある意味では吹奏楽部側も悪役であって。そして、その悪役にも"魂の叫び"がちゃんとあった。
ここまであからさまに光岡に対する思いをぶちまけるなんて。
前回からその絆を丁寧に描いたことによって、最後の二人の決断が光るのだ。
カラーページを使って描かれる光岡の解放から、しっとりとした締め方に至るまでの流れは必見。
バンドの成長を描いた先の領域へと、いよいよ突入していく『シオリエクスペリエンス』にこれからも期待したい。