素材とデザインの良さが生きる、奈良県産のスニーカー「TOUN」を履いてみた
箱をあけた瞬間、まず驚いたのは「皮のにおい」だった。
変な話だが、このスニーカーの素材の良さはにおいでわかる。それほどまでに匂い立つスエード。なにしろ紐とソール以外はすべてスエードだ。
これは奈良県の革靴産地である大和郡山市でつくられた、オリエンタルシューズ社による「TOUN」というスニーカーブランドだ。
なぜそんなスニーカーがいま手元にあるのか。
大日本市の「かたりべ」に選んでいただきました
雑貨などを販売する中川政七商店が毎年、バイヤー向けの展示会「大日本市」を開催している。そこには国内のメーカーがつくる「本当にいいもの」だけが集まる。
そんな大日本市を今年も開催するにあたって、一般の人のなかから、ただ一般人目線で「モノの良さ」を語るレビュアーが選ばれた。「かたりべ」と呼ぶらしい。
そこに僕も選んでもらったので、今回この「TOUN」というスニーカーを使ってみることになった。スニーカーはもともと大好きだ。ナイキ、ニューバランスなどをはじめとして、常時10足くらいはストックしてある。
そこに加わったTOUNは、僕の持っているラインナップのなかではかなりの異色な存在だった。
シンプルなデザイン、上質なスエード
TOUNには3つのモデルがある。
靴ひもを通す穴が3つの「3 -three-」、5つの「5 -five-」7つの「7 -seven-」と、穴の数がそのまま名前になっている。これは「5 -five-」だ。最もオーソドックスなデザイン。
トゥーの部分はぼってりと分厚く、ボリューム感のあるつくり。毛羽立つようなスエードの手触りが心地よい。白、グレー、緑のグラデーションに遊び心と大人の雰囲気を感じる
かかとの部分にもロゴや装飾はなく、極力シンプルに仕上げてある。手で持つとがっちりと重く、存在感と安定感がある。
公式サイトにはこう書いてある。
歴史ある奈良の地でデザインされ つくられたスニーカーは連綿と続く時の流れから学び 新しいものを生み出す「New nostalgic」がコンセプトです。
New nostalgicが表すものがちょっとわかる気がした。本来の素材の良さ、シンプルながら気の利いたデザイン、古いようで新しい、まさに僕にとっての奈良のイメージだ。
いい年をした大人に「いい感じ」のスニーカー
足を通してみると、履き口にやや皮のかたさを感じるが、これは徐々に馴染んでいくだろう。むしろ革製品の楽しいところだ。
外を散歩してみた。非常に歩きやすい。しっかりしたラバーのソールとスエード地なので軽さはないが、がっしがっしと地面をつかんで歩ける感覚がある。
普段、どうしても地味な色合いの服を着てしまうが、このTOUNがちょっとした外し感をもたらしてくれる。でも安っぽさはない。
かわいらしいスニーカーがほしいけど素材にもこだわりたいという人にぴったりだ。
TOUNには何気にファミマの「ラインソックス」が合う。色合いも厚さもこの靴のためにあるかのよう。
全国のファミリーマートで売ってるのでおすすめ。履き心地やラインのちょいダサ加減が思いのほかしっくりくる名品である。
(前にもnoteに書いた)
数週間履いてみたけど、TOUNというスニーカーはたしかにノスタルジックと新しさを感じる良いものだと感じた。
奈良の工場では靴職人さんがひとつひとつ、皮の裁断、製甲などの工程を手作業で丁寧に仕上げてくれる。
価格は2万5300円。スニーカーにしては、やや高いかもしれない。
ただ箱をあけて手で持った瞬間に「これならそうだな」と納得できる雰囲気、質感があった。
夏になったらキャップにTシャツ、ハーフパンツなんかを合わせてみたい。
きっとTOUNにはぴったりだ。
この記事は、中川政七商店が運営する「大日本市」の企画で、暮らしの道具を実際に使用し、感想を記事にしています。
バイヤー向け展示会「大日本市」のサイトはこちら。
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