新潟でカレーを食べてきた、ちょっと変わった旅行記
ふと思い立って、新潟に行ってきた。
「新潟に行くぞ」と意識して新潟に行ったのはたぶん初めて。いままではスキー・スノボに行ったと思ったらそこは新潟だった、というのが多かった。ガーラ湯沢とかね。
東京から新潟に行くには新幹線とか飛行機とかいろいろ方法がある。僕が選んだのは夜行バス。3000円だし、寝てる間に到着するから。
実際、深夜の有楽町・鍛冶橋駐車場でバスに乗り、座席のリクライニングを倒して目を閉じたら次の瞬間、そこはもう新潟駅だった。
想像以上にあっという間だ。どこでも寝られるというのは才能ではないか。
(ここに書いたことはPodcastでも話してるのでよかったら聴きながら…)
新潟1日目:「駅から出られない」
まだ朝6時だし、だいぶ冷えるのでとりあえず駅近くのサウナに入る。
2時間ほどサウナで温まったり、読書をしたり、シャワーを浴びて完全にリフレッシュできた。
そのサウナはビジネスホテルの1階に入っていたので、そこの朝ご飯をいただいた。800円で地元料理のビュッフェが食べられてなかなか良かった。
9時くらいから新潟駅のなかのスタバで仕事をする。電源もWi-fiもあるし、新潟にきているとは思えない、いつもの環境。まわりもリモートワークをしているらしい人たちばかり。スタバはどこに行ってもスタバなのがいい。
昼は駅のなかにある日本酒の美味しそうなお店でとりあえずタレカツ丼を食べる。普通にうまい。
お昼を食べたらまたスタバに戻る。
気づいたら19時くらいになったのでそろそろ新潟駅を出てみるか…と思ったら、やばい施設を見かけた。
「ぽんしゅ館」である。
これがあのぽんしゅ館…。噂には聞いていたけど、まさかこんな唐突に出会ってしまうなんて。
詳細はこの記事を読めばわかるし、なんなら読まなくてもタイトルだけでわかる。
日本酒93種類を500円で利き酒できるというとんでもない店。日本酒がドリンクバーみたいに飲めてしまう。駅のなかにこんなものを作るとは。
ここはお土産類もめちゃくちゃ豊富で見てるだけで時間がすぎていく。
さらにぽんしゅ館の階下にも「魚沼釜蔵」という系列の居酒屋があるらしい。
結局、ここで夜ご飯を食べることにした。昼も夜も駅ナカだ。それでいいのか。
と思ったら、これがめちゃくちゃ美味い。駅の中にある適当な飲み屋なはずなのに刺し身とかすげーいい。なんだこれ。
しかもお通しが大根といかの煮物と野菜スティック(肉味噌ディップ)という“いい店の感じ”。
この肉味噌で延々と日本酒を飲んでしまう。駅パワーが強すぎる。
途中で地元のラッパー?の人と知り合い、さらに肉味噌 x 日本酒が止まらない。
(「見てくださいよ」と、 #ゆとたわの 「ワナチル」Tシャツを見せられた)
さて、そろそろ駅を出ようか。
と思ったのに、二次会で向かったのは駅前のファミマである。
知多ウィスキーの小瓶とウィルキンソンの強炭酸を買い込み、バカでかい新潟駅の端っこでセッションした。駅を出たい。
日付が変わる頃にようやく駅を出てホテルに向かった。
GoToのおかげで1泊2000円。やすい。
3000円のバスでやってきて、2000円のホテルに泊まった。
2日目:「沼垂(ぬったり)に行く」
早起きして大浴場でお風呂に入ってチェックアウト。また新潟駅へ戻り、行きつけのスタバに入った。
午前中、仕事をする。お昼は前から行こうと思っていた「ぬったり」に向かう。
ぬったり?
新潟市には「ぬったり」という場所がある。漢字で「沼垂」と書く。とても響きがいい。
昔ながらの町並みに、内装がリノベーションされてたり、きれいに手入れされている雑貨店やカフェが並ぶ。
そんな古くて新しいエリアに目的地の「カフェ明星」と「ゲストハウス なり」がある。
昼はカフェ明星で週替りのスパイスカレーを食べ、夜はカフェ明星が間借りしている「なり」に泊まる。
カフェ明星の店主・あかるいさん。カフェをやるのが昔からの夢だったそうで、思い切って会社を辞め、ZINEをつくり、ポッドキャストを配信し、架空のカフェを全力で妄想してきた。
そしてついに念願の実店舗がゲストハウスに昼間だけオープン。それがカフェ明星なのだ。
「ワンオペでまわせる単価の高いメニューが必要だった」という現実的な視点から提供されるスパイスカレーは、それはもう絶品だ。
この週はほうれん草がたっぷり入ったサグチキンだった。
付け合せの漬物と一緒に食べると、ねっとり濃厚なほうれん草に爽やかさが加わり、得も言われぬ味わいになる。
すごく、うまい。
なにより良かったのが、ご飯の量が絶妙で、お昼のあとも眠くならないこと。おかげで午後の仕事が大変はかどった(チョコレートケーキとコーヒーもいただいた)。
あかるいさんにはZINEについていろいろ教えてもらった。個人がつくる雑誌のことを「ZINE」(ジン)と呼ぶらしい。
へえーいいな、僕も作ってみようかな、「よーし作るぞ」と宣言してきた。
(あかるいさんのZINE、その名も「カフェ明星」)
カフェが入ってる建物=泊まる予定のゲストハウスなので、チェックインしてそのまま仕事をした。昔ながらの長屋なのに信じられないくらいWi-fiが速かった。オンライン会議も快適である。
ゲストハウスならではのリビング?というか、大広間のようなスペースでPCを広げられるのはビジネスホテルにはない利点だと思った。
夜は新潟出身の友人におすすめしてもらった「せきとり」という鳥料理のお店に行った。ここは沼垂から徒歩数分のところにある。
「ぜったいに、半身から揚げを食え」と強く言われていたので、とりあえずオーダーした。
オーダーしたけど、
でかすぎるだろ。
野球のグラブくらいの大きさだ。なんなら捕球しやすく大きめに作られているファーストミットくらいある。
こんなの1人で食えるかー!
と思ったけど、全然いけちゃう。外はパリパリで中はしっとりやわらかい。ほのかな塩味がやさしく、ビールとの相性が完璧。
さすが強く言ってくるだけあった。最高だった。
「なり」にシャワーもあるけど、夜はだいぶ冷えるので近くの銭湯「さか井湯」にいった。
あかるいさんとか「なり」の人から「すごく熱いですよ」と言われてビビりながら行ってきたけど、ちょうどいい熱さだった。サウナと水風呂まであるのが良い。
3日目:「石本商店にいく」
ゲストハウスといえば二段ベッドのドミトリーのようなところを想像していたが、ダブルベッドの個室を予約したので普通に快適な旅館という感じでよく眠れた。まあドミトリーでもどこでもすぐ眠れるんだけど。
早朝から仕事をして、お昼はこの日もスパイスカレーを食べに行くことにした(目の前でカフェ明星が営業しているが、カレーは週替り)。
「石本商店」というごま豆腐のお店が出すスパイスカレーが気になっていたのだ。
バスに30分ほど揺られ、さらに徒歩で10分。
完全な郊外の町なかに、いきなり行列ができていた。念のため開店前に行ったのにすでに人が並んでいることにちょっと驚いた。
町の豆腐屋さんという店構えなのだが、並んでいるのは若い女性が多い。
祖父母の代から続いたごま豆腐のお店を、孫の現店主が継いでスパイスカレーも出すお店としてリニューアルしたらしい。
なぜこのお店を知ったかというと、
1. ここ最近クラフトコーラーにハマっている
2. 新潟にも地元のクラフトコーラがあるのかな?と検索
そしたら、新潟大学の学生たちが手作りのクラフトコーラを「石本商店」というお店にたまに間借りして出しているらしいと知る。
3. 石本商店のことを調べたらこんなnoteにたどり着く。
これは現店主がごま豆腐屋を継ぎ、2020年にカレー屋をやるぞという決意した話です。
あらかじめnoteを読んでいたので、ごま豆腐屋さんのスパイスカレーは食べに行きたいと思っていた。
新潟にきて思ったけど、いい感じのお店ほど昔からある外装を残して、中をちゃんとオシャレにまとめている。「なり」もだし、この石本商店もそうだ。新潟で会った人たちもそう。見栄えよりも中身にこだわるのは気持ちがいい。
で、スパイスカレー。
これはもう写真を見てもらったら、わかると思う。
どう考えてもおいしいでしょ。
ひよこ豆のキーマ、ほたてと油揚げのカレーという個性的な2種のあいがけ。どちらも最高だった。アチャール的な付け合せも良かった。
こんな素晴らしいカレーが住宅街のなかに突然現れるのは愉快という他ない。
そしてごま豆腐がまたすごかった。
むっちりと濃厚なごま豆腐に、チョコレートアイスが乗り、オレンジピールのソースがかかっている。すーんと淡白で深いところに旨味を感じるごま豆腐にチョコの甘みが絡み合う。それをオレンジがちょっと引き締める。
ごま豆腐ってこういうデザートみたいに食べれるものなんだ…。
うめえ…。うめえよ。
東京から夜行バスで6時間 + 新潟駅からバスで30分かけてくる価値はある。そんなの近いものだ。
荷物を置かせてもらった「なり」に戻り、またカフェ明星のコーヒーを飲みながら仕事。たったいま出会ったカレーとごま豆腐について語った。
仕事の合間に、沼垂テラスという商店街をちょっと散歩。
やっぱり、良い。
ここの飲み屋なんて絶対にうまいことがわかる。
わかるのよ。
そういうのは。
オーラが出てるから。
で、夜。やっぱりきてしまった。
この日はすずきの刺し身がおすすめだった。もちろんおいしかった。
白子の天ぷらも。
まだ1本目の瓶ビールを飲み終える前から、となりのおじいさんが自分の日本酒をどんどんついでくれる。なぜかお土産のおにぎりもくれた。
知らないおじいさんからいただく日本酒を飲むのに精一杯で、自分で頼んだお酒を飲む暇すらない。
めっちゃ飲まされてまた夜行バスに乗った。目を閉じたらたぶんもう東京にいるはず。
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新潟は広い。だから今回行ったのは新潟県の新潟市のさらにその一部だけ。でも新潟のことをとても好きになった。
雪山があるところ、日本酒が美味しいところ、お米がとれるところというイメージしかなかったが、新しくインプットされた新潟のイメージを一言でいうなら「中身への熱いこだわり」である。
みんな自分のデザインとかストーリーとか、それを伝えることにむちゃくちゃこだわってる。だけど必要以上には飾らない。なんというか、「見た目から入る」「形から入る」ということがないんだと思う。
だから安心できるし、そこに尊敬する部分があった。
店舗や宿泊施設とか土産物はもちろん、人も同じ。カフェ明星のあかるいさん、通りすがりのBRING BACKさん、石本商店の石本さん。みんなすごいな、自分のこだわりに挑戦してるなあと思った。
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早朝、東京に戻ったら、まだ7時なのに銀座のユニクロに行列ができていた。ジル・サンダーとのコラボライン「+J」の発売日らしい。
発売前は気になってたんだけど、
もうほしい気持ちはなくなっていた。