劣等感リストカット
はじめては会社のトイレの個室だった。
新棟の一階の女子トイレ。
新品のカッターナイフの替刃。右手で使う勇気がなくて、左手で。
溢れてくる、充血した目よりもはるかに赤い液体。
今でも忘れられないあのあたたかさと痛みからくる実感。
生きている、ここにいる。
わたしはちゃんと存在している。
とてもとても、落ち着くことができたのを覚えている。
思い返せば学生時代はそんなに劣等感を覚えることも、自己嫌悪することもなかった。それなりに幸せに、楽しく、生きていた。
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