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【感想】ヒストリエ

エウメネスーーー!!
たった12巻しか一緒にいた時間がないとは思えないほど、遠くに連れてきてもらったよ。

なんて魅力的な人なんだ。

歴史漫画というジャンルにこんなに夢中になれる日が来るとは。
子供の頃、三国志とか龍馬がゆくとかに夢中になるおじさんにまったく理解不能だったけど、おばさんになってやっと、共感できるようになった。

こんな面白いジャンル、スルーだったなんて。もったいなすぎる。

岩明先生の絵はとても独特で、夢中になる前に離脱してしまったであろう人たちの声もよく見かける。

だけど、一回ハマったら、もう、この絵じゃないとヤダっていうくらいハマる。

エウメネスの顔見ただけで、もう、、あああ(涙)と、情緒がめちゃめちゃになるくらいに。

1ページ1ページが、美術館に飾られている歴史的な絵画みたいなクオリティー。建物、動物、戦陣、武具、どれもこれも、ここまで丁寧に描かないとダメなんだ、という凄み。

命を削って描いているからこその、この作品の迫力。
何回も繰り返し、これからじっくり大切に読ませていただこう。

お話の展開も、いっこの設定で、壮大な物語がかけるものなのに、それが何でもないことのように、さらっと、エウメネスの回想で語られる。

設定のハラハラドキドキとかそういうのにまったく頼らず、淡々と物語が進むため、余計なストレスをかけずに、登場人物たちの心情だけを純粋に追うことができる。

どこまでもフラットな視点で俯瞰的に描かれている。
熱い展開や、セリフももちろんあるんだけど、そういう小手先の「ほらね」っていうドヤ感みたいなのが一切ない。

なのに、1ページめくった次のシーンで、びっくりするぐらい、心がぐらつく。涙が出る時もあれば、打ちひしがれて、それ以外のことを考えられなくなることもあり・・・。

誰も彼もがその立場で、必死に覚悟決めて生きてて、特定の誰かに肩入れしないように構成されているように感じる。

悲しかったり、寂しかったり、悔しかったりするんだけど、そういうのを冷静に流してるように見える、エウメネス。
だけどものすごく傷ついてて、苦しんでて、直接的な表現がないのに、物語の進行とともに、頭の中にいろんな感情が湧いてくる。

こんなお話、今まで読んだことない。

エウリュディケーーー(涙)
こんなことになるんだったら、エウメネスと一緒に逃げていればよかったのに(涙)
フィリッポスは本当にデリカシーがなくて最低でグロテスクだ。だからこそそこまで、登り詰めたんだろうけど。

アレクサンドロスとオリュンピアスのことを嫌いになれないのも、フィリッポスがどうにもムカつくからだろうな。
エウリュディケに対する仕打ちは本当に辛いんだけど、そもそもフィリッポスのせいじゃないか。

11巻から12巻までは5年も空いたんだな。
それは熱心な読者の人はさそがし辛かっただろうし、リアタイではなく、一気読みできたのは、精神的に負荷が軽減されたように思う。

もちろん、続きは読みたいけれど、
死ぬまで一人の人生を追うのはドキュメンタリーだ。
物語をどこで終わりとするかを決められるのが創作だ。

史実もあるから、結論は見える。そのなかのプロセスをどう考えるかは読者の自由だし、無機質な歴史の記録に、こんなにまでも、ワクワクする道筋を与えてくれた。

実際はどういう出自でどんな人生を歩んだのかを確認しながら、自分なりの妄想を楽しもうと思う。

岩明先生・・・好き。大好きだーー。

もう読む前の自分には戻れない。

寄生獣も、もっかい読も。

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