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【薬1】なぜボリコナゾールとデエビゴを併用する時、デエビゴは2.5mgへの減量が必要なのか


ボリコナゾールとデエビゴって併用してもよかったんだっけ

ボリコナゾールとデエビゴの相互作用についてです。
「たしかボリコナゾールは強力なCYP3A4阻害薬、デエビゴはCYP3A4の基質だった気がする。」
と朧げな知識だったので、実際どうなのか調べてみることにしました。


まずは添付文書の確認です。
ただ、いずれの薬剤にも、添付文書に直接の記載はありません。

↓ブイフェンド静注 添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/672212_6179401F1026_3_09

↓デエビゴ錠 添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/170033_1190027F1022_1_06


一方、添付文書にも記載がある通り、ボリコナゾールはCYP3A4をはじめとした様々なCYP分子種を阻害する可能性があります。

In pilot experiments, voriconazole showed inhibition of CYP2B6, CYP2C9, CYP2C19, and CYP3A (half-maximal [50%] inhibitory concentrations, <6 μM)

S.Jeong et al. Antimicrob Agents Chemother. 53 541-551 (2009)


また、デエビゴはCYP3A4にて代謝される薬剤であり、エーザイのHPには、デエビゴはCYP3A4阻害薬と併用する際は2.5mgへの減量が推奨されているとあります。

【デエビゴ】 CYP3Aを阻害する薬剤と併用する場合の投与量は?上限量は?
回答
CYP3Aを阻害する薬剤は「併用注意」に設定されています。
併用により、レンボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aが阻害されて、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強されるおそれがあります。(引用1)

CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマシンなど)と併用する場合は、デエビゴは1日1回2.5mgとしてください。また、患者の状態を慎重に観察した上で、デエビゴ投与の可否を判断してください。

電子添文の用法・用量に関連する使用上の注意に以下の記載があります。
4.CYP3Aを阻害する薬剤との併用により、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強されるおそれがある。CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で、本剤投与の可否を判断すること。なお、併用する場合は1日1回2.5㎎とすること。(引用2)

エーザイHPより

<1日1回2.5mgの設定理由>
デエビゴと中程度又は強いCYP3A阻害剤(フルコナゾール又はイトラコナゾール)との薬物相互作用試験において、単独投与時と比較してレンボレキサントのCmaxはそれぞれ62%又は36%上昇し、AUCはそれぞれ317%又は270%増加しました。この結果を踏まえ、中程度又は強いCYP3A阻害剤を併用する際のデエビゴの用量は2.5mgとしました。また、併用した際の有効性及び安全性を検討した臨床試験成績は存在しないことから、患者様の状態を慎重に観察することとしました。(引用4)

エーザイHPより


フルコナゾールとデエビゴを併用すると、CYP3A4阻害によりデエビゴのAUCが300%台まで上昇するようです。
ということは、AUC400%上昇すると考えると、デエビゴ2.5mgの投与はデエビゴ10mgの投与に匹敵するということですが、これは承認された最高用量を超えないため、おそらく併用禁忌とはならず併用注意となっているのでしょう。

ただ、エーザイHPに記載のあるデータは、デエビゴとフルコナゾール・イトラコナゾールとの併用時のデータです。
ボリコナゾールとデエビゴを併用した検討がないか調べましたが、現時点では直接検証した研究データは見当たりませんでした。

しかし、ボリコナゾールもフルコナゾールやイトラコナゾールと同様、強力なCYP3A4阻害薬に分類される薬剤ですので、おそらく同程度のデエビゴの血中濃度上昇がみられるものと推測できます。

以上、まとめると、

ボリコナゾールとデエビゴを併用する際は、デエビゴは2.5mgへ減量をする

今回も大変勉強になりました。

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