背中の大蛇
先月の末に『噺のまくら』という本を買いました。一つの話しが3ページか、3、5ページくらいですが、この『大蛇の切り身』という話は著者、三遊亭圓生にとって特別な話らしく、5ページ足らずもあります。
20人ばかりが祭りで趣向を凝らし目立ちたいと背中を並べて一匹の大蛇を彫り(刺青)ます。ずらりと並んだ20人の背中の大蛇の入れ墨は、見事なものだと大喝采を浴びました。祭りが過ぎて一人一人になるとその背中の大蛇は大蛇の切り身にすぎません。その切り身は一生消す事が出来ません。
いかにも日本人らしいですね。
人々の喝采を得たという成功体験を、一生背中に背負って生きる。
ヤマト運輸が宅急便を始めたころの話を読んだ覚えがあります。そのころまで小さな荷物は郵便局へ、制限を超えたものは厳重に荷作りして荷札を付けて鉄道の駅まで持ち込まなければなりませんでした。
宅急便の構想、全国に配送網を作ることなど、運輸省や、同業者に反対されて法規を盾に邪魔をされたそうです。「前例のないことは却下」というのが、官民を問わず日本の体質になっていたのです。そのころ、流通機構の不効率が新聞で報じられたことも覚えています。前例こそ背中の大蛇ではありませんか。
ヤマト運輸では「国民へ直接広告」をして、世論を味方にゆけて運輸省や同業者の反対を押し切ったと聞いています。
失われた30年間に先進国の中でGDPが2位から20位以下に下がっているそうです。税収不足、災害に対する財政出動のため、道路の舗装面が波打っても修理が出来ないのでしょうか。足が弱っていて波打つ路面の横断には冷や汗をかかされます。インフラの面でも三流国になってしまったのでしょうか。
コロナウィルスに対する対応では、台湾にも韓国にも、大きく差を付けられました。韓国については悪口ばかりが聞こえてきますが、キリスト教教団の大規模なクラスター感染も抑え込んで、現在は日本よりもいい状態ではありませんか。
日本は災害大国と言われます。だからこそ他国に比べて備えがなければならないのに政治、行政共に過去の災害に学んでいません。
コロナ禍を機会に背中の「大蛇の切り身」を忘れて徹底的な防災体制を敷かなければなりません。そういう時期なのに、総理大臣はあらゆる問題に対して白を切るので精一杯です。何一つ方向が見えない。悲しい事です。
2020年12月10日
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