台湾は台湾、香港は香港
台湾チームで課題図書に挙げられていた「台湾とは何か」の著者である野嶋剛さんに、8/11インタビューすることができた。ちょうど最新刊の「香港とは何か」を上梓されたところで、早速購入。最近たくさん積ん読かれているその他の本を横目に、パラパラと読み始めたら、もう一気通貫で読み終えてしまった。
2019年は香港にとって激動の一年であった。2月に逃亡犯条例の改正案を香港政府が立法会へ提出したことへの反発からデモが始まり、いわゆる民主派、さらには香港を本土(故郷)と考える本土派の若者たちによる最大で200万人ともいわれる巨大な抗議行動に発展した。当初は平和的なデモであったが、香港警察は催涙弾やなんや浴びせかけて、逮捕者も続出し、11月には香港中文大学、香港理工大学などで警察とデモ隊が衝突、11月24日に行われた香港区議会議員選挙では非建制派(親中派ではないという意味)が80%以上の議席を獲得して圧勝する。
その間、メディアを通して様々な情報が届いたが、どうしても現場の感覚は理解できない感じがしていた。そこに今回の「香港とは何か」が突き刺さる。
まず野嶋氏は、香港を論じることの難しさを語る。香港をめぐる見解は、価値観が衝突し、分断されているからだ。
「香港は、中国であって、完全な中国ではない。香港は、東洋であって、完全な東洋ではない。西洋的な制度や文化も生きているが、もちろん西洋ではない。」
むしろ、東と西、国家と国家の境界における例外性こそが香港の特質だ。「香港は、あらゆるものが立ち寄り、過ぎ去り、また戻ってくるゲートウェイだ。」
著者は、香港は中国と多くの点で「異なる社会」であるという認識を出発点にすることが、香港問題解決の唯一の策であると考える、と述べて、その立ち位置を明らかにしている。
詳しくはもちろん、読んでみていただきたいのだが、私がとても印象に残った事は、香港の若者たちのセンスだ。言葉の表現力が素晴らしい。
「Be water(水のようになれ)」「發夢(夢を見よう=最前線へ行こう)」「TG放題(催涙ガスをたくさん浴びること)」「食彈(催涙弾を食らうこと)」などなど。。街角に設置されたレノンウォールには、たくさんの付箋が張り付けられ、多くの市民がメッセージを寄せる。
デモ隊のテーマソングも、素晴らしい!みんな黒シャツ黒マスクで演奏する。もしかして、いつか香港が独立したら、きっと国歌になるんじゃないかな!?
https://www.youtube.com/watch?v=U4auC9gEXLk
台湾について学んでいても感じることだが、自分たちが台湾人である、ということが「当たり前ではない」からこそ、台湾は台湾だ(中国ではない)と考え、そこに仲間意識と公共空間への参加意識が生まれる。
いま、中国政府は6月30日に国家安全法を可決し、香港に置いて施行した。「一国二制度」は習近平政権によって、限りなく一国が強調されてきている。
権威主義を強めながら経済的な台頭を続ける中国と、いかに付き合うかは、香港のみならず、日本にとっても、世界中の国にとっても大きな課題だ。
中国の発展と成長は、否定できないしむしろ称賛に値するだろう。しかし、その先に自由や民主という希望があってほしい、それが欠けてしまうとともに歩めない。そんな「強烈なノー」の意思表示を香港は付きつけついるのかもしれない。
私たちには、何ができるのだろう?