【必読】全員から好かれるために
みんなに好かれたいと思っている皆さん、こんばんは。今夜は誰も傷つけずただみんなに好かれるための秘密の方法を教えたいところですが、そんなものあるわけはないので一緒に考えてみたいと思います。
まず、好きの反対は無関心とはよく言ったものですが、好かれるためには興味を持ってもらう必要があります。
新学期、あなたは誰も知り合いのいない1年3組の教室に一人で座っています。向こうから話しかけてくれる人もいるでしょう。こういうとき、大体後ろか前の人が話してくれますね。ひとまず一人からの興味は獲得しました。しかしそれだけではみんなから好かれるのには程遠いですね。このまま進んだ世界線の六月を見てみましょう。クラスは大体4つのグループに分かれています。シンプルに言えば一軍/二軍、男子/女子のそれぞれの組み合わせです。一軍二軍という言葉は安易ですが、実際にはそれが運動部だったり学級委員だったりという個々のパラメータが影響してきてグラデーションになってはいます。
とはいえ明らかにクラスは分断されています。最初に話しかけてくれた後ろの席の彼は、特にあなたに興味があったわけではなく、殆ど全員に話しかけてあっという間に一軍メンバー入りしています。みんなに話しかけて人脈を築き上げた彼は一軍たるに相応しい存在ですが、彼にも欠点があります。それは主に2つ。
第一に、彼自身に個性がなく、言ってしまえば相当にツマラナイ人間であるということ。周囲の人間も含めて皆、概してグループ行動を好むので平生はあまり気にならないのですが、帰途に二人で話すようなことがあると実に中身のない話しかできない人物であると知れます。
第二に、友人を友人というよりは人脈として捉えている点。彼にとって利用価値がないと判断された人間は速やかに好意の対象から外れます。だからといって冷遇するわけではありませんが、それは彼があくまでみんなから好かれたいからです。より正確に言えば、嫌われたくないからですね。ただ、気前よく挨拶こそすれ、これまでのように自ら話題を提供するような努力はなくなります。そして彼はまた次なる人脈を築きに、有望そうな人物からさらにツテを辿っていきます。
世間では彼のような人物を世渡り上手と評するのでしょう。人当たりが良いから多くの人に好かれるし、大物にも積極的にアプローチするその気概が認められて信頼を置かれるやもしれません。しかしだからといって全員に好かれるという目標を彼は達成することはありません。少なくとも私だけは彼のその性質に気づいているのですから。尤も、私が彼の人生の舞台に再び上がることはないのでしょうが。