嘘の吐き方
嘘には「吐く」という動詞が使われますが、この意味を考えてみましょう。
「吐(つ)く」で使う言葉といえば、溜息とか一息とか、あるいは悪態でしょうか。辞書によれば「突 く」と同語源だそうです。ふむふむ。
私は今まで、息を吐くように嘘を吐くから「吐く」なのだと思っていましたが、どうやら相手のことを攻撃するから「突く」なのかもしれませんね。
成程、嘘を吐くのも中々楽ではありません。
嘘をつくということは、それすなわち相手を刺すということだと考えるべきなのでしょうか。もし相手を刺すのだとすれば、それは相手から刺される覚悟も必要です。刺すか刺されるかの戦いをする覚悟がないなら、嘘はつかないに越したことはないということです。
あなたがもし嘘をついたとしたら、自分も嘘をつかれているかもしれないという疑念に苛まれて気楽には暮らせなくなるでしょう。嘘をつかれる=「死」の恐怖に追いかけ回される。裏を返せば正しさの担保ができなくなるということですから。
優しさからつく嘘もありますか。それとて同じです。上手でもない絵を褒めた瞬間、自分の絵が褒められても疑心暗鬼にならざるを得ない。真に褒められるという経験は一生できなくなります、ということ。ふむふむ。
こんな嘘と欺瞞に満ち溢れた世界でも、あの人だけはいつも正しい気持ちを、率直に伝えてくれるから、好きなんだよね。