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言葉にすると、一人で読んだだけでは見えなかったものが見えてくる──社内で『世界観のデザイン』の輪読会をやってみた

最近、社内で輪読会を企画しました。
「みんなで学ぶ、一緒に次に進む」ための手段としていいな、と思ったので、自分がやったやり方を記事にします。
よかったらご自身でアレンジして、輪読会をやってみてください~。

1.輪読会をはじめたきっかけ

私は現在、仕事で未来洞察に取り組んでいます。私の職種は「デザインリサーチャー」や「フューチャリスト」といったものが近いのですが、これらは一般的になじみの薄い職種かなと感じています。同様の仕事をしている人は多くなく、未来洞察の実践自体がこれから開拓される分野だと認識しています。

未来洞察に関するさまざまなアプローチを模索する中、X(旧Twitter)で、アメリカ最大の銀行であるJPモルガン・チェース銀行に岩渕正樹さんがフューチャリストとして採用されたことを知りました。そこから「もっと岩渕さんの実践について知りたい」と思い、以来、記事講演を通じて岩渕さんの活動を追ってきました。

特に2024年11月の講演で、岩渕さんの未来洞察に関する語りに強く惹かれ、岩渕さんの著書「世界観のデザイン 未来社会を思索する技術」の輪読会を誰かと一緒にできないかと、社内SNSでつぶやいてみました。すると、すぐに反応してくださる方がいて、輪読会を企画することになりました(このような何気ないつぶやきに反応していただけること、本当に感謝…)。

こんなつぶやきから、輪読会開催が決まりました


2.輪読会の企画

「さらっとした企画書、書きますね!」と社内SNSでコメントしたこともあり、企画をたてました。今回はすでに本は決まっており、参加者は社内SNSで手を挙げてくださった方は決まっていました。

その後、「たぶんこの方はこの企画に関心もってくれるのでは」「この人とは一緒に世界観のデザインを読んでみたいな」と思った人3名に私からお声がけをし、5名で実施することとしました。私含め4人がデザイナー(そのうちデザインリサーチャーが私を含めて2名)、1人が営業です。

輪読会の一コマ。じっくり対話するには5人はいい人数だなと感じました


その他、実施スケジュールやルール等については以下の通りです。

2-1.実施スケジュール

期間: 2025年1月13日の週~2月24日の週まで 全5回
頻度: 毎週1回(1時間)
日時: 参加者間で予定調整
形式: オンライン(Teams)

年末年始のバタバタが終わったあたり、みなさんの予定をみながら会の調整を行いました。私が所属する会社は多くがテレワークのため、全輪読会をオンラインで実施しました。

2-2.ルールと役割

全員:毎週決められた範囲を読んでくる。
シェア担当者:所定のOneNote(※)に自分のシェア担当部分をまとめてくる。その上で、「皆さんと考えたい問いを2~3個」もってくる。

※Microsoft社のデジタルノートアプリ

事前に参加者が本を読まない読書会もありますが、今回は「じっくり考えを深めてもらう時間を個々にとり、その上で対話したい」と思ったため、全員が事前に本を読み、その上でシェア担当者が担当部分をまとめてくる形式としました。
どの章を担当するかについては、各自からリクエストをもらいました。

シェア担当者割り振り


OneNoteには以下のようなテンプレートをつくることで、シェア担当者ができるだけまとめやすくなるようにしました。

キーワード(5個ぐらい)
XXX

概要(語られていることを200文字程度でサマライズ)
XXX

詳細(任意、箇条書き)
1.XXX

気づき、感想
1.XXX

皆さんと一緒に考えたい問い
1.XXX


「所定の章をまとめるのはわかるけど、皆さんと考えたい問いってどんな問い出せばいいの?」と思った方もいるかもしれません。
実際に私たちが出した問いを俯瞰すると、こんな区分があるように見えたので、よかったら参考にしてみてください。

1.個人の経験に紐づけ、ストーリーから学ぶ問い
「あなたの常識を覆された経験は?」のように、参加者自身の具体的な体験を引き出す。
「この章の中で刺さったキーワードは?」など、個人的な共感ポイントを聞く。

2.仮想シナリオを設定し、発想を飛ばす問い
「もしあなたが○○社のフューチャリストだったら何をする?」というように、想像力を刺激する状況を提示する。

3.実践への落とし込みを考え、アクションにつなげる問い
「世界観のデザインプロセスを実践するにあたり、どんなチームアップやプロセスの工夫を行うか」など、実務での適用を考える。
「みなさんが担当している、またはやってみたい領域で、世界観のデザインを作ろうとしたとき、まずどんなことができそうですか?」といった小さなトライについて考える。

4.対比的な視点から、思考を深める問い
「好きな世界観/嫌いな世界観」といったように、対照的な観点で考えを引き出す。
「納得感がある部分/ない部分」など、多角的な視点を促す。


2-3.使用ツール

OneNote:シェア担当者のまとめ用に利用。
Miro: 対話時の視覚化・発展に使用。
Teams:オンライン会議用。

上述の通り、シェア担当者のまとめ用にOneNoteを用意しました。
それ以外に輪読会の対話のセッション時にはMiro(オンラインで使えるホワイトボード)を使って、お互いの気づきや問いへの答えを書いていくようにしました。

毎回の輪読会のMiroフォーマットには
・チェックイン(今のごきげん、この場への期待など、その他)
・その章の気づき
・問い1への自分のアンサー
・問い2への自分のアンサー
・チェックアウト(今のごきげん、この場から持ち帰りたいもの・この場にくるまではなかったけど今はあるもの、その他)
が、各自書けるようになっています。

輪読会1回分のフォーマット


実際の輪読会全体のMiro。セッションごとにフォーマットのMiroのフレームを増やします


2-3.アジェンダ

5分:チェックイン
15分:シェア担当者によるシェアリング
15分:互いの気づきのシェアリング
20分:問いを元にした対話
5分:チェックアウト

企画当初は「最初の30分はシェア担当者によるシェアリング、残りの30分で問いを元に対話」としていたのですが、チェックインやチェックアウト、シェア担当者だけじゃなく他の参加者の気づきのシェアリングがあった方がいいねと気づき、ほぼ毎回この形式となりました(とはいえ毎回対話が豊かに広がり、時間は足りなかったです…!)。

3.やってみての気づき

輪読会をやると
「自分にはなかった視点に触れることができ、自分の理解が深まる」
「同じ会社・チームの人との共通認識ができ、それについて語る土壌ができ、本の学びを実践しやすくなる」

という点がいいなと思いました。

私は最初「世界観」という言葉自体を深く考えていなかったのですが、第二章の輪読会の時に「よい世界観として思いつくものは?」という問いがあり、他の方が出してくれた回答で「あぁ、こういう風に捉えるといいんだな」といった学びがありました。

また、私自身は「民主化」ということを仕事の上で大切にしている関係上、岩渕さんの「消費されない民主化」という言葉に琴線が触れました。今回一緒に輪読会をしたメンバーは「民主化」に関心が高い人が多かったこともあり、じゃあ「消費されない民主化のために自分たちは何ができるかね」といった話ができたのも、私にとっては非常に意味がありました。

この本で紹介されたフレームワークをすぐにプロジェクトに適用してみたり、「世界観」という言葉を意識的に資料作成に取り入れたりする動きも生まれ、「同じ会社・チームの人と一緒に輪読会をすると、学びをどう使えるかを一緒に考えて実践できて、とてもいいなぁ…」とも感じました(もちろん複数会社・複数チームで輪読会を実施する時には、また違った良さがあると思っています!)。

参加者の皆さんからもコメントをいただいたのでご紹介します。

まずはデザイナーの参加者の方から。

「これまで本といえば"積む"専門だった私ですが、久しぶりに"読む側"に回ることができました(継続できるかはさておき…)。"本の読み方"にも個性があるという発見がとても興味深かったです。それぞれの"読み方"を尊重しながら、お互いの解釈をシェアし合う時間は、想像以上に豊かで刺激的でした。」

今度は営業さんから。

呼びかけにすぐに手を挙げて本当によかったー!
デザインと聞くとつい体が拒否反応を示すような人生を歩んできましたが、この本の、皆さんの、輪読会のおかげで、ぐっと身近に感じることができるようになりました。
本の読み方はもちろん、人の話を聞いたときのメモの取り方(受け取り方)から違うという、「違い」が鮮明になった一方で、この人たちとご一緒することで想像以上の世界観が、未来が描けると…というワクワクをたくさん感じられました。

こちらはデザイナーの方から。

これまで輪読会といえば、長くて1人で読むには大変な本をみんなでシェアして読んでいくイメージでした。今回の輪読会はみんなで読んだうえで、それぞれ感じたことや気になったことの対話中心だったので、デザイナー同士でも見方が違うことが見えてきたり、デザイナーと協業の多い営業さんの目線が入ることでより色んな想像ができたり、いろんなことが発見できる時間でした。

感想を拝見していて、輪読会によって読む機会が創出されることはもちろん、読み方や考え方の「違い」から共に学ぶことができ、さらには次の楽しい未来への兆しなども感じることができたんだなぁ…と、感じました。


もしこのnoteをご覧になり「自分も輪読会やってみたい!」となった方がいたらぜひやってみてください。

かなり細かく書きましたが、別にこの通りやらなくて全然いいですし、「えいやっ」という気持ちでやってみることもめちゃくちゃ大事だな、と思っています。やってみればなんとなく回るし。

私たちはネクストステップとして「本じゃなく、こういうものを輪読会したらおもしろいんじゃないか…!?」といった新たな取り組みの案も出ています。

みんなで「本などの誰かが書いてくれたもの」を媒介に、自分たちの思考を巡らせ言葉にし、次のアイデアを共に、苦労がありつつも楽しみながら実践していく。

このnoteが、そうした実践を進めていくためのお役に立てたら嬉しいです。

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