集落に関係人口をつくろう!
中山間地域の今
「年金プラス月3万円ビジネスの話が聞きたい。」2019年頃から山形県庄内地方の中山間地域の自治会からお声がけいただくようになりました。
背景には、中山間地域の人口減少があります。若い子育て世代が、通学や通勤が便利な中心市街地に住むようになると、集落から子どもが減っていきます。学校がなくなり、商店がなくなり、路線バスがなくなる。いっそう不便になるので、人口減少が加速する。
親は、子のしあわせを願い、市街地に住むことは止めないと聞きます。「地域を出ていくときは、雪で家が崩壊し近所に迷惑をかけないように、家を取り壊してから引っ越す。だからこの地区には空き家はない」ある地区の事務局長さんの声です。
残された住民は、集落をたたむか、がんばるかの瀬戸際に立たされています。
叡智が消える
中山間地域から人が消えるということは、文化も消えるということです。文化は、日々の暮らしが積み重なったもの。脈々と口伝で継いできた自然とつきあう方法。
ちょっと大げさですが、その土地に住む人にとっての叡智です。それが消えてしまうということ。
自分は住むことはできなくても、地域の人が望むのであれば、伝統や文化を残すことの役に立ちたいと考えています。勝手なようだけれど、住んでいないからこそできることもあると思っています。
行政では
山形県では2017年から県内6カ所でモデル事業を3年間実施しました。
鶴岡市も「小さな拠点事業」(内閣府 地方創生施策)を推進しています。
まず、住民が主体となって話し合いを重ね「地域ビジョン」を作り、実情にあった新しい地域運営組織を模索します。
「地域ビジョンと計画作り」まではテンポよく進むのですが、多くはそこでストップしてしまいます。計画と実行の間に高い壁が立ちはだかります。
活力ある地域づくり推進事業 平成29年〜令和2年度
「地域運営組織形成モデル事業」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/about/chiisanakyoten/h29-06-01-siryou3-1.pdf
酒田市 大沢地区、田沢地区
庄内町 立谷沢地区
寒河江市 田代地区
西川町 大井沢地区
金山町 中田地区
誰がやるの問題
立ちはだかる壁は、「誰がやるの問題」です。
住民の高齢化は進んでいます。やりたいことがあってもアイディアを行動に移す手順がわからない。インターネットやSNSが使えないなど、技術も十分ではありません。
集落に住む若い世代は、働き盛りで子育ての真っ最中。
仕事後や休日に、地域の仕事を担うのは、大変です。
「勤務後に地域のことまでやるのは大変だ。」「地域行事やつきあいをパートナーが嫌がる」という理由で市街地に住んでいるという声もよく耳にします。
40〜50年前とは人口構成が大きく変わりました。実情に合わせて地域自治のしくみを変化させる必要があります。
やりたい!を起点にはじめる
中山間地は、宝の山です。住民の中には、地域資源を生かし、加工品を作りたい!食堂をやりたい!という人がいらっしゃいます。
そのタイミングで、「年金プラス月3万円ビジネスの話が聞きたい。」とご依頼いただくのです。
話を聞くと、多くの方がやってみたい!と言ってくれます。
話を聞いた後、住民合意ができたら、集落によそ者を招いて、地域のナリワイ作りワークショップを行うという流れです。
これまでに鶴岡市大網地区(おおあみ)、宝谷地区(ほうや)、酒田市山元地区で、実施してきました。「やりたい!」を応援することで、突破口が見えてきました。
魅力発見ワークショップin酒田市山元地区
ここでは、2020年10月に酒田市山元地区で実施したワークショップについてご紹介します。
主催は、酒田市山元地区(旧平田町)
事務局は、スケダチ・クリエイティブ庄内
協力:地域おこし協力隊、「ナリワイ起業講座」卒業生
私は、事業アドバイスと当日のファシリテーターとして関わりました。
参加者は、大学生2名を含む若い世代15名。その7割は、庄内地区への移住者です。
若者や移住者の中は、「地域ならではの伝統・文化」に関心をもっている人がたくさんいると感じています。ただ、多くの集落は観光地でないため、一般の人は接点が作れないのです。
動画はこちら(阿部彩人さん製作)
楽しい雰囲気をお楽しみください。
旧阿部家でコスプレ
山元地区のお母さんグループ「わいわい工房」の料理を試食。メインは、モクズガニの味噌汁。めちゃめちゃおいしい!
午後は、地域資源を活用して何ができるかを考え、発表。
ワークショップ後、起きたこと
参加者のほとんどが、SNSで体験を発信してくれました!一部をご紹介します。
参加者が山元地区のロゴを描いてくれました!
実施から1ヶ月後、10/24に参加していたフラワーアレンジの先生が、山元地区でリース作りのワークショップを開催しました。
まずはファンづくり
住民が苦手とするSNSを使った発信も、体験が楽しければ、頼まなくても勝手にどんどん発信してくれます。商品開発をするにも住民だけでは、市場調査できませんが、”よそ者”の力を借りることで、実現可能になります。まずは、集落のファンになってもらうこと。
このように互いが楽しみながら関係を作れる場をデザインしていきます。
やさしい経済をつくる
ポイントは、少額でいいのでお金のやりとりを行うことです。お金のやりとりがあることで、お互いに責任がうまれます。無償を否定するわけではありませんが、継続を考えるのであれば、ビジネスは非常に有効な手段です。
顔が見えるやさしい経済を小さく小さくつくっていくのです。
おいしい! たのしい! やりたい!
地域住民が、”よそもの・若者”と活動すると、自分たちだけでは気づけなかった地域の価値を発見することができます。一緒に楽しみながら動ける人がいれば、行動が変わっていくのです。
ワークショップに参加してくる理由は、「楽しそうだから」「美味しいもの食べれるから」。とてもシンプルです。
そして、双方が自分の中から湧き上がる「やりたい!」を大切にすること。
しくみを変える時期
計画が実行に結びつかないのは、住民の力が足りないのではありません。「仕事のあとにまた仕事」「やらされる」と感じさせる従来のやり方を変えていく時期なのです。
観光以上、移住未満のかかわりを表す新しい言葉「関係人口」。
移住施策用語のように使われていますが、地域づくりにこそ必要な概念です。集落にも関係人口をつくっていくことが、これからの鍵となると私は思います。
中山間地域の住民が、生きがいを持って暮らせる方法はある。そして、かかわる”よそ者”も、中山間地域に住む人を通じて自然や文化に触れ、学び、しあわせを感じることができると信じています。
ご相談・お問い合わせは以下からお願いします。
https://itokeikocheerleader.wixsite.com/itokeiko