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無料のアクセサリーに釣られてデート商法のカモになった話(後編)

前回までの簡単なあらすじ
ネックレス無料進呈の広告にまんまと釣られ、店舗に引き換えに行ったゆびきゅう(カモ)
後日長谷川と名乗るそのジュエリー会社の営業マンから電話がかかってきたのだった。
長谷川は慶應大学出身で身長180cmの岡田准一似だというなんの信憑性もない話を鵜呑みにし、テンションが上がるカモ。
宝飾のイベントに誘われ、まんまと足を運んだ。
そこで起こった悲劇とはいかに…!?

前編はこちらから見ることができます。

ついに自称180cmの岡田准一との初対面の時

宝石フェアの会場に着き、長谷川に電話をかける。

かける時、不覚にもちょっとドキドキしてしまった。
3日連続で電話で話していた180cmの岡田准一がいざ現れるとなると緊張する。

「あ、ゆびきゅうちゃん〜!来てくれてありがとう!」
長谷川が現れた。


【第一印象(心の中で全力で叫んだこと)】

180cmの岡田准一やないか。

長谷川は黒髪短髪イケメンで、確かに顔立ちは岡田准一を彷彿とさせた。

芸能人で言うと●●に似てるって言われるんですよと自己申告した場合、たいがいは
「う〜ん……あ、あぁあ〜?見えなくも…ないん…じゃないかな?」
と言う微妙な反応が返ってくるものだが、長谷川に関しては10人中10人が
そうならないであろうと思った。

さらにアニメで例えると、スラムダンクに出てくる仙道彰の、髪をもうちょっと落ち着かせたタイプのメンズ。(好き)

第一印象はメチャクチャ良かったのである。

中に通されると、一緒に指輪を見に来たカップルのデートの如く中を一緒に歩き、展示されている宝石を見る。

可愛い宝石たち。
横には180cmの岡田准一(仙道彰でも可)

軽くパラダイスだ。

会場の奥のちょうどいいテーブルと椅子での出来事

適当に見て回った後、程よい場所に2人で座れる丸テーブルがあった。

「ゆびきゅうちゃん、疲れたでしょ?飲み物何がいい?」

「あ、ありがとうございます。じゃあオレンジジュースを」(普段はお〜いお茶一択です。可愛い女子感出しました。)

完全にやられていたんでしょうね。

長谷川はジュースを持ってきた後、奥に戻り、なにやら大事そうに「あるブツ」と分厚い資料みたいなものを抱えて戻ってきた。

「アレキサンドライトって知ってる?」

「知らないです」

「非常に希少価値の高い宝石だよ。ゆびきゅうちゃんだから特別に見せてあげるね」

「え、いいんですか?」

いいんですかじゃないですよね?読者の皆様。
どう思いますか?この単細胞女を。

アレキサンドライトの原石とカットしてある宝石状のものを見せてもらった。

「これ、光の入り方で色が変わるんだよ。面白いでしょ?」

「えっ??色が変わるって、どういうことですか?」
リアクション芸人ばりに食いつくゆびきゅう(カモ)

このときの長谷川はきっと心の中で小さくガッツポーズしていたのであろう。

「っしゃぁぁぁぁぁぁ!!食いついてるぜぇい!!このカモ、ゲットだぜーーーッ!!
これでいつものキャバ行ける♬今夜はドンペリいれちゃおっと♬」

と思っていたに違いない…

「なんで違うかっていうとね〜かくかく〜しかじか〜」

えーっと…なんとですね、

アレキサンドライトの説明だけで1時間使いました。

恐ろしいことに、この状況に対して当時の自分は、

「この人は物凄くこの宝石が好きなんだな〜仕事熱心なんだね⭐︎」
くらいに思っていました。(恐ろしいですよね)

ちょいちょい控室的なブースの奥に消える長谷川

そしてその後です。

「これ、付けてみる?ペンダントタイプとかアクセサリーになっているのが色々あるよ」

と言われ、

「えーー付けても買わないですよ。どうせ高そうだし」
と答えると、

「大丈夫!分割も出来るから★持ってくるね★」

またもや奥に消える長谷川。

読者の皆様、
電話の時は「買わなくていいから」と言っていたのが「分割も出来るから」に言葉が変わっているのが、お分かりいただけただろうか?(ホラー番組風に)

当時の私「そっか、分割も出来るなら安心…なのか」

完全にイカれてしまっています。

沢山のアレキサンドライトのジュエリーを抱えて嬉しそうに小走りで戻ってきた長谷川。

「値段とか関係なく、この中でゆびきゅうちゃんが一番惹かれる宝石を選んでみて」

ほんとうに言葉選び上手ですよね。
絶妙にデートっぽさを出している為に「買わせようとしている感」がないんです不思議と。

みんなあつまれ〜秋のベタ褒め祭り〜ここに開催

率直に可愛いと思ったネックレスを指さすと、

「マジか。俺もそれがゆびきゅうちゃんに一番似合うって思ってた。付けてあげるね」

まさかの後ろから付けてくれるサービス!!
バックハグの手前のような感じにドキドキする。

「すげー可愛い。めっちゃ似合う!宝石が似合う高貴な顔だよね。ぶっちゃけ似合わない人には無理に勧めないんだけどさ、こんだけ似合っちゃったら連れて帰って欲しいなぁ」
長谷川怒涛のベタ褒め祭りが始まった。

「絶対高そう…無理無理。学生だし。」

「ゆびきゅうちゃん、学生はもう自立した立派な大人だよ。若いうちに宝石を買うっていうことは財産を持つということで、それが代々受け継がれていくんだよ。」
もっともらしいことを言い、急に真面目な顔になる長谷川。
(いろんな顔、見せてくれるよね)

そこから、学生時代に宝石を買っていた方が逆にいいという妙に説得力がある風の話が始まった。

気付いたら会場に入って2時間が経とうとしていた。

金額の提示と購入可能と思わせる数々の提案攻撃

そのジュエリーの金額は約100万円だった。

分割払いをすれば数年で払い終わる話や、現在のバイト収入から換算すると、月に2着くらい服を買うのを我慢するだけで良い話を延々とされる。電卓叩いて、分割で月々15000円くらいなら学生でも手が届かないわけではない話をされる。(100万➗15000=5年半で完済的な)

人間は一つの場所に拘束され、延々と買うメリットばかりを話されるとどうなると思いますか?

そうです。

だんだん買える気がしてくるのです。

警察からの長時間の尋問により、冤罪を認めた無罪の人とほぼ同じような心理状態だと思います。

さらに言われたのは、

「買ったら数ヶ月に1度はお手入れに来てもらうけど、俺が担当だから、数ヶ月に1度は俺にも会えるんだよ?
俺はゆびきゅうちゃんに会いたいな。(とても甘えた声)」

「買っちゃおうかなぁ…」
そう思った瞬間、ふと母の顔が浮かんだ。

母には今日、ここにくる話はしてあった。
冗談で「たっかい宝石買わされるんじゃないの〜?」と言われていた。

まさに母が予言した通りの状況になっていた。

母の言う通りにはなっちゃったけど、100万円の大きな買い物だし、一応話しておいた方がいいな。

そう思い一旦席を外し、母に電話をかけた。

【母に言われた一言】

あんたなぁ、もしその宝石買ったら2度と家に入れんからな(鬼の声)

えええええええええっ
最初あんなに一緒に盛り上がってくれたじゃない。なんで?!と思ったが、
よくよく考えてみると、最初のあれは無料(タダ)だったから。

今回はどんなにアレキサンドライトの希少価値や、買った方がいい理由を並び立てようが、ダメだった。母は完全な鬼モードに突入していて、怖すぎた。

当時、「母のいうことは絶対」だったので、逆らうという選択肢はなかった。

電話している間、長谷川は会場の奥に消えた。
(何回消えたことか)

ちょいちょい消えるけど、あれはきっと上司に相談に行っていたんだろうなぁ。

長谷川を待つ間、初めて周りを見渡してみると

至る所に丸テーブル。
スーツの男性(全員イケメン)には嬉しそうな顔をした女性客(若干冴えない風貌)

スーツの女性(全員美女)には楽しそうに談笑する男性客(こちらも若干冴えない風貌)

そして、この拘束時間(3時間)

時計を見ると、彼氏との約束の時間を余裕で超えている。
焦って遅れる旨のメールを打つと、
「どこにいるの?」とメールが返ってきた。

しまった、ちょっと行く前にこっちで5分くらい寄るところがあるとしか言ってなかった。
そもそも5分だけのつもりだったのに、こんな所に3時間も拘束するのは異常だ。

帰らなきゃ。

母や彼氏の言葉で、やっと我に帰った瞬間だった。


我に返ったカモ女の逆転劇

私が夢から覚めたことはつゆ知らず、長谷川が興奮した様子で戻ってきた。

「ゆびきゅうちゃん!びっくりしないでよ?上司に相談したら、こちらでも頑張らせてもらって、15万値引きしていいって!!85万で買える決算が降りた。こんなこと今までないよ。絶対買っておいた方がいいよ!!」

完全に夢から覚めた私は、きっぱりと言った。

「いや、もういいです。こんな時間だし、予定もあるし帰ります。」

買わない理由をしつこく聞かれたので、

「お母さんに相談したら、買ったら家に入れないって言われちゃったので。ウチ衝動買いとかに厳しいんですよ。ごめんなさい!!」

逃げるように席を立った。


逃げるカモと追う岡田准一最後に放たれた衝撃の一言

最後の見送りの際、長谷川から衝撃の言葉が出た。

「結局、ゆびきゅうちゃんは一人では何も決められない女の子だったんだね。ちょっとガッカリしたよ」

イケメンに捨て台詞でディスられ、むなくそ悪い気持ちで会場を後にした。

買わないと確定した瞬間、態度が豹変した長谷川にも驚いた。

なんか一方的にフラれた女みたいな気持ちにさせられましたよね。

家族には呆れられた。

彼氏にもめちゃくちゃ怒られた。

100万円の宝石を買わなかったのがせめてもの救いだった。

〜後日〜

大学で詐欺商法についての授業があった。
(タイムリーすぎん?)

その中の項目で「デート商法」というものがあり、

無料の商品で釣って、展示会へ誘惑し、デートや恋人のような気分を味わせて、カモに高額な商品を売りつける手法

という文章に目を見張った。

カモ、それ先日のワイのことや

ってなった。

全部経験したばかりのことすぎて、笑うしかなかった。

友達に一連の出来事を話したら、「さすがゆびきゅう!!」と大爆笑をいただきました。

私のことをよく知る友達からは

「ゆびきゅうこういうのすぐ引っかかりそうって思っていたら、本当に引っかかっていたから笑ったわ。あんたほんと面白すぎ」

と言われた。

面白人生冥利に尽きるのですが、私どうやら友達からみても、騙されやすい性格みたいです。

妹にも「ゆびちゃんって、本当にバカだね」と笑いながら言われましたが、なんも言い返せませんでした(泣)

まとめ

今回の経験から学んだことは下記の通りだ。

●デート商法という販売方法がこの世に存在していること
(自身の体験と大学の講義とで、結局2回学ぶことになった)
●無料進呈には必ず裏がある
●約束の前に別の約束を入れるとロクなことにならない
●断った瞬間態度が豹変する営業スタイルはダメゼッタイ
(された顧客側は二度と近づいてこないだろう)

それにしても、

180cm岡田准一似の長谷川

コミュ力を最大限に発揮して、私を会場へ誘い出した長谷川

急に真顔になった長谷川

買わないとわかってからは、虫ケラを見るような蔑んだ目をした長谷川

彼は今何しているのだろうか。

3日で彼氏持ちの女をたらし込み、虜にできたのは彼の実力であり、強みだ。

彼は推される為のツボを知っているように思えた。
しかし少しツメが甘かったようだ。

営業も、販売も、お客さんを相手にする人全てに言えること。

断られたら終わりではない

ということだ。

例えば、アパレルのお店一つにしてもそうだ。

試着をして、「少し考えます」と服を戻した時に、感じの良い笑顔で「またお願いします」と言うのか、あきらかに不服そうな顔で「はーい」と受け取るのか。

それだけで、今回は買わなかったけど、また来ようってなるのか

もう2度とこの店はないな

ってなるのかが分かれる。

長谷川のこの豹変ぶりが、反面教師となったおかげで、私は営業の仕事でお客様から断られた時に、逆にめちゃくちゃ感じよくするっていうことを心がけた所、トップセールスになった。

だからこの経験も無駄ではなかったと思う。

ありがとう長谷川。
あなたのそのコミュ力が社会貢献の方に向けられた時、きっとたくさんの人を幸せにできると思うよ。

あれから何年も経ち、社会人になった今、
まだ自分の資産としての高額な宝石を買ってはいない。

しかし今度、最愛の人から永遠の愛の印としての宝石が左手の薬指におさまる予定だ。

もしもまた長谷川に会うことがあったなら、
あの時の話を笑い飛ばしながら、まんべんのドヤ顔で薬指に輝く宝石を見せつけてやりたい。

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ゆびきゅう@おやゆび編集長
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