賃料値下げとフリーレント、不動産オーナーにとってどちらが得か?
この質問って、実は価格決定メカニズムと投資リターン、投資評価の基準のことを分かっていないときちんと答えられない。
答えはフリーレントです。
なぜでしょう?
投資ファンドのファンドマネジャーになったつもりで考えてみましょう。
賃貸借期間が終了し、更新や再契約をする場合のことを考えてみて下さい。
賃料を値下げしてしまうと、CFが低下しますよね?
ファンドは資金回収を早くしたい、というのがあります。
賃料を値下げすると資金回収が遅くなる、よって賃料値下げをしたくない、ということが当然あります。
でも再契約時に新期間の初めにフリーレントを付けてしまうとどうでしょう?
値下げの時よりさらに資金回収が遅れます。
だから、その選択肢はないでしょう、と思えます。
しかし、実はオーナーにとってはフリーレントの方が望ましい。
なぜでしょう?
賃料値下げによる収益性の低下は、ビル価値低下に直結するから、です。
例えば坪17,000円の賃料を坪13,000円に値下げした場合のビル価値に与える影響はどうでしょう?
賃貸面積を400坪とすると、賃料値下げによって収入は月額160万円、年額1920万円下がります。
これはこれで非常に痛いですが、一方、ビル価値は何と3億8400万円も下がってしまいます。約3割、値下げ後NOI(純収入)の9年分もの価値が一気に下がってしまうのです。金融機関の担保評価にも悪影響が大きいです。
フリーレントが一般化していますが、不動産ファンドはなぜフリーレントを好むのか?その答えがここにあります。
たとえ入居時や更新時に賃料を一時的に免除、もしくは減額したとしても、その後表面賃料は回復するので、物件評価額に対する影響は最小限に抑えられます。次回の更新時の交渉もその表面賃料が基準点になりますし。テナントにとっては実質的な負担は賃貸借期間の平均賃料であるので、オーナーに泣いてもらった、として一定の満足が得られる一方、オーナー側にとってもフリーレントや段階賃料であれば一律に表面賃料を減額するよりはよほど良いわけです。
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