海はつながっている

授業の合間に昼寝の時間があって、私は気仙沼についていた。

気仙沼は、断崖絶壁の上に、リニアな都市構造を持った街だった。海側から片側一車線の歩道がない道路、片側アーケードの商店街、さらに一筋内陸に入ると、海岸線と平行にジグザグに道が引いてあって、その沿道に平屋の長屋が並んでいた。さらにその上の街路を歩くと「津波はここまできました」という赤いラインが道路に引かれていて、私は海の方を思わず見てしまった。海側の道の反対側にはマンションが建っていて、隣の建物との隙間から海が見えた。海の反対側を見ると、ミニ開発のように袋小路になっており、ハウスメーカーの白い住宅が並んでいた。

私はまた商店街の方に降りて行った。ところどころ商店ではなくインスタレーションアートがあるらしく、私はその1つに入ってみた。

左官壁の、人一人がギリギリ通れるほどの狭い通路、壁全体がほんのり発光しているようで、壁に人一人が入れるくらいの小部屋が数箇所あった。通路を出る間際に聞こえてきた波の音は歩みを進めるほど大きくなっる。音は出口間際のところにある小窓から出ているらしかった。隣の手のひらほどのサイズのパネルには今治市……と筆文字で書かれていた。どうやら海は繋がっているという事らしい。

通路を出ると商店街の出口だった。そのまま海沿いを歩くと、子供たちが海の中に入って透明な赤いボードに文字を一文字ずつ書いていた。課外学習の時間かな、寒い冬の海なのによくやらせるなと思いながら見る。赤いボードは数珠つなぎになっていて片方は岸にくくりつけられていて、波に揺られていた。岸からだと逆さまになっているので全く何が書いてあるのか読めなかった。

北のほうが曇っている事に気づく。小さな岬の先がしっかりした形の雲に覆われて、輪郭が光っている。私はiPhoneを取り出して写真を撮った。バスの時間は迫っているらしく、早足で商店街の方へと戻る。

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