無題

どことなく戦争の予感がする日々。 若者の間では、高速鉄道と高速道路が並走している架線橋の一部、線路の真上にせり出している構造体の上に乗って、写真を撮りあうのがブームになっていた。 

封鎖された4車線の都道の真ん中で、ぼろ布を着た肥満気味の男が投げていた手榴弾は胡桃程度の大きさだったから、思いのほか爆発は小規模だった。 沿道のカフェのガラス越し、おばさん達が談笑しているのが見えた。

手榴弾は誤ってカフェで爆発した。私は「人口が密集していると被害も甚大になるもんだな」と反対側の歩道から様子を見ていた。 

その日初めて、町に悲鳴と怒号が飛び交った。 空はどんよりと曇っていた。

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