「E TICKET PRODUCTION&岡島紳士インタビュー これまでのMIC RAW RUGA、これからのMIC RAW RUGA」(1)
MIC RAW RUGA(マイクロウルーガ、以下、マイクロウ)はガールズラップグループ。現在は、REI、AKIRA、MIYA、HANNAHの4人で活動している。
これまでマイクロウのメンバーインタビューを過去に4回おこなってきたが、今回は満を持して、プロデューサーのE TICKET PRODUCTION(以下、Eチケ)とマイクロウを運営するVIDEO THINK代表の岡島紳士に話を伺った。
インタビューでは、結成時に決めたグループのコンセプト、マイクロウがこれまでに歌ってきた(MOE-K-MCZ、ライムベリー時代のEチケの曲も含めた)全32曲の解説、コロナ禍以前と以後でのライブ環境の変化、そして各メンバーについて自由に話していただいた。もうすぐ活動4年目となるマイクロウはこれからどこへ向かうのか?
なお、インタビューで言及した楽曲は、SpotifyやYouTubeのMV等と可能なかぎりリンクしているので、音源といっしょに楽しんでほしい。
(インタビュー・構成:成馬零一)
E TICKET PRODUCTION&岡島紳士インタビュー
「これまでのMIC RAW RUGA、これからのMIC RAW RUGA」
――本日はMIC RAW RUGA(以下、マイクロウ)の結成から現在までについて、Eチケさんと岡島さんにお聞きしたいと思います。まずはグループ結成のきっかけを教えてください。
岡島紳士(以下、岡島):そもそも「E TICKET RAP SHOW」(以下『ETRS』)をはじめたこと自体が、ゆくゆくはマイクロウを始めるためだったんですよ。
そのためにまずは曲のストックを増やしたかった。もちろん曲を作る時は、フィーチャリングしてくださったアイドルのみなさんのことを踏まえた上でEチケさんは曲を作っていたのですが、僕の中では、そう思っていました。それはEチケさんにも伝えていました。
※ 「 E TICKET RAP SHOW」1〜2
Eチケと岡島が制作したアイドルラップのコンセプトアルバム。
詳しくは以下の記事を参照。
――ゆくゆくはグループを作ろうと考えていた?
岡島:そうです。おかげ様で「ETRS」は成功して吉田凜音さんの「りんねラップ」のような話題となる曲を作ることができました。
その後、『ETRS2』が一段落ついたタイミングで、吉田凜音さんをオフィシャルサポーターに迎えてオーディションはじめました。オーディションの告知をリリイベの最後に発表しました。まぁ、来てくれたお客さんは、ほとんど男性だったので「俺らに観せられても?」って感じだったと思うんですけど(笑)ちなみにその時に流した映像はターボ向後さんの制作でした。
その後、ネットでもオーディションの告知を出したのですが、一番最初に応募してきたのがREIでした。当時、REIは佐賀にいたのですが、ダンスも歌もルックスもよかったので採用しました。もうひとりがHINASE。まずはこの2人で始めて、少しずつメンバーを増やしていこうということになりました。
――そもそも、Eチケさんは岡島さんからガールズラップグループを作りたいと言われた時はどう思われましたか?
Eチケ:ライムベリーのプロデュースが終わった後、不完全燃焼感があったので、できればもうちょっとやりたかったなぁと思っていて。
――どこかのタイミングでもう一度やろうと思っていた。
Eチケ:だから、岡島さんとは「やろうやろう」とは話していました。
――MIC RAW RUGAというグループ名の由来について教えてください。
Eチケ:マイクロフォンのマイク。ローファイルのRAW。「生」という意味ですね。そしてルーガは「ウゴウゴルーガ」から取りました。
岡島:初めは研究生グループだったので、MIC RAW RUGA(laboratory)という名前でした。
※ウゴウゴルーガ 1992~1994年にフジテレビで放送されていたチープなCGを用いた子供向けバラエティ番組。金曜夜7時に時間帯が移った「ウゴウゴルーガ2号」の主題歌はピチカートファイブの「東京は夜の7時」だった。
――「ウゴウゴルーガ」のタイトルは「GoGoGirl」(ゴーゴーガール。イケイケおねーちゃんの意味)を逆読みしたものですよね。
Eチケ:つまり「マイクをつかって生のライブをする女の子」という意味ですね。
岡島:他の候補名も、結構よかったですよ。
Eチケ:ラップラップMC’Sってのがあったよね(笑)。他にも、ラップクラップクラブとかハイローラとか。
岡島:CLAP RAP CAMPとか、LIVE MIC COMMUNICATIONとか。
Eチケ:あったなぁ。
MIC RAW RUGA 全曲解説
01 MIC RAW RUGA ON THE ONE TWO
――ここからはマイクロウの曲についてライブで披露した順番にお聞きします。まず最初が「MIC RAW RUGA ON THE ONE TWO」(以下『ワンツー』)。いわゆる自己紹介ラップですね。この曲はメンバーが決まる前に作られたのですか?
Eチケ:どうだったかな。メンバーが決まって、リハをやろうとなった時にはあったので、事前に作っていたのかなぁと思います
岡島:「ワンツー」、「NIGHT FLIGHT」「PARTY PEOPLE SAY YEAH」(以下、パーティーピーポー)は最初のレッスンの時にはありました。『SUMMER OF LOVE』も完成しかけていた。
Eチケ:自己紹介の曲なので、メンバーが決まってから歌詞は書いたと思います。トラックはヒップホップっぽい感じにしようと思って、ジャズっぽいサンプリングを入れました。ラップグループを作るのなら「自己紹介ソングは合ったほうがいい」と考えて作った曲です。最初は2人ではじめて、メンバーが増えていくと歌詞が増えてバースも長くなっていくようにしようと思いました。
――最長で4番までありますね。Eチケさんの曲は元ネタがあることが多いのですが「ワンツー」はどうですか?
Eチケ:これに関しては特になくて。かっこよさそうなサンプルをつなげてループさせた結果、できたもので、特に何かに似せて作ろうとはしていないです。
――歌詞は、メンバーに合わせて書いているのでしょうか?
Eチケ:『ETRS』の時から、曲を作る時は歌手の方に何十問もあるアンケート表に事前に書いてもらい、書かれた言葉からイメージを膨らませたり、言葉をピックアップして歌詞を書くという作り方をしています。「ワンツー」の「予想はできないここでのオチ」というパートは、REIが「サザエさん」が好きすぎて「ずっと観ていたら話のオチがわかるようになってた」と書いていたので、マイクロウのライブでは「予想がつかないことが起きるんだよ」って感じでメンバーに対するインタビューから着想を得たという感じです。
02 PARTY PEOPLE SAY YEAH
――「パーティーピーポー」はいわゆるパリピから?
Eチケ:現在、イメージされるパリピとは違って、レイヴカルチャーのストイックなPARTYですね。
――映画のタイトルにもなった、ハッピー・マンデーズの「24アワー・パーティーピープル」とか。
Eチケ:そういうイメージです。タイトルが、すごく馬鹿みたいですが「それがいいなぁ」と思って作りました。この曲はヒップホップグループではなくラップグループということをわかりやすく提示するための曲ですね。トラックは、BPMを早くして、ギターとTB-303の音を入れてブレイクビーツを入れました。ヒップホップのブーンバップ的なものでもトラップとも違うヒップホップの文脈にないものをやっているんだということをわかりやすくみせることを考えて作った曲です。
――歌詞はメンバーが決まる前に書かれたのですか?
Eチケ:歌詞はすでにあったと思います。「パーティーピーポー」はサウンド的にはヒップホップではないですが、歌詞は日本語ラップからの引用があって、ECDの「俺たちに明日はない」の歌詞の「遅いぞ、追いついこい」や、ライムスターの「耳ヲ貸スベキ」の歌詞の「歴史的なこの記念日」等からとっていて。だから「ラップが好きです」みたいな気持ちを込めて書きました。
――最初の4曲は、マイクロウを新しく始めるという気持ちが乗っかっているように感じるのですが。何かテーマのようなものはあったのですか?
岡島:Eチケさんからマイクロウのテーマやコンセプトについてどうしますか? と聞かれた時に、僕は「取り戻す」って答えたんですよね。「取り戻す」というとネガティブな印象もあるかもしれないですけど、そもそもの思想として「我々はもともと奪われてるんだ」という考え方もあるじゃないですか。「みんなほんとは最初から全部持ってるんだけど、生きていくうちに徐々に失っていく」という考え方。それを一つずつ取り戻していく。
――手塚治虫の漫画『どろろ』みたいですね。百鬼丸が妖怪に奪われた48の体を取り戻して人間に戻ろうとするみたいな。
岡島:まだ自分のものでなかったものを取り戻すでもいいですし。ネガティブに聞こえるかもしれないけど「そうでもない」っていう。
――リベンジではなくて。
岡島:リベンジというと聞こえが悪いじゃないですか。あくまで“取り戻す”ですね。
――なるほど。それは歌詞に反映されていますか?
Eチケ:そうですね。「誰がチャンピオン?」みたいな歌詞には「負けないよ」みたいな気持ちが込められていると思います。
岡島:「いつかきっと 奪い取んぞ しっかり見てろ!」ってありますね。
03 NIGHT FLIGHT
――「NIGHT FLIGHT」はライブで聴くと楽しい曲ですけど、じっくり歌詞を読むと思った以上にシリアスですよね。
Eチケ:「NIGHT FLIGHT」はメンバーが入ってから歌詞を書いたのを覚えていて。曲としては「MAGIC PARTY」みたいな曲を作りたいと思ったんですよ。ちょっとだけディスコテイストで派手さもある4つ打ちみたいな。歌詞は「パーティーピーポー」って曲を作ったものの、集まったメンバーは、あんまりパーティーピーポーって感じでもないと思ったので、内省的な歌詞にしようかなぁと思いました。有名な映画監督も駄作をたくさん撮ってる。だから大丈夫だよ。という応援ソング的なところもあるし、エド・ウッド的な駄作でも評価されることもあるよ、っていうような感じも入ってますね。
――タイトルはYOU THE ROCKのラジオ番組。
Eチケ:そうです。「HIP HOP NIGHT FLIGHT」から取りました。あと途中の歌のパートがあるのですが、SHARPNEL.NETという人たちがやっていたガバイーターというユニットの「ICQ」という曲の歌詞を引用していますね。
04 MAGIC PARTY
――次は「MAGIC PARTY」。初披露ライブのトリでやった曲ですね。
Eチケ:初披露でやったんだ。あんまり覚えてないな。
――お客さんがざわついたのを覚えています。MOE-K-MCZ、ライムベリーと歌い継がれてきた曲ですが。なぜマイクロウでもやろうと考えたのでしょうか?
Eチケ:なぜって言われても(笑)
――聞くまでもないかと思うのですが、一応(笑)。マイクロウを始めるにあたって「新曲だけをやるのか? もしくは、昔の曲もやるのか?」という選択は大きかったと思うのですが。
Eチケ:ライムベリーの時から、MOE-K-MCZの「HEY!BROTHER」や「まず太鼓」などの曲をやっていたので、その時と同じように引き継いでいけばいいんじゃないかと思いました。
――過去の曲もやるという方向性を最初に示した曲ですよね。「ETRS」の時はやらなかったので「ここで「MAGIC PARTY」をやるのか」という驚きが、最初のライブにはありました。
岡島:「MAGIC PARTY」は初めからやると決めていました。歌詞に「未来と今を繋ぐPARTY」とありますし、PARTYというワードも入ってますし。この曲をやることによって「過去の曲もやっていく」というのが伝わるかなと。
――「取り戻す」というテーマそのものですね。
岡島:ずっとやりたかったので、嬉しかったですね。この間、REIの誕生日企画の時に各メンバーの初登場のMCをサンプリングしたいということで、久しぶりに最初のライブの音源を聞いたんですが、「それでは聴いてください、「MAGIC PARTY」」と言った時にお客さんの反応が結構聞こえました。たぶん、誰もやるとは思ってなかったんでしょうね。
Eチケ:昔の曲をやる時って「またやんの? まだ、そこに留まってるの?」って気持ちと、お客さんが喜ぶのならやったほうがいいんじゃないの? という気持ちがあって。
岡島:というかそういった理由よりも、「MAGIC PARTY」など過去の曲をやるのは、単純にいい曲だからなんですよ。世の中の人はほとんど知らないのだからやらないのは損ですよね。99%以上知らないんだから。楽曲として強い曲、良い曲はとにかくやればいいと思います。
――マイクロウの曲としてはだいぶ馴染んだ感じですか?
Eチケ: メンバーが何度か変わっているので、馴染むというところまで行っているかというと難しいですね。その度にいろいろ変わるので。
――毎回、トリを飾る曲ですね。
Eチケ:あの曲ってセットリストのトリ以外に置きにくい曲だから、トリでやることが多いですね。その後、最後に盛り上がる曲を別にやりたいと思って「HOOVER BEATS」を作るんですけど。
――「MAGIC PARTY」には愛着がありますか?
Eチケ:愛着はありますが、10年以上前の曲なのでちょっと恥ずかしさもあるというか。
岡島:2007年ですかね。
Eチケ:当初は後半の「君の瞳に恋してる」がなくて、なんか付け足したら面白いかなぁと思って、あれをサンプリングして付け足して。まぁ、DJ的な考えですね。ここであの曲が来たら面白いという。マッシュアップじゃないけど、当時はそういう気持ちで作ってましたね。
05 SUMMER OF LOVE
――次が「SUMMER OF LOVE」。タイトルはアメリカで60年代後半に起きた文化運動の「サマー・オブ・ラブ」からですか。
Eチケ:タイトルはそうですね。セカンドじゃない方の。パーティーぽい曲ばかりだったので、Eチケとしてじゃなくて桑島由一としての歌詞があってもいいなぁと思って、わかりやすい物語っぽい感じに書きました。ビート的にはコルグのガジェットというアプリだけで作っているので、サンプリングはないです。
――私小説的というか。歌詞に出てくる女の子の描写がいいですね。
Eチケ:「サンダルがないからって足の裏にガムテープ貼ってちょっとコンビニまで買い物なんて」っていう。
――あれは実話? ああいう女の子がいたんですか?
Eチケ:違いますね。どこかで観た遠い記憶というか。「自動販売機の前で」というのは「笑う犬の生活」でホリケンと遠山景織子が「パン食べる?」みたいな話をしているコントがあったんですけど、あれのイメージです。
岡島:「トシとサチ 梅屋敷の若者の全てDreamin’ on the Road」ですね。
Eチケ:喫茶店じゃなくて、自販機の前がたまり場になってる感じがいいなぁと思って。
――夜の夏の空気感ですよね。これは歌詞が先にあったんですか。それともメンバーに合わせて書かれたものですか?
Eチケ:まず曲を作ってどういう歌詞を乗せたらいいかなぁという感じで作りました。曲が朴訥とした感じになったから歌詞も朴訥とした感じに書こうと思って。
――桑島節ですよね。
Eチケ:そう思ってもらえればと思って、書きました。
――「きみとぼく」にも通じる歌詞ですよね。追憶系といいますか。昔を思い出して切なくなる感じで。街で偶然すれ違った時も平気でいたいというのが、嫌なリアリティがありますね。
Eチケ:忘れようとしてるけど、「コイツ、絶対忘れられないな」みたいな。そういうニュアンスの曲ですね。
――お披露目の時の4曲は、パーティー系の明るい曲としんみり系の曲で組み立てたという感じですね。
Eチケ:「SUMMER OF LOVE」はマイクロウのために作ったんじゃなくて、ガジェットの練習って感じで作ってみようと思ったんですよね。ちょっとチープだけどそのチープさも良いかなと思ってという感じですね。
(2)に続く。
MIC RAW RUGA 1st ONEMAN LIVE
「PAY YOU BACK」
日程:2022年9月23日(金祝)
開場 18:00 開演 18:30
場所:渋谷 club asia(東京都渋谷区円山町 1-8)
出演:MIC RAW RUGA
チケット:前売<9/9(金)23:59まで販売>
A.VIP 13000円(+D)
…最優先入場&「PAY YOU BACK」Tシャツ&メッセージカード&お礼動画&バッジ&MC集CD-Rつき
B.SPECIAL 7500円(+D)
…「PAY YOU BACK」Tシャツつき
前売<9/22(木)23:59まで販売>
C.NORMAL 4000円(+D)
当日
D.NORMAL 4500円(+D)
●新曲を初披露します
●オールスタンディングです
チケットは8月24日(水)20時よりPassMarketにて発売。
購入はこちらから。
詳細はこちら。
MIC RAW RUGA ニューシングル
「PAY YOU BACK」
発売日:2022年8月24日
レーベル:VIDEOTHINK
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