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東京富士美術館(東京都八王子市・八王子駅)

ちょうどNHK大河ドラマで紫式部を主人公とする『光る君へ』が放映されていることもあってか注目度が高く、各地で源氏物語に関する展覧会が開催されている。東京富士美術館の企画展では開館40周年を記念する形で「源氏物語」展を開催し、収蔵品の他にも各地域のミュージアムから集められた作品を紹介している。

着物を着て行くと割引になるということもあってか、館内には着物姿の方々がちらほらと見受けられる。展示室の最初は『源氏物語』の執筆背景から、紫式部の生きていた時代に焦点を当てている。紫式部が『源氏物語』執筆を思い立った場面を描いた肖像画もある。国宝や重要文化財も多く展示されており充実度が高い。当時の技術を再現した模造品に至っても精緻な工芸に驚くところ。絵画はいわゆる大和絵と呼ばれるものが中心となる。

みんな大好き源氏物語

続いての展示室では『源氏物語』における各巻の内容をパネルで紹介しながら、その巻の中で印象的な一場面のシーンを切り取った大和絵を併せて展示している。全部で五十四帖に上る長大な物語なだけあって登場人物も非常に多く、その関係性も理解するのだけでもややこしい(とにかく主人公の光源氏が色々な女性に手を出しまくっている…)。自然とパネルの内容を読み込む形にもなるので展示スペースの進みはゆっくりで渋滞も起きやすくなるため、ある程度は『源氏物語』の内容を理解しておいた方が大和絵に集中して鑑賞できるかもしれない。

光源氏は宮廷で名を(ある意味)馳せました

光源氏が恋愛遍歴を繰り広げる前半生、政治の中枢に巻き込まれる後半生、光源氏が没した後の宇治十帖という三部構成が一般的なイメージだろうか、光源氏が亡くなってからの後も割と長く続くのが特徴で、もしかして評判になって続編として宇治十帖を執筆しなくてはならなかった、みたいな人気作家みたいな背景があったのではないかと想像する。

恋文を取り交わしたのね

次の展示室では『源氏物語』に関する名品として、土佐光信や岩佐又兵衛、尾形光琳といった中世に欠かすことのできない画家たちによる数多くの屏風が紹介される。力強い岩佐又兵衛の作品など、作家ごとの特色が現れていて面白い。また物語に登場した工芸品を再現している江戸時代の硯箱や、興味深いところでは香道で使われた道具まで展示されており見どころがいっぱい。浮世絵の題材にもなっている。

衣擦れさえも恋の一味

明治時代以降も尾形月耕や松岡映丘、安田靱彦といった画家による『源氏物語』を題材とした作品が多く展示されている。中でも上村松園の代表作でもある『焔』は下絵ながら、恋焦がれるあまりに怨霊となって光源氏の周辺に災いをもたらした六条御息所を見事に描いているのが素晴らしい。作家でも与謝野晶子や谷崎潤一郎といった文豪が題材にしている。

最後は現代によみがえる『源氏物語』ということで、現代アートの山本茜によるガラス品の展示や、円地文子、舟橋聖一、田辺聖子、橋本治らによる『源氏物語』が紹介されているほか、まんがの分野で大和和紀『あさきゆめみし』も採り上げられている。個人的にはイメージしやすい『あさきゆめみし』を読んでみたいところ。

常設展もオノレ・フラゴナールやブリューゲル父子、ラ・トゥールにルーベンスといった巨匠から、クールベ、ドラクロワ、クールベにマネ、ルノワールやゴーガンまでビッグネームが多数ある。モネもね。時代を下ればモディリアーニやキスリング、ユトリロからダリやウォーホール、イヴ・クラインに至るまで充実しており、企画展と常設展を回るだけで半日はいられる美術館である。トイレはウォシュレット式。

常設展も充実しまくっている 東洋から西洋へトリップするのです


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